管理人は非喫煙者なので、喫煙者の「歩きたばこ」や「路上喫煙」に憤りを感じているのでまとめました。全国の自治体にも広まってほしい条例です。
条例の背景と目的
尼崎市は、かねてより「受動喫煙の防止」や「歩きたばこによる事故・トラブルの削減」など、たばこにまつわるさまざまな課題に直面してきました。その解決に向けて制定されたのが、「尼崎市たばこ対策推進条例」です。条例が作られた背景としては、大きく以下の3点が挙げられます。
- 受動喫煙による健康被害の懸念
たばこを直接吸わない人でも、喫煙者が吐き出した煙(加熱式たばこ含む)にさらされると、身体へ悪影響が出る可能性があると多数の研究から示されています。これを「受動喫煙」と呼びますが、特に成長期の未成年者や妊娠中の方は肺や循環器系に負担がかかりやすいとされています。 - 歩きたばこ等による危険性
歩きながらの喫煙(歩きたばこ)は、周囲の人にやけどを負わせる危険があるだけでなく、たばこの火が衣類や持ち物に触れて焦がしてしまうトラブルにもつながります。またポイ捨てによる火災リスクや、ごみの散乱問題(美観をそこねる)も深刻です。特に混雑する駅周辺での歩きたばこは大きな社会問題でした。 - 安心で快適なまちづくりの推進
尼崎市は「健康的にかつ安全で快適に暮らせるまちづくり」を掲げており、上記のリスクを放置していては、市民や観光客の安心感を損ねることになります。そこで、市と市民・事業者が協力し、たばこの正しい扱いに関するルールを整える必要性が高まりました。
この条例は、2018年(平成30年)6月に制定され、同年10月から路上喫煙禁止区域を指定して条例の適用をスタートしています。そこからさらに改正が重ねられ、2025年4月(令和7年4月)からは、違反した場合に過料(いわゆるペナルティ)を徴収できるようになりました。これはただの罰則強化ではなく、市民に対して「ルールを周知徹底する意識付け」の役割も果たしています。
加えて、条例では喫煙する人だけでなく、「市民全体が協力しあうことが大切」だと強調されています。具体的には、「市民は受動喫煙防止やポイ捨ての防止に努める」「事業者は従業員などにたばこ対策の重要性を啓発する」「市は情報発信や路上喫煙禁止区域の設置に取り組む」など、三位一体となって喫煙マナー向上に取り組む枠組みです。
条例本文の冒頭には、健康への影響や歩きたばこが引き起こす事故・トラブル、さらにはポイ捨てがもたらす美観上の問題について明確に記されており、これらを総合的に解決する狙いであることがうかがえます。
(条例本文の詳細は「尼崎市たばこ対策推進条例」PDFおよび市のホームページに掲載されています。)
たばこを吸う人と吸わない人、どちらもお互いにトラブルや健康被害を避け、安心して暮らせる社会を実現するために、こうした条例が必要だということが、尼崎市の条例制定における大きなポイントといえます。
最後に、本条例は「20歳未満(未成年者)の喫煙禁止」や「受動喫煙の防止」にも重点を置いており、喫煙をする方だけではなく、将来的に健康を守る若い世代にも大きく関係しています。今後、この条例がどのように周知され、実際に市内の環境がどう変わっていくのかは、さらに注目されるところです。
条例の具体的内容と過料徴収の仕組み
本条例は「歩きたばこ禁止」や「路上喫煙禁止区域の設定」などを中核としていますが、2025年4月(令和7年4月)からは罰則として過料1000円が徴収される点が大きな特徴です。ここでは、具体的なポイントを整理します。
路上喫煙禁止区域の設定
- 条例により、市内の鉄道駅周辺(尼崎市には13の駅が存在し、現状は阪神武庫川駅を除く12駅が指定)のほとんどを「路上喫煙禁止区域」に指定しています。
- 禁止区域内ではたとえ立ち止まっていても、指定場所以外でたばこを吸う行為自体がNGです。指定の喫煙所が設置されている場合は、そのエリア内で喫煙しましょう。
- この路上喫煙禁止区域は段階的に拡大されており、2025年現在、すでに多くの主要駅周辺で施行されています。
