「国の借金1342兆円」でも日本が潰れない理由。世界最大級の「対外純資産」とは?

「国の借金1342兆円」でも日本が潰れない理由。世界最大級の「対外純資産」とは? 経済

「日本の借金が、また過去最大を更新した――。」

2026年2月10日、財務省が発表した「国の借金」は1342兆1700億円。国民一人あたりに換算すると約1100万円という、もはや想像もつかないような巨額の数字が並びました。SNSやニュースでは「日本破綻」や「将来の増税は避けられない」といった悲観的な言葉が飛び交っています。

しかし、その一方で、不思議に思ったことはないでしょうか。これほどの借金を抱えながら、なぜ日本円は暴落せず、私たちの暮らしは(物価高に悩まされつつも)維持されているのか。実は、日本にはこの「借金」の山を裏側で支える、世界最大級の「防波堤」が存在します。

それが、日本が世界に対して持っている資産の純計、「対外純資産」です。

1342兆円という「負債」のニュースだけでは見えてこない、日本経済のもう一つの顔。私たちはこの数字をどう読み解き、自分たちの生活を守るべきなのか。借金大国でありながら「世界一の資産家」でもある、日本の奇妙なバランスシートの正体をわかりやすく解説します。

なぜ借金は増え続けるのか?

借金が膨らみ続ける背景には、単なる「やりくり下手」では済まされない、日本が抱える3つの深刻な構造問題があります。

「全世代型社会保障」への転換が追いつかない高齢化

最大の要因は、社会保障費(年金・医療・介護)の爆発的な増加です。 日本の予算の約3分の1は社会保障に使われていますが、現役世代が減り、高齢者が増え続ける中で、保険料収入だけでは全く足りていません。この「足りない分」を埋めるために毎年国債が発行されています。いわば、「今の生活を維持するために、未来の世代から前借りしている」状態が30年以上続いているのです。

「金利の支払い」が借金を生むループ

借金が大きくなると、その「利息(利払い費)」だけで巨額の予算が必要になります。 2026年現在、金利が上昇傾向にあることで、この利払い負担がさらに増しています。借金を返すための資金を調達するために、また新たな借金(借換債)を発行しなければならない。この「借金が借金を生むスパイラル」に入っていることが、残高を押し上げる大きな要因です。

成長に向けた「攻めの財政」と物価高対策

近年では、単なる補填だけでなく、意図的に借金を増やす側面もありました。

  • 防衛力の抜本的強化: 国際情勢の変化に伴う防衛予算の増額。
  • 物価高・エネルギー対策: 高騰する電気代や燃料費を抑えるための補助金。
  • 次世代投資: 半導体やAIなど、将来の日本の稼ぐ力を育てるための巨額投資。

これらは「未来への投資」という側面もありますが、その元手はすべて借金です。「今は無理をしてでも成長の種をまくべきだ」という政策判断が、結果として1342兆円という数字に表れています。くる」という状態。これが、1342兆円の借金があっても日本が潰れない最大の理由なのです。

最強の防波堤「対外純資産」の正体

「国の借金が1342兆円もあるなら、いつか円の価値が紙クズになるのでは?」という不安に対し、最強の論拠となるのが「対外純資産」です。

日本は2024年末時点で約533兆円という巨額の対外純資産を保有しています。これは、日本全体(政府・企業・個人)が海外に持っている資産(工場、不動産、外国の株や国債など)から、海外に支払うべき負債を引いた「純粋な貯金」のようなものです。

この数字を深掘りすると、日本経済の「打たれ強さ」の理由が見えてきます。

世界トップクラスの「稼ぐ力」

日本はかつて「貿易(モノを売る)」で稼ぐ国でしたが、現在は海外投資による「利子や配当(お金を働かせる)」で稼ぐ国へと変化しています。 毎年、海外資産から得られる利益(第一次所得収支)は約30兆円〜40兆円規模に達しており、これが国内の借金による「利払い」をカバーする大きな余力となっています。いわば「巨額の住宅ローンはあるけれど、海外に持っているアパートからの家賃収入で、ローンの利息分は十分に賄えている」状態です。

「円安」が資産を膨らませるパラドックス

皮肉なことに、借金大国であることや金利差などで「円安」が進むと、日本が海外に持っているドル建て資産の価値は、円換算で大きく膨らみます。2024年〜2025年にかけて対外純資産が初めて500兆円の大台に乗ったのも、円安による評価替えの影響が小さくありません。この「円が安くなっても、国全体としての資産価値は維持(あるいは増加)される」構造が、円の暴落を防ぐ強力なクッションになっています。

ドイツに抜かれ「世界2位」へ

ただし、安心ばかりはしていられません。2025年5月の発表で、日本は長年守り続けてきた「世界最大の純債権国」の座を34年ぶりにドイツに明け渡し、世界2位となりました。 これは日本の資産が減ったわけではなく、ドイツが経常黒字を積み上げ、より速いスピードで資産を増やしたためです。1342兆円という「借金」が過去最大を更新し続ける中で、守りの要である「資産」の伸びが相対的に鈍化している事実は、日本の国力低下を示唆する警鐘とも言えます。

533兆円の内訳

この巨大な資産は、単に日銀の金庫に眠っている現金ではありません。主に以下の3つの形で、世界中で「働いて」います。

日本企業の「海外工場や拠点」 (直接投資)

