高校生の扶養控除はどう変わる？ 政府が検討する縮小案の狙いと影響を徹底解説

高校生の扶養控除見直しがニュースになっている理由

高校生を扶養する家庭にとって、税負担に影響する「扶養控除」が大きく変わる可能性が出てきました。政府・与党が検討しているのは高校生（16〜18歳）が対象の扶養控除を縮小する案であり、これは家計だけでなく、子育て支援制度全体のあり方を左右する重要なテーマです。

今回の議論は、次の3つのポイントが重なったことで注目度が一気に高まりました。

注目が集まる理由

1. 高所得者ほど控除の恩恵が大きいとの批判が強まったため
   扶養控除は所得税額を減らす仕組みであるため、所得の高い層ほど減税効果が大きくなる構造があります。
2. 児童手当を高校生年代まで拡大した流れとの整合性が求められたため
   現金給付を拡充しつつ、税制面の優遇だけが残ると「二重の支援」との指摘が出やすくなります。
3. 少子化対策として子育て支援の“再設計”が進んでいるため
   税・社会保障・現金給付を一体的に見直す流れの中で、扶養控除も検討対象となっています。

こうした背景の下、政府・与党では高校生の扶養控除について次のような縮小案が浮上しています。

現在検討されている縮小案

制度区分	現行の控除額	検討されている控除額
所得税の扶養控除	38万円	25万円へ縮小案
住民税の扶養控除	33万円	12万円へ縮小案

※正式決定ではなく、与党税制調査会での検討段階。

控除額が縮小されると、一定以上の収入がある世帯では実質的な増税になる可能性があります。

児童手当との関係

扶養控除の縮小が議論される背景には、児童手当の拡充が深く関係しています。

児童手当は、高校生年代まで給付対象を広げ、所得制限も撤廃され、より多くの世帯が恩恵を受けられる制度へ変化しました。その一方で、扶養控除はもともと所得が高い人ほど有利になる性質があるため、

• 現金給付（児童手当）は広く支援
• 税制優遇（扶養控除）は一部縮小

という「バランス調整」を行う必要があるという意見が強まっています。

家計への影響は世帯によって大きく異なる

扶養控除の縮小は単なる税額の増減だけでなく次のような影響も考えられます。

• 課税所得が増えるため、住民税非課税基準に近い世帯では制度適用に影響
  （例：高校授業料の就学支援金の対象など）
• 自治体独自の子育て支援策が受けられなくなる可能性
  住民税額を基準にする施策は多いため、波及範囲は広い。

そのため、「児童手当が増えるから家計はプラス」という単純な話ではなく、世帯の収入、家族構成、他制度の利用状況によって負担は変わるという複雑な側面があります。

今回の議論が持つ意味

扶養控除の見直しは、税額を変えるだけの作業ではありません。
「子育て支援をどの仕組みで、誰にどれだけ配分するのか」という政策の根幹に関わります。

今後の議論は、

• 税負担の公平性
• 子育て支援の効果
• 低・中所得層への影響
• 制度変更のタイミング

といった点が焦点になります。

高校生の扶養控除とは何か

高校生の子どもを持つ家庭にとって、扶養控除は家計の税負担を左右する重要な制度です。しかし、「どこまでが控除対象なのか」「なぜ高校生だけ特別な区分があるのか」など、制度の細かい点は意外と知られていません。ここでは、まず現行制度を整理し、今回の縮小案がどこに影響するのかを明確にしていきます。

扶養控除とは

扶養控除は、生計を一にする家族を扶養している人の税負担を軽くするための制度です。扶養の対象になると、一定額が課税所得から差し引かれ、その分だけ税金が安くなります。

扶養控除は、子どもの年齢に応じて区分が分かれています。

区分	年齢範囲	所得税控除額	住民税控除額
一般扶養親族	16〜18歳（高校生）・19〜22歳	38万円	33万円
特定扶養親族	19〜22歳（大学生等）	63万円	45万円
老人扶養親族	70歳以上	48万円	38万円

※0〜15歳の子どもは、児童手当の創設を機に扶養控除の対象外。

今回の議論は、このうち 「一般扶養親族」16〜18歳（高校生）の区分に関するものです。

なぜ高校生だけで独立した議論になるのか

高校生の扶養控除が特に注目される理由は次のとおりです。

• 義務教育後も教育費が増える時期であり、家計負担が重くなる年代であるため
  進学費用や部活動費・交通費など費用が急増しやすい。
• 16歳未満には扶養控除がなく、高校生から急に控除が発生する設計だから
  少子化対策の流れを踏まえると、「年齢ごとの支援の不均衡」を見直す必要があるとされる。
• 児童手当を高校生年代まで拡大する施策と重複するため
  給付と控除の両方で支援が重なることが、政策上の“優遇”議論を引き起こしやすい。

