選択的夫婦別姓制度とは?メリット・デメリット、犯罪の可能性を含めて解説!

政府
  1. 選択的夫婦別姓制度とは何か
  2. 導入が求められる背景・メリット
    1. アイデンティティ保護と負担軽減
    2. 結婚・離婚時のプライバシー保護
    3. 結婚の選択肢拡大
  3. 選択的夫婦別姓制度における主なデメリット
    1. 子どもの姓の選択・扱いが複雑化する
    2. 家族・親戚からの圧力や理解不足
    3. 行政・戸籍事務の新たな課題
    4. 「かえって混乱を招くのでは?」という声
    5. 「家族の一体感が失われる」という心理的反発
  4. 現行法で「別姓」を選ぶ場合のデメリット
    1. 法律上の婚姻と認められない
    2. 相続権が発生しない
    3. 税制優遇などの差
    4. 子どもの親権問題
    5. 結局、改姓を避けたい人が不利益を被る構造
  5. 選択的夫婦別姓制度によって生じうる犯罪の可能性
    1. 身分詐称・重婚的な詐欺の懸念
      1. ● 夫婦別姓を悪用して「未婚と偽る」可能性
      2. ● 別姓ゆえに「重婚的な詐欺」が増える?
    2. マネーロンダリング・偽名口座開設の懸念
      1. ● 金融犯罪への影響
    3. 実際の運用上のセキュリティと対策
      1. ● 戸籍制度と住民基本台帳
      2. ● 現在でも存在する「通称」や「旧姓」の使用
    4. 制度導入が犯罪を大幅に増やす可能性は低いとの見方
    5. 「犯罪の温床になる」と主張される背景
    6. 結論:別姓制度導入による「新たな犯罪リスク」は大きくない
  6. 海外の事例と今後の日本の動向
    1. 海外の状況
    2. 日本の法改正の見通し
    3. まとめ

選択的夫婦別姓制度とは何か

選択的夫婦別姓制度とは、結婚する男女が「必ず同じ姓を名乗らなければならない(夫婦同姓)」という現在の仕組みに加え、「希望する夫婦はそれぞれの旧姓(結婚前の姓)を維持してもよい」とする選択肢を設ける制度を指します。たとえば、Aさん(姓:佐藤)とBさん(姓:鈴木)が結婚するとき、「夫婦同姓」として佐藤になるか、または鈴木になるかを決めるのが今の法律ですが、「選択的夫婦別姓制度」が導入されると「夫婦が佐藤と鈴木のまま別々の姓を名乗りつつ、法律上も婚姻状態にある」ことが認められるわけです。

実は現在の日本では、法律の規定(民法750条)により「夫婦はどちらか一方の姓を称する」と義務づけられています。これは大半の場合、社会的慣行もあって女性が改姓することが多く、厚生労働省の人口動態統計によれば約9割以上の夫婦が夫の姓を選んでいます。その結果、社会や職場で長年使ってきた自分の姓が変わると、身分証明書・銀行口座・クレジットカード・免許証といった数多くの事務手続きが必要になります。また、今まで積み重ねてきたキャリアの実績や対外的な認知度が、姓の変更によって不便を被るケースがあると指摘されてきました。

こうした事情から、「自分のアイデンティティを守りたい」「膨大な改姓手続きを避けたい」という理由で、同じ姓を名乗りたくない夫婦も増えており、そこで選択的夫婦別姓制度の導入が強く求められています。実際、**NHKの報道でも「制度導入を求める議員連盟が党内で議論を強化する動きがある」**と伝えられるなど、2020年代に入ってから改めて議論が活発化している状況です。

一方で、日本弁護士連合会によれば、諸外国と比較して「結婚後の姓を同じにしなければならない」と法律で規定している国はほとんどなく、日本だけがこのような“夫婦同姓の義務化”を続けている、と指摘されています。さらに国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本政府に対したびたび「夫婦同姓の義務付けを改め、選択的夫婦別姓を導入するよう」勧告しており、世界的な潮流から見ても日本の現行制度は時代に合わなくなっていると言われているのです。