歩きたばこ・ポイ捨ての全面禁止
- 尼崎市内全域で歩きたばこは禁止されています。つまり、駅周辺かどうかにかかわらず、たばこを手にもったまま移動する行為は条例違反となります。
- あわせて、吸い殻のポイ捨ても「尼崎市空き缶等の散乱防止に関する条例」などにより禁止されています。本条例でも、受動喫煙防止や安全確保の観点から強く規定し、携帯用灰皿の使用を推奨しています。
違反者への指導と過料
- 条例では、まず市の「たばこ対策指導員」などが違反者を発見した際、注意や指導を行います。これまでは口頭注意だけでしたが、2025年4月からは、改善が見られない場合や悪質なケースでは過料1000円を徴収できるように改正されました。
- 過料徴収の詳細は「尼崎市たばこ対策推進条例 第18条」などで明記されており、実際の告知書や注意喚起方法などは過料徴収チラシでも確認できます。
- 具体的には、氏名や住所、連絡先を記入する「過料処分告知書」が作成され、その場で支払いを求められます。支払わない場合、後日督促されるなど手続きが進む可能性があります。
20歳未満の喫煙防止や受動喫煙対策
- 本条例は単に「喫煙マナーの向上」を目的としているだけではなく、20歳未満の若年層における喫煙習慣の形成を防ぐことも重視しています。飲食店や商業施設などでの受動喫煙被害を減らすために、市民・事業者それぞれが配慮する旨が規定されています。
- 禁煙希望者に対しては、市として支援を行う方針も示しており、条例による「締め付け」だけでなく、健康促進や相談窓口整備などの「サポート」も並行して行われています。
指導員による巡回
- 違反行為を取り締まる役割を担うのは、**元警察官などの「たばこ対策指導員」**が中心です。彼らは巡回しながら「ここは路上喫煙禁止区域です」と声をかけたり、違反者を見つけると声かけ・指導を行ったりします。
- 違反が確認された場合には「過料処分告知書」を作成し、即時徴収(1000円)を行う仕組みです。1日の取り締まりで複数人に過料を適用した事例も報じられています。
このように、条例は「情報提供・啓発」と「実際の取り締まり」を両輪で運用することで、安心・安全なまちづくりを目指しています。特に過料徴収は抑止力として働きやすく、ルールを守っている喫煙者からも「マナーを守らない人との区別が明確になり、イメージが悪くなることを防ぎたい」という意見が出ています。
市民・事業者への影響と社会的インパクト
条例施行による影響は、喫煙者だけでなく、喫煙しない市民、そして事業者にも及びます。ここでは、条例が施行された結果、どのような変化や課題が生じているのか、ニュース記事にも出てくる事例をもとに解説します。
喫煙者の行動変化
- 過料徴収が始まる前から、駅周辺などで喫煙指導員の巡回を目にすると、喫煙行動を控える人が増えています。
- 一方で「喫煙所が少ない」「自宅や職場から遠い」「混雑して使いにくい」といった声もあり、喫煙者からは喫煙所の整備や配置見直しを求める意見も出ています。
- ただし、市の立場としては「ポイ捨てや歩きたばこは絶対に許されない」というスタンスであるため、過料徴収の開始によって「とにかく急いでいても外では吸わない」という意識は徐々に広まっているようです。
事業者への影響
- 飲食店などでは、従業員や客に対して「路上喫煙はご遠慮ください」と呼びかけるケースが増えました。店の入り口付近で喫煙できなくなると、店のイメージアップに繋がる一方、ヘビースモーカーの客離れを懸念する声もあります。
- また、大規模なオフィスビルや商業施設では、「建物の中に喫煙専用のブースを設置する」「外の灰皿を撤去する」など、条例をきっかけに新たな対応を始める例が増加中です。
- 20歳未満や非喫煙者の受動喫煙を防ぐ取り組みとして、分煙設備に投資する企業もあり、社会全体で健康や安全への配慮を行う流れが加速しています。
たばこ対策指導員と警察OBの連携
- 元警察官が「たばこ対策指導員」として巡回していることもあり、治安維持とマナー啓発が一体化されている側面があります。