トヨタが北米に持つ巨大な自動車工場、ソニーが買収した米国の映画会社やアニメ配信プラットフォーム(クランチロールなど)、セブン&アイが展開する米国のコンビニ網……。これらはすべて日本の資産です。 日本企業が国内だけでなく、成長する海外市場で稼ぐための「装置」をこれだけ持っているという事実は、日本経済の強固な基盤となっています。

「新NISA」を通じた私たちの投資 (証券投資)

意外かもしれませんが、私たち個人が新NISAなどを通じて購入している「オルカン(全世界株式)」や「米国株」も、巡り巡って対外資産の一部になります。 また、日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、私たちの年金を増やすために海外の株や債券を大量に保有しています。つまり、「私たちの将来の年金や貯蓄」が、世界中の企業の成長を支え、日本の対外資産を押し上げているのです。

政府が持つ「外貨準備」

政府が「いざという時」のために蓄えているドルなどの外貨(外貨準備)も、100兆円を大きく超える規模で存在します。これは、急激な円安を抑えるための「為替介入」の原資になるなど、文字通り円の信用を守るための「最後の砦」として機能しています。

「借金王」かつ「資産王」の危ういバランス

日本経済は現在、巨額の負債を抱えながらも膨大な資産でその信認を保つという、非常に綱渡りな状態にあります。この均衡が崩れるシナリオとして、特に警戒すべき3つのリスクがあります。

「政府の財布」と「民間の財布」は別物

最大の注意点は、1342兆円の借金は「政府」の負債であるのに対し、533兆円の対外純資産の多くは「民間企業や個人」のものだという点です。 政府が借金返済に困ったからといって、トヨタの海外工場を売却したり、私たちが新NISAで保有している米国株を没収したりすることはできません。つまり、「日本全体で見れば資産がある」という事実は円の信用を支えてはいますが、政府の財政難を直接解決する魔法の杖ではないのです。

金利上昇という「最大の敵」

これまで日本が1000兆円を超える借金を抱えても平気だったのは、世界的に例を見ない「超低金利」だったからです。 しかし、2026年現在、金利には上昇圧力がかかっています。もし国債の金利が1%上昇すれば、1342兆円という巨額の元本に対して、数兆円単位で「利払い費」が膨れ上がります。そうなれば、防衛費や教育費、社会保障に回すはずの予算が、借金の利息を払うだけで消えていくことになります。

「防波堤」を上回る借金の増加スピード

第3章で触れた通り、日本の対外純資産は世界トップクラスですが、その伸び以上に「国の借金」の増大スピードが加速しています。 「資産があるから大丈夫」という理屈は、あくまで資産が借金の重みをカバーできている間だけ通用するものです。2025年にドイツに抜かれ世界2位に転落したことは、日本の「稼ぐ力(資産)」に対する「負担(借金)」の割合が、他国と比較して相対的に悪化しているサインとも言えます。

私たちが覚悟すべきこと

この「危ういバランス」が続くと何が起きるのか。それは、急激な国家破綻(デフォルト)ではなく、「静かなる生活の困窮」です。 政府が利払い負担に耐えるために、増税や社会保険料の値上げ、公共サービスの削減を段階的に進めざるを得なくなります。また、借金への懸念から円安が進めば、輸入物価が上がり続け、私たちの実質的な生活水準は少しずつ削られていくことになります。

「世界一の資産があるから安心」と楽観視するのではなく、「資産という防波堤があるうちに、借金の膨張をどう食い止めるか」。私たちは今、その正念場に立っています。

私たちの生活はどう守ればいいのか

「1342兆円の借金」と「533兆円の対外純資産」。この二つの数字は、日本経済が抱える「重い足かせ」と「強力な盾」を同時に表しています。

記事を通じて見てきた通り、日本が明日すぐに破綻するような事態は考えにくいでしょう。しかし、世界最大級の資産という「防波堤」があるからといって、借金を無限に増やして良いわけではありません。私たちがこのニュースから受け取るべき教訓は、以下の3点に集約されます。

ニュースの「裏側」を読み解く力を持つ

「過去最大の借金」という見出しだけに踊らされず、その内訳(何に使われたのか)や、対外純資産のような「裏付けとなる資産」がどう変化しているかに注目してください。政府の財政状態だけでなく、日本全体としての「稼ぐ力」が維持されているかをチェックすることが、経済の先行きを占うヒントになります。

「静かな増税」に備える

国家破綻というドラマチックな結末よりも現実的なのは、インフレ(物価高)や社会保険料の上昇によって、私たちの手取りがじわじわと減っていく未来です。借金問題は、直接的な「増税」だけでなく、円安による物価高という形でも私たちの財布を直撃します。

個人としてできる対策を

国が抱えるリスクを個人でコントロールすることはできません。しかし、国が「借金王かつ資産王」であるように、私たち個人も「資産を分散して持つ」ことで身を守ることは可能です。 円安やインフレの影響を受ける国内資産だけでなく、新NISAなどを活用して海外の成長を取り入れる。国が対外純資産を積み上げてきたのと同じように、個人レベルでも「外貨を稼ぐ、または外貨で持つ」という視点を持つことが、予測不能な時代を生き抜くための有効な防衛策となります。

おわりに

1342兆円という数字は、私たちが未来に先送りしてきた課題の積み重ねです。しかし、日本にはまだ、それを支えるだけの莫大な資産と信頼が残されています。

「防波堤」が機能している今こそ、私たちはこの巨額の借金を「ただの数字」として聞き流すのではなく、自分たちの世代、そして次の世代がどのような社会を望むのかを真剣に考えるべき時に来ているのではないでしょうか。

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
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本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

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