「選択的夫婦別姓」と聞くと、「必ず別姓でなければならない」と誤解されるケースがありますが、あくまで「夫婦で同姓を名乗りたければそれでよいし、別姓を望むなら別姓も認める」という“選択肢”を増やす制度です。強制ではありません。よって、伝統的な「家族みんな同じ姓を名乗りたい」という価値観をもつ人も、現行通り同姓を選択できるわけです。この「選択の自由」が生まれることこそが、選択的夫婦別姓制度の最大の特徴といえます。


導入が求められる背景・メリット

アイデンティティ保護と負担軽減

先述の通り、結婚に伴い姓を変える際は、戸籍だけでなく銀行口座、運転免許証、クレジットカード、職場の登録情報、年金手帳や保険証、パスポートなど、さまざまな名義変更が必要になります。これらの手続きは当人の時間や労力を奪うだけでなく、職場や金融機関の窓口業務にとっても負担となるのです。とりわけ女性側が姓を変える例が非常に多いため、負担が片方にだけ集中する現状があります。
選択的夫婦別姓制度が導入されれば、姓を変更したくない人は改姓手続きを避けることができ、結果として家事・育児・仕事といった日々の生活を少しでもスムーズに送れるようになります。

また、名前は個人の「アイデンティティ」の大きな部分を占めるとよく言われます。長年慣れ親しんだ自分のフルネームが変わることで、精神的な違和感や、自身のキャリア・研究成果などがリセットされるような苦痛を覚える方も多くいます。例えば研究職や医療職、またはアーティストなど「名前」自体が社会的評価や専門的スキルの証となっている職種では、結婚をきっかけに改姓することで論文・実績が別名義として扱われてしまい、自身が築いた社会的信用に支障をきたすという悩みが報告されています。

結婚・離婚時のプライバシー保護

結婚や離婚で姓が変わると、職場や近隣コミュニティで「その人の家庭環境が変わった」ことが一目で分かってしまいます。これは良くも悪くも「個人情報」が周囲に伝わりやすく、当人は意図せずプライバシーを失うことにつながるかもしれません。
選択的夫婦別姓制度のもとでは、夫婦が別の姓を名乗っていても法律上は正式な婚姻関係であり、離婚した場合も戸籍上の姓をまた変更する必要がないため、家庭内事情を周囲に知られたくない人のリスク軽減になると考えられています。

結婚の選択肢拡大

さらに「姓が変わることへの抵抗」や「改姓する煩雑さ」が結婚へのハードルとなる人にとっては、選択的夫婦別姓制度が結婚を後押しする要素にもなり得ます。なるほどSDGsのコラムにもあるように、これまで「姓を変えるのがイヤ」「キャリアに支障が出るのでは」と感じていた人々にとって、制度の柔軟化はポジティブな働きかけになるのです。
少子高齢化や人口減少が進む日本社会においては、結婚に対する障壁を減らす取り組みとしても一定の注目を浴びています。

選択的夫婦別姓制度における主なデメリット

ここでは、既に各種メディアや専門家が指摘している選択的夫婦別姓制度の**「デメリット」や「懸念」**にフォーカスして解説します。制度には多くのメリットがあるとされる一方で、導入にあたっては次のような課題も議論されています。

子どもの姓の選択・扱いが複雑化する

もっともよく挙げられる懸念の一つは、「子どもの姓をどうするのか」という問題です。別姓を望む夫婦が結婚した場合、子が生まれると、法律上は「どちらかの姓」を選んで名乗らせることになります。たとえば民法上の改正案(1996年に法制審議会が出した答申など)では、「婚姻届の際に、子どもが名乗るべき姓をあらかじめ決める」とされています。
しかし、いざ子どもが複数いる場合、兄だけは父の姓、妹は母の姓…などと「兄弟で姓がバラバラになる」ことが認められるかどうかは、制度設計次第です。一つの案では「子ども全員が同じ姓」を選ばないといけない形になっており、別姓夫婦が増えたとき、子どもが混乱しないか心配する声もあります。
さらに、子どもが大きくなってから「やっぱり母親の姓に変えたい」と希望した場合、現行法でも未成年の子の姓を変えるには家庭裁判所の許可が必要で、手続きが煩雑になる恐れがあります。