つまり、高校生の扶養控除は、制度の歴史や家計の特性、他制度との関係から、単独で議論しやすい位置にあるのです。

働く高校生（アルバイト）でも扶養控除は受けられるのか

高校生がアルバイトをしていた場合、保護者が扶養控除を受けられるかどうかは、年間所得が48万円以下かどうかが目安になります。

• 所得48万円以下（給与収入なら103万円以下）：扶養控除の対象
• 所得48万円超：扶養控除の対象外（保護者の控除が消える）

このため、「子どものアルバイトが扶養控除に影響する」と誤解されがちですが、実際には高校生の多くは控除対象に収まる範囲で働いています。

現行制度のポイントまとめ

• 高校生は「一般扶養親族」として 所得税38万円・住民税33万円の控除対象
• 0〜15歳との支援設計が異なるため、支援の整合性が議論になりやすい
• アルバイト収入があっても一定内なら控除対象のまま
• 教育費負担が重くなる年代であることも政策検討の背景にある

なぜ「高所得者優遇」と批判されるのか

高校生の扶養控除を縮小する議論の核心には、税制がもつ構造的な性質が関係しています。扶養控除は、一見すると「子育て世帯全体を支える制度」に見えますが、実際には所得が高い層ほど減税メリットを大きく受けられる仕組みになっています。この“逆進性”が、今回の見直し議論の出発点です。

扶養控除は「控除額は同じでも、効果は同じではない」仕組み

扶養控除は、所得から一定額を差し引く制度です。
ところが、税率は累進課税（所得が高いほど税率が高い）であるため、同じ38万円の控除でも、世帯によって税金の減り方が大きく違います。

たとえば所得税率が…

• 5％の世帯 → 控除による減税効果：38万円 × 5% = 1万9000円
• 23％の世帯 → 控除による減税効果：38万円 × 23% = 8万7400円

このように、控除額が同じでも税率が高い世帯の方が恩恵が大きくなるため「高所得者ほど有利」と言われるのです。

ここが批判の根拠になっています。

なぜ今、問題視されやすくなったのか

背景には、大きく3つの政策トレンドがあります。

① 児童手当を高校生年代まで拡大したため

児童手当は「所得に関係なく幅広い家庭を支援する」方向で再設計されつつあり、
給付の対象が高校生世代まで延長されました。

給付が増える一方で、控除もそのままでは、
「高所得層は現金給付＋税優遇の二重取りでは？」という批判が出やすくなります。

② 子育て支援を「控除」より「給付」に重点を置く流れ

国の少子化対策では、控除より給付が子育て支援として効果的とされる傾向が強まっています。

• 控除 → 主に高所得層が恩恵を受けやすい
• 給付 → 所得に関係なく恩恵が届きやすい

政策目的（出生率改善）を考えると、給付の方が直接的でわかりやすい支援になるため、控除の見直しが進みやすくなっています。

③ 税制全体の「公平性」を見直す議論が加速している

税制調査会では、個人単位の課税制度、配偶者控除・扶養控除の見直しなど、
世帯単位ではなく個人単位での課税を強める方向が議論されています。

その中で、扶養控除は「旧来の世帯モデルを前提にしている」との指摘も多く、
制度そのものを現代の家庭像に合わせて再設計する必要があるという声が高まっています。

政府が縮小案を検討する“公式の根拠”とは

報道によると、政府・与党内で挙がっている理由は次のとおりです。

• 児童手当の拡充と税制優遇のバランスを取るため
• 高所得層に偏りやすい税優遇を是正するため
• 子育て支援を「給付中心」に再設計するため
• 税制全体を公平な形に整理し直すため