- 大阪・関西万博を見据えた「受動喫煙防止強化」の背景もあって、観光客や出張者の訪問先として尼崎市を通過・滞在する人も多いため、条例施行の効果は広範囲に影響する可能性があります。
社会的インパクトと今後の課題
- 過料1000円は、「たった1000円なら払ってしまえばいい」と考える人もいれば、「1000円も罰金が取られるなら絶対にやめよう」と思う人もおり、その受け止め方は人それぞれです。
- 他都市でも、路上喫煙禁止区域を設定している自治体は少なくなく、尼崎市の成功事例や運用状況を参考にする地域もあるとみられます。
- 課題としては、喫煙所不足や喫煙所のマナー問題(灰皿以外にゴミを捨てるなど)が挙げられます。利用マナーが悪化すると、喫煙所が閉鎖される可能性も否定できず、かえって路上喫煙が増える悪循環にならないよう、利用者の意識向上が求められています。
結果的に、条例は「厳しすぎる」という批判もあれば「もっと罰金を高くして取り締まりを強化してほしい」という意見もあり、市民の間でも見解が割れる面があります。しかし総じて、「マナーを守る喫煙者と、守らない喫煙者との差別化ができる」「家族連れや子どもがいる人にも優しいまちづくり」というプラスの評価をする声が増えているのも事実です。
今後の展望とまとめ
今後の取り締まり強化の可能性
尼崎市は「より住みやすい環境」を目指し、路上喫煙禁止区域のさらなる拡大や、駅周辺だけでなく繁華街や商店街への重点的な巡回を行う可能性があります。加えて、市民からの通報やSNSでの情報共有も活発になれば、違反者が目につきやすくなるため、取り締まり強化に拍車がかかることが予想されます。
喫煙マナー向上キャンペーン
条例の制定だけではなく、市や企業、地元の商店街などが連携し、ポスター掲示やイベントを通じた「マナーアップキャンペーン」を継続的に行うことが重要です。
ニュースでも報じられたように、寸劇や配布物を用いての周知イベントは、子どもから大人まで興味を持ちやすい手法となっています。単に罰則を課すのではなく、楽しみながら学べる機会を創出することが、条例の定着には欠かせません。
喫煙所の設置や分煙の推進
今後は、公共施設や飲食店などにおける「分煙スペース」の拡充や、屋外喫煙所の新設・改善が進むことが期待されます。条例を守るためには、「喫煙できる場所がわかりやすく整備されている」ことが重要です。
利用マナーを維持するためには、喫煙する側も周囲の迷惑や安全に配慮しつつ、決められた場所以外では吸わないという意識が求められます。
未成年者の喫煙防止と健康増進
条例が徹底されれば、街中で喫煙する大人を見かける機会も減るかもしれません。これは、未成年の喫煙を防ぐうえでも効果が期待できます。周りの大人がルールを守る姿勢を見せることで、自然と「たばこは制限があるもの」という意識が根付くでしょう。
同時に、禁煙外来や相談窓口の整備がさらに充実すれば、「禁煙を始めよう」と考える人にとって追い風となるはずです。長期的には、医療費の抑制や地域全体の健康意識向上に繋がる可能性があります。
条例がもたらすもの
「尼崎市たばこ対策推進条例」は、市民の健康と安全、そして街の美観を守る重要な取り組みです。1000円の過料が設定されることで、違反に対する抑止力が働く反面、喫煙者への理解やルール順守のための環境整備(喫煙所の充実など)も同時に求められます。
最終的には、「吸わない人にも吸う人にも優しいまちづくり」を実現するための条例と言えるでしょう。市の取り組みや市民の協力姿勢が深まることで、受動喫煙被害の減少やポイ捨てのないクリーンな街並みが期待されます。
今後、ほかの自治体が尼崎市の事例を参考にし、同様の条例を検討・強化していく可能性も高いため、全国的にも注目される取り組みです。
条例の意図は、罰則で締め付けるだけではなく、「みんながマナーを守り、お互いに快適に過ごせる社会をつくる」という点にあります。喫煙所の設置や適切な分煙の推進、受動喫煙防止の取り組みと合わせて、今後も広く周知が進むことが期待されます。