家族・親戚からの圧力や理解不足

選択的夫婦別姓は「選択の自由」を重んじるものですが、実際には親戚や家族、地域社会など周囲から「どうしても同じ姓にするべきだ」「嫁にきたなら夫の姓になるもの」などの“同調圧力”を受ける可能性があります。制度として別姓が合法化されても、日本社会では依然として「家単位」で物事を考える慣習が強い地域も多いため、周囲と意見が衝突するケースが考えられます。
本人同士がいくら合意しても、親世代や地域社会で伝統的家父長制の価値観が根強いと「親から勘当されかねない」「親戚づきあいがギクシャクする」というトラブルが発生するかもしれません。これが心理的負担となり、「制度ができても現実には別姓を選びづらい」という状況を生みかねないという指摘です。

行政・戸籍事務の新たな課題

選択的夫婦別姓制度が導入されると、戸籍法やマイナンバー制度にも調整が必要となります。法務省資料によれば、別姓夫婦を一冊の戸籍にどう記載するのか、あるいは夫婦で姓が違うまま転出入する際の住民票の書き方など、事務面の整備には一定の期間とコストを要します。
さらに戸籍の記載例が複雑になりすぎると、住民票やマイナンバーの登録情報が増える可能性もあり、地方自治体の業務負担をどう軽減するかが課題となります。これは制度改正に反対する理由というより「制度導入の前に行政サービス・戸籍システム面でしっかり準備を整えるべきだ」という慎重論につながっています。

「かえって混乱を招くのでは?」という声

一部では「夫婦どちらかが旧姓を名乗る人が増えると、逆に社会全体が混乱するのではないか?」という疑念も示されています。たとえば職場や学校で、戸籍上の姓・旧姓・結婚後の配偶者姓…とさまざまな組み合わせが出てくると、「同姓の夫婦か別姓の夫婦か、どの書類にどう名前を書くのか判別しにくい」という意見もあるのです。
ただし、この点は「すでに旧姓使用OKの職場が存在している」「海外では昔から別姓が当たり前の国もある」ことを踏まえると、決して克服できない問題ではないという反論も根強いです。要は運用方法を見直し、システム整備すれば十分対処できる範囲、という主張もあります。

「家族の一体感が失われる」という心理的反発

反対論としては最もよく耳にするのが、「別姓にすると家族の絆が薄れるのでは?」という懸念です。これは日本で歴史的に“家”の概念が大きかったこと、夫婦同姓の風習が根付いてきたことに大きく起因しています。
もっとも、同姓・別姓のどちらを選んでも家族関係の質そのものは別問題であり、むしろ普段のコミュニケーションや相互理解のほうが大切だ、という声も少なくありません。こうした心理的抵抗感がデメリットとして機能するかどうかは、個人や家族の価値観次第といえるでしょう。


現行法で「別姓」を選ぶ場合のデメリット

ここまで「選択的夫婦別姓が導入された場合の懸念」を中心に述べましたが、一方で現行法のまま、夫婦別姓を望むカップルは事実上「事実婚」を選ぶしかありません。この事実婚には、具体的にどんなデメリットがあるかを整理します。

法律上の婚姻と認められない

民法750条の規定により、法律上の結婚(法律婚)を成立させるには夫婦同姓が義務づけられています。そのため、夫婦別姓を選ぶカップルは婚姻届を出せず、あくまで「内縁関係(事実婚)」という扱いになります。
内縁関係でも税金の扶養や社会保険の被扶養者認定など一定の場面で配偶者に準じる扱いが認められるケースはあるものの、法律婚ほどの保障は受けられません。これが大きなデメリットです。