つまり、今回の縮小案は単独で動いているわけではなく、
“子育て支援の整理・一体化”の文脈の中で浮上した政策なのです。

背景のポイント整理

以下のような関係性をイメージすると理解しやすくなります。

【現状】
扶養控除（税優遇） → 高所得者の方が恩恵が大きい
児童手当（給付）   → 所得問わず広く支援

【政策方向性】
給付を厚く → 控除を縮小してバランス調整
公平性を重視 → 税制を再設計

縮小が実現した場合に想定される影響

高校生の扶養控除の縮小は、表面上は「税金が少し増える」程度に見えるかもしれません。しかし、実際には 税額の増減だけでなく、複数の制度に連鎖的な影響が広がる可能性があるため、世帯によって影響度は大きく変わります。ここでは、家計・教育支援制度・自治体の支援策など、具体的な範囲を整理しながら影響をわかりやすく説明します。

家計への直接的な影響：税負担がどの程度増えるのか

扶養控除が縮小されると、課税所得がその分増え、所得税と住民税が上昇します。

現行と縮小案の差は以下のとおりです。

区分	現行	縮小案	差（実質的な課税所得の増加）
所得税	38万円	25万円	13万円増
住民税	33万円	12万円	21万円増

税率を当てはめると、世帯によって負担増は変わります。

所得税率別・負担増イメージ（参考）

• 所得税率 5％の世帯
  → 13万円 × 5％ = 6,500円増
• 所得税率 20％の世帯
  → 13万円 × 20％ = 26,000円増
• 住民税（税率10％）
  → 21万円 × 10％ = 21,000円増

合計すると、数万円規模の負担増になるケースもあります。

とくに、所得が高い世帯ほど税率が高く、負担増の幅が大きくなるのがポイントです。

高校授業料の「就学支援金」への影響

扶養控除が縮小されると、課税所得が増えるため、
高校の授業料を補助する「就学支援金」の対象判定に影響します。

どう影響するか

• 就学支援金は 「市町村民税所得割額」で支給範囲が決まる
• 扶養控除が縮小すると所得割額が上昇
• 結果として、
  支援の対象外になったり、支給額が減ったりする可能性がある

とくに所得の境界ラインにいる家庭は、わずかな税額増で支援対象から外れる恐れがあります。

自治体の独自支援策にも影響が及ぶ可能性

自治体の子育て支援は、次のように住民税額や所得割額を基準にするものが多数あります。

影響が出る可能性のある制度例

• 保育料の減免
• 医療費助成の対象判定
• 子育て世帯向け給付金
• 各種手当の所得制限の計算
• 公営住宅の家賃区分 など

扶養控除の縮小により、これらの制度で
「非課税 → 課税」
「減免対象 → 対象外」
などの変化が起こりうるため、負担増は単純な税額の増加だけにとどまりません。

中間層・高所得層で異なる影響の出方

扶養控除縮小の影響は、世帯の所得階層によって以下のように異なります。

中間層

• 税負担は一定増える
• 就学支援金や自治体支援に影響する可能性が大きい
• 実質的には「教育関連費の負担増」につながりやすい

高所得層

• 税率が高いため、税負担増の幅が大きくなる
• 元々支援制度を利用していないことが多く、「純粋な増税」になりやすい

低所得層

• 元々所得税が非課税の家庭も多く、直接の影響は限定的
• ただし、住民税の判定次第では自治体施策への影響があり得る

子育て政策全体の整合性への影響

扶養控除縮小は、単なる家計負担だけの議論ではありません。
制度全体の整合性にも大きく関わります。

• 給付（児童手当など）を広く手厚くする
• 控除（税優遇）は一部縮小する
• 公平性と効率性を高める税制へ移行する

という方向性がより明確になります。

そのため、扶養控除の扱いは、
「子育て支援をどの制度で行うのか」
という国の政策姿勢を象徴する論点とも言えます。

影響ポイントのまとめ

扶養控除の縮小
      ↓
【直接影響】
課税所得 → 増加
税金 → 増える
      ↓
【波及効果】
就学支援金の判定に影響
自治体支援の対象外になる可能性
      ↓
【世帯ごとの差】
中間層：最も影響を受けやすい
高所得層：税増の幅が大きい
低所得層：制度によっては影響

代替案・併せて検討されている施策は？

高校生の扶養控除縮小の議論は、単に一つの税制をいじるだけの話ではありません。背後には「控除ではなく、より公平で実効性の高い支援に資源を振り向けるべきだ」という政策方向があります。政府・与党が同時に検討している施策も踏まえると、子育て支援全体を“給付中心”に組み替える動きが読み取れます。