相続権が発生しない

法律婚では、配偶者は相続人になれます。しかし事実婚では法定相続人として認められないため、パートナーが亡くなったときに遺産を相続できないという根本的な問題があります。
たとえば夫婦が同居している家が夫の単独名義であっても、事実婚では「妻」がその家を相続できないため、場合によっては住む場所を失うリスクを負うのです。遺言書を用意すれば回避できる部分もあるといえど、普通の夫婦よりも法的手当てに手間がかかります。

税制優遇などの差

法律婚では所得税の配偶者控除や扶養控除、相続税の配偶者控除、贈与税の優遇(いわゆる2,000万円まで非課税の「配偶者控除」)など、公的制度の面でも優遇措置があります。事実婚ではそれらを十分に活用できず、結果的に経済的負担が大きくなる恐れがあります。
また住宅ローンの連帯債務や、配偶者としての連帯保証などもスムーズに組みにくくなる場合があります。こうした経済的・法的保護の格差は見逃せないデメリットの一つです。

子どもの親権問題

事実婚で生まれた子どもは、法律上の「嫡出子(結婚した夫婦の子)」ではなく「非嫡出子(婚姻外の子)」とされます。非嫡出子であっても今は相続分が同等になるなど法改正が進んでいますが、戸籍上は母親の姓での登録になり、父が認知することで父子関係を確定します。
父親の姓を子どもが名乗りたい場合などは、別途手続きが発生し、一般的な「嫡出子」とは扱いが異なる場面が出てきます。こうした煩雑さ・心理的負担を考えると、事実上「別姓でいること」が社会制度面で認められていないというのが今の日本の現実なのです。

結局、改姓を避けたい人が不利益を被る構造

結果として、夫婦同姓しか法律婚が認められない状態だと、「改姓に抵抗があるから別姓がいい」という人ほど不利な立場に置かれやすいといえます。つまり制度上の不備を個人がカバーする必要があり、行政手続きや法的保護の問題など、多くの手間とリスクを個人が背負う形になるのです。
この「個人の自由」か「家族としての制度的保障」かを選ばざるを得ない構造が、「選択的夫婦別姓を導入してほしい」という声の原動力になっています。

選択的夫婦別姓制度によって生じうる犯罪の可能性

身分詐称・重婚的な詐欺の懸念

● 夫婦別姓を悪用して「未婚と偽る」可能性

  • 懸念内容
    夫婦が同じ姓であれば、周囲に「結婚している」と認識されやすいですが、別々の姓の場合、配偶者がいることを隠しやすいのではないか、という指摘があります。
    例えば、悪意をもった人が「自分は独身だ」と偽りやすくなる可能性がゼロとはいえません。
  • 実際にはどうか
    一般的には、法律上は婚姻届を提出すると「戸籍」に夫婦の婚姻事実がきちんと記載されます。たとえ別姓であっても、「婚姻している事実」自体は法的に確認可能です。よって、戸籍や住民票の閲覧など正規の手続きによって身分確認をすれば「既婚か独身か」は判明します。
    また、クレジット契約や役所の手続きで身分証明を要求される場合も多く、偽装結婚や身分詐称は現行の制度下でも「公文書偽造」や「詐欺罪」に問われる可能性が高くなります。

● 別姓ゆえに「重婚的な詐欺」が増える?