ここでは、扶養控除縮小に並行して議論されている代替案や関連施策を整理します。

児童手当の拡充：高校生まで給付対象を拡大

今回の扶養控除縮小の議論の前提となっているのが、児童手当を高校生年代まで延長・拡充する政策です。

拡充の主なポイント

• 支給対象を「15歳まで」から「18歳まで」に延長
• 所得制限を撤廃 → すべての世帯が対象
• 第3子以降は支給額を増額
• 「社会全体で子育てを支える」姿勢を強調

控除（税優遇）は高所得層に偏りやすい一方、給付（児童手当）は所得に関係なく届くため、支援の公平性を高める効果があります。

そのため、児童手当の拡充と扶養控除縮小は、セットで捉えると政策意図がより明確になります。

子育て支援を「控除」より「給付」へシフトする狙い

扶養控除縮小の背景には、次のような政策的考え方があります。

なぜ給付中心が好まれるのか

• 給付は所得に関係なく恩恵が届く
• 若年層・中間層にとって効果が分かりやすい
• 貧困家庭にとって、控除より即効性が高い
• 子育て支援策の目的を明確化しやすい

ひと言で言えば、支援を“見える形”で届けるための再編です。

税制による支援は仕組みが複雑で可視化されにくく、家計が「どれだけ得をしているのか」が分かりづらいという弱点があります。
この弱点を補う方法として、政府は「給付型支援の強化」を重視しています。

高校・大学進学に向けた教育費支援の強化

扶養控除見直しとは別に、教育費への支援強化も同時に検討されています。

教育費支援の拡充例

• 高校授業料無償化の見直し（所得条件の再整理）
• 大学無償化（高等教育の修学支援制度）の対象拡大
• 低所得世帯向けの給付型奨学金の拡充
• 多子世帯向けの学費支援策の強化

教育費は家庭の大きな負担要因であり、「子育てしやすい社会」を作るためには避けて通れません。扶養控除縮小分を、より教育費に直結する支援へ振り向ける狙いが読み取れます。

税制全体の見直しと連動する可能性

扶養控除だけでなく、次のような制度も同時に見直し議論が進んでいます。

• 配偶者控除・配偶者特別控除の再整理
• 夫婦の所得合算など世帯課税のあり方
• 税制調査会による「個人単位課税」の検討
• 子育て世帯への税額控除の新設案

とくに個人単位課税は、扶養控除という“世帯を前提にした制度”と相性が悪く、
長期的には扶養控除の縮小または廃止を視野に入れる議論にもつながります。

扶養控除縮小と組み合わせて出てくる代替案

現時点で明確に制度案として示されてはいないものの、報道や政策議論の中では以下のような代替案が挙がることがあります。

• 子育て世帯向け税額控除（所得に応じず一定額控除）
• 教育費目的のクーポン・バウチャー制度
• 給付型支援をさらに上乗せ
• 多子世帯への優遇強化

これらはいずれも、扶養控除と比べて「公平性」「わかりやすさ」「即効性」が高いのが特徴です。

政府の方針としては、
控除という“陰の支援”から、給付という“見える支援”へ資源を移す
という大きな流れが明らかになっています。

制度変更はいつから？

高校生の扶養控除の縮小は、まだ最終決定ではありません。制度改正には複数の手続きがあり、政府・与党内の議論の進み方によって時期や内容は変わり得ます。ここでは、政府内の検討スケジュール、制度成立までの流れ、注意すべき論点をわかりやすく説明します。