  • 懸念内容
    「夫婦が別姓だと、Aさんが別の地域で“別の姓”として再び結婚しやすいのではないか」という重婚的な詐欺の懸念が挙げられる場合もあります。
  • 実際にはどうか
    日本では婚姻届を提出する際、戸籍謄本の提出などの法的確認が必須です。仮に別の地域であっても戸籍情報は全国的に管理されているため、重婚は簡単には成立しません(法律上そもそも認められない)。
    つまり、結婚の事実確認や戸籍システムがしっかり機能していれば、夫婦別姓だからといって重婚が容易になるわけではない、というのが法務実務の立場です。

マネーロンダリング・偽名口座開設の懸念

● 金融犯罪への影響

  • 懸念内容
    別姓を使うことで、個人の資金移動を追跡しにくくし、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税が容易になるのではないか、という議論です。
    例えば、夫は自分の姓、妻は別の姓を使い、それぞれ名義の口座を複数持つことで、資金の流れを複雑化できるのではないか、という不安が挙げられます。
  • 実際にはどうか
    どのような姓であっても、「銀行口座の開設には本人確認書類が必須」となっています。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど公的身分証明書が必要であり、「選択的夫婦別姓だから簡単に匿名口座を作れる」わけではありません。
    さらに金融機関はマネーロンダリング防止のため、口座開設時や一定金額以上の取引時には厳格な本人確認(KYC:Know Your Customer)を行っており、国内外の規制が強化されています。
    よって、制度として夫婦が別姓になったとしても、金融取引の本人確認は同じか、むしろ厳格化の方向にあるため、犯罪リスクが突然高まる可能性は低いと考えられます。

実際の運用上のセキュリティと対策

● 戸籍制度と住民基本台帳

  • 日本には戸籍制度があるため、別姓かどうかにかかわらず、婚姻関係であることや本人の本名を確認できます。
  • 住民基本台帳やマイナンバー制度の導入により、国民全員が一意の個人番号を持つようになっています。これらの仕組みは「名前の一致」だけではなく「個人情報(生年月日・住所・番号)」で紐づけることで、なりすましや重婚を防止しています。

● 現在でも存在する「通称」や「旧姓」の使用

  • 日本では既に旧姓使用(通称使用)を多くの企業や団体が認めており、身分証にも「旧姓併記」が可能になっています。しかし、それを悪用した大規模な犯罪が急増しているというデータは特に報告されていません。
  • むしろ通称使用が広がる中で、企業や行政も「戸籍上の本名との紐づけ管理」に慣れ始めているため、制度整備が進むほど犯罪に悪用されにくくなるのが実態といえます。

制度導入が犯罪を大幅に増やす可能性は低いとの見方

総合的に見ると、選択的夫婦別姓制度が導入されたとしても

  1. 婚姻事実や本人確認は戸籍・住民票・マイナンバー等でしっかり管理される
  2. 金融機関の本人確認や税制上の確認なども、個人の氏名だけでなく生年月日・マイナンバーなど他の情報と照合する
  3. 現行の法律下での詐欺罪・公文書偽造罪などは引き続き適用される

といった理由から、「別姓を悪用した犯罪が激増する」といったリスクは極めて小さいと考えられています。海外では当たり前のように別姓・同姓を自由に選択できる国が多いですが、それによって“夫婦別姓を利用した犯罪”が社会問題化している事例は報告されていません。


「犯罪の温床になる」と主張される背景

とはいえ、選択的夫婦別姓に慎重な立場の一部からは、

  • 家族関係を周囲に隠しやすい
  • 同姓である場合と比べて“配偶者かどうか”が第三者から分かりにくい
  • これを利用して投資詐欺・婚活詐欺などを起こしやすくなるのでは
    といった声が上がることもあります。

しかし、先述したように「結婚の事実そのもの」は戸籍や役所の記録に必ず残りますし、偽名での口座開設などは現行の法律でも違法です。したがって、制度導入に反対・懸念を示す意見の多くは、むしろ「従来の家族観や慣習が変化することへの不安」「管理運用が複雑になることへの不安」が根底にあると見る専門家も多いです。


結論:別姓制度導入による「新たな犯罪リスク」は大きくない

  • 現行の戸籍・マイナンバー・金融機関での本人確認システムにより、身分詐称や重婚は既に厳しく制限されている。
  • 海外でも夫婦別姓は一般的だが、そこを悪用した特殊な犯罪が顕著に増えたという事例はない。
  • 身分詐称や詐欺は、姓の同異にかかわらず起こり得る犯罪であり、夫婦同姓を維持するか別姓を認めるかという問題とは別次元で対策されるべきもの。

このように、選択的夫婦別姓制度が導入されても、それ自体が「犯罪の温床になる」と断定する明確な根拠はありません。むしろ不正行為を抑える仕組み(戸籍システムや金融機関のKYC、マイナンバーなど)を維持・強化することで、別姓・同姓にかかわらず、犯罪リスクを低下させられると考えられます。

海外の事例と今後の日本の動向

海外の状況

世界的には、夫婦同姓を法律で義務づけている国はほとんどありません。たとえばアメリカ合衆国やイギリス、ドイツ、オーストラリアなどでは、法律上、夫婦がそれぞれ自分の旧姓を保つか、どちらかの姓を選ぶかなど、複数の選択肢が存在しています。特に欧米の国々では、女性が結婚後も旧姓を使うのは一般的で、またドイツのように「結合姓」という形(両者の姓をハイフンでつなぐなど)でファミリーネームを作る例も珍しくありません。

こうした仕組みが長く運用されている国では「夫婦が別姓かどうか」ということよりも、「家族としての意思疎通がきちんと取れているか」「子どもの養育環境をどう整えるか」の方が重要視されています。つまり「姓が違うと家族がバラバラになる」といった主張はあまりなされないのです。

日本の法改正の見通し

日本において選択的夫婦別姓制度を実現するには、民法や戸籍法など複数の法律を改正する必要があります。国会内ではいくつか議員連盟が成立し、賛成派は1996年の法制審議会答申(夫婦別氏を希望する場合を容認する改正案)を基に議論を進める意向を示していますが、党内には反対意見をもつ議員も少なくありません。

法務省の公式見解では、選択的夫婦別氏制度の導入は「家族の在り方に深く関わる重要な問題」であり、国民の十分な理解の下に進められることが望ましい、とされています。また、政府は男女共同参画基本計画(第5次など)で「夫婦の氏の問題に関し、国会審議の動向を注視しつつ検討を深める」としており、議論が再開した現段階でもなお、導入時期は明確になっていません。

ここがポイント

  • 選択的夫婦別姓制度 … 「夫婦は同姓にするか、別姓にするかを選べる」仕組み。
  • 同姓強制の現状 … 日本では法律上、どちらかが姓を変えないと法律婚が成立しない。特に女性側が改姓する例が多数。
  • メリット … 改姓に伴う手続き負担の軽減、キャリア・実績の維持、プライバシー保護など。
  • デメリットや懸念 … 「家族の絆が弱まる」「子どもの姓をどうするか」などの問題提起。現行法では、別姓を望む夫婦は事実婚を選ぶしかなく、相続権や税制優遇が受けられない。
  • 海外では当たり前? … 多くの国で夫婦別姓は一般的。国連も日本に勧告している。

まとめ

選択的夫婦別姓制度は、強制ではなくあくまで「選べる道」を増やそうというものです。夫婦同姓を望む人にとっては現状とほぼ変わりなく、別姓を望む人にとっては手続き上の負担やアイデンティティ喪失といった問題を解消できる可能性があります。海外ではとっくに一般化している事例も多く、国内でも推進を求める声は年々大きくなっています。一方で、家族の一体感や従来の家制度を重視する意見もあるため、導入には政治や国民レベルでのさらなる議論が必要です。

私たちの社会が多様な家族の形を認め合い、誰もが「自分らしい選択」をできるようになるためにも、選択的夫婦別姓制度の意義を理解し、自分自身で考え、そして周囲と対話を深めていくことが大切ではないでしょうか。

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
最近話題のニュースをアウトプットする場としてサイトを更新中。
なるべく正しい情報を届けるように心がけますが、誤った情報があればご一報ください。
本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

管理人をフォローする
政府
管理人をフォローする
タイトルとURLをコピーしました