審議の中心となるのは「与党税制調査会」

扶養控除縮小の議論は、主に 自民・公明両党の税制調査会（税調） で進みます。

税調では以下の点が議論の重点になります。

• 扶養控除縮小の是非
• 控除縮小による増税幅
• 児童手当拡充との整合性
• 中間層・高所得層の負担増の扱い
• 制度変更の時期・経過措置

特に「どの層にどれだけ負担が生じるのか」という配慮は、政治的論点として重要になるため、議論の長期化もありえます。

年末の「税制改正大綱」で方向性が固まる可能性

通常、税制改正は次のようなスケジュールで進みます。

税制改正の一般的な流れ

1. 秋〜冬：与党税調で議論が本格化
2. 12月：税制改正大綱として方向性を決定
3. 翌年の通常国会で法案提出・審議
4. 可決すれば翌年度から施行

今回も同様であれば、

• 年末の大綱に扶養控除縮小が盛り込まれるかが最大の山場
• その後、国会で法案化され成立すれば、早ければ2026年度以降の適用もあり得る

という流れになります。

制度変更の「経過措置」は重要ポイント

扶養控除縮小は、多くの家庭に税負担増が発生し得るため、

• 段階的縮小（2〜3年かけて控除額を減らす）
• 現在高校生の家庭には一時的な補填措置
• 急激な負担増を緩和する特例措置

などが検討される可能性もあります。

所得階層ごとの影響差が大きいため、経過措置が付くかどうかで実際の負担は大きく変わる点に注意が必要です。

平行して議論される「関連テーマ」も制度に影響する

扶養控除の縮小は、税制単体の議論ではなく、以下のトピックとも密接に関係しています。

併せて注目すべきテーマ

• 児童手当のさらなる拡充や給付体系の見直し
• 個人単位課税（夫婦合算）や配偶者控除見直し
• 就学支援金の所得判定基準見直し
• 子育て支援財源の確保策
• 多子世帯向け優遇策の再設計

これらは最終的には 「子育て・教育を社会としてどう支えるか」 という理念の中で結び直されます。

扶養控除だけを単独で議論しても全体像が見えにくいため、今後はより包括的な制度設計が求められるはずです。

制度変更が決まった場合の家庭の“準備ポイント”

実際に控除が縮小される場合、家庭として確認しておくべき点は次のとおりです。

家庭でチェックすべきこと

• 住民税額の増減見込み
• 就学支援金の対象に影響が出るか
• 自治体の医療費助成や減免制度の対象外になる可能性
• 年末調整・確定申告での控除額の変化
• 奨学金や教育ローンの利用可否への影響

特に 課税所得の境界付近にある家庭ほど、支援制度が変わるリスクが高い ため、慎重な確認が必要です。

扶養控除見直しは「子育て支援の再設計」を象徴する動き

高校生の扶養控除縮小の議論は、一見すると「税金が少し増えるかどうか」という個別の制度改正のように映ります。しかし、ここまで見てきたとおり、この問題は 税制・給付・教育費支援・少子化対策 と密接に関わる、より大きな政策全体の再設計の中に位置づけられています。

扶養控除のような「控除による支援」は、制度の性質上、高所得層の方がメリットを受けやすいため、公平性の観点から批判されやすい仕組みです。一方、児童手当のような「給付型の支援」は所得にかかわらず家庭に届き、負担感の軽減にもつながります。この構造の違いを踏まえ、政府は “控除から給付へ”という方向に支援の軸足を移す政策を進めています。

今回の縮小議論が示す3つの大きな意味

1. 税制の公平性の再確認

少子化対策を長期的に維持するためには、支援が特定の層に偏らず、公平で納得感のある制度を作る必要があります。扶養控除の縮小は、その象徴的な整理の一歩です。

2. 子育て支援の「見える化」

税制による控除は効果が実感しにくい一方、給付は家計に直接届くためわかりやすい支援になります。支援をより見える形で届けるための再編として、給付中心の政策が進められています。

3. 支援制度の全体最適化

高校生の扶養控除だけでなく、就学支援金・自治体の助成制度・奨学金・税制全体が相互に連動しているため、一部の改正が他の制度の見直しにつながる可能性もあります。今回の議論をきっかけに、子育て支援の体系全体がより整った形へ再構成されていくと考えられます。

家庭が今後注目すべきポイント

扶養控除の今後を見守るうえで、特に重要なポイントは次のとおりです。

• 年末の「税制改正大綱」に縮小案が明記されるかどうか
• 施行時期がいつになるのか（早ければ2026年度以降）
• 経過措置の有無で負担がどれほど変わるか
• 就学支援金や自治体施策に影響が及ぶか
• 教育費支援や児童手当など、他制度とのバランスがどう取られるか

特に、中間層や就学支援金の利用を検討している家庭は、控除縮小が直接的に支援制度に影響する可能性があるため、今後の議論を注視する必要があります。

扶養控除縮小は“単なる増税”ではなく、日本の子育て政策の方向性を映す鏡

今回の扶養控除縮小は、短期的には一部世帯の税負担が増える可能性がありますが、長期的には 「子育て支援の財源の透明化」 と 「公平で持続可能な支援体系の構築」 につながると考えられています。少子化が急速に進む中で、政府がどのような優先順位で支援を再設計していくのかは、日本社会全体の将来像を左右する重要なテーマです。

扶養控除の議論は、そうした大きな変化の入口に立っていると言えます。
今後の政策決定に向けて、家庭としても制度の仕組みを理解し、最新情報を確認しながら、教育費や家計への影響を見通していくことが大切です。