外国人政策の司令塔、内閣官房に新設へ

外国人政策の司令塔、内閣官房に新設へ 政府

日本で働き、暮らす外国人が増える中で、「ルールは守られているの?」「制度はこのままで大丈夫?」といった声があちこちから聞こえてくるようになっています。そんな中、石破政権は、外国人政策を一元的にまとめる“司令塔”となる組織を、来週にも内閣官房に設けることを決めました。

背景には、国民の不安と、日本社会が抱える深刻な人手不足という現実があります。共生か、規制か。この動きは、今後の社会のあり方や選挙の争点にも関わる大きな転機になりそうです。新しい組織が何を担い、どんな課題に向き合うのか、丁寧に見ていきます。

背景にある「国民の不安」と「経済の現実」

日本政府が来週にも設置すると発表した「外国人政策の司令塔組織」。この新たな動きの背景には、二つの大きな課題があります。それが「国民の不安」と「経済の現実」です。

国民の間に広がる“もやもや”と不安

近年、外国人の数は日本全国で急増しています。総務省のデータによれば、2023年末時点での在留外国人数は約325万人。これは日本の人口のおよそ40人に1人にあたる数です。なかでもコンビニ、飲食店、工場、介護施設などで働く外国人が目立つようになりました。

一方で、SNSやニュースを通じて「外国人による犯罪」「制度の不適切な利用」といった話題がたびたび報じられるようになりました。

例えば、

  • 無免許で車を運転し事故を起こした
  • 社会保険料を納めないまま福祉制度を利用した
  • ゴミの分別ルールを守らない

といった行動に対して、地域住民のあいだに「外国人はルールを守らないのではないか?」という疑念や不満が広がっています。

実際に、FNNの7月の世論調査では「外国人の不動産取得や入国管理に規制を強化すべき」と考える人が78%にのぼりました。これは、かなり高い数字です。

林官房長官も記者会見でこう述べました。

「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、制度の不適切な利用によって、国民が不安や不公平感を抱いている」

つまり、今回の司令塔設置は、こうした国民の“モヤモヤ”や“不安”を受け止め、解消していくための一手でもあるのです。

一方で、日本経済は外国人なしには回らない

しかし「じゃあ外国人を減らせばいい」というわけにはいきません。なぜなら、今の日本社会は、深刻な「労働力不足」に直面しているからです。

たとえば次のような現場では、外国人労働者がすでに“なくてはならない存在”となっています。

業種外国人労働者の活躍例
介護高齢者施設でのお世話、夜勤勤務などを担う
製造自動車部品や食品加工のラインを支える
小売コンビニやスーパーの深夜勤務を支える
農業収穫期に短期労働者として活躍

少子高齢化が進む日本では、若い労働者の数がどんどん減っています。それを外国人が補ってくれているのが現実なのです。

林官房長官も会見でこう語りました。

「我が国が成長型経済へと移行するためには、海外の活力を取り込むことが不可欠」

つまり、「外国人に頼らない日本」は、もはや成り立たない――という現実もまた、今回の司令塔設置の大きな理由なのです。

“規制”と“共生”の両立はできるのか?

ここで難しいのが、「治安や制度悪用への対策」と「経済への外国人の貢献」を、どう両立させるかという問題です。

たとえば、制度を厳しくしすぎると「優秀な外国人が日本を避ける」リスクが出てきます。逆に、受け入れを広げすぎると「ルールを守らない人」も増えてしまう可能性がある。

このバランスをどうとるか――。それが「司令塔組織」に課せられた最大の課題です。

石破首相は「秩序ある共生社会を目指す」と強調しています。つまり、ただ“外国人に我慢を強いる”のでも、“好き放題させる”のでもない。ルールを守ってもらいながら、協力し合える社会を作る。それが政府の目指す方向なのです。

感情ではなく事実で議論を

東京大学の内山融教授は、次のようにコメントしています。

「排外主義に走るのはまずいが、現実に不安を感じている国民が多い以上、施策を打つのは当然。何より、感情ではなくエビデンス(事実)に基づいて対策をとってほしい」

つまり、外国人に対する賛否の感情だけで政策を動かすのではなく、「データ」「実態」「未来への責任」を元に判断するべきだということです。

今回設置される司令塔組織が、その期待に応えられるかどうか。今後の対応が、私たち一人ひとりの暮らしにも大きな影響を与えていくことになるでしょう。

新組織の役割と構成

「外国人政策の司令塔組織」は、ただの相談窓口ではありません。この新しい組織は、日本政府の中で“本部”や“司令塔”のような役割を担い、外国人に関わるさまざまな問題に一元的に対応することを目的としています。

では、実際にどんな働きをするのでしょうか?ここでは、その役割と構成についてわかりやすく説明します。

なぜ「司令塔」が必要なのか?

これまで、日本で暮らす外国人に関わる問題は、いくつもの省庁が別々に担当してきました。

  • 入国や在留資格のこと → 法務省(出入国在留管理庁)
  • 医療や保険のこと → 厚生労働省
  • 納税や財政のこと → 財務省
  • 住まいや地域支援のこと → 国土交通省や地方自治体

このように、関係機関がバラバラに対応していたため、「話が遅い」「連携が取れていない」といった問題がたびたび指摘されていました。

特に、以下のような“複雑な問題”が増えてきたことが、新組織創設のきっかけになっています。

  • 不法滞在者が医療制度を利用しているケース
  • 納税をしていない外国人が住民サービスを受けている例
  • 交通ルールを守らないまま日本で運転する事例

こうした課題に対して、「どの省庁が主導するのか分からない」「責任の所在があいまい」という現実があったのです。

だからこそ、複数の省庁をつなぎ、国として一つの方向性を示す「司令塔」が必要だと判断されました。

新組織が担う主な役割

新しく設置される司令塔組織は、次のような具体的な役割を担います。

主な役割内容
1. 外国人政策の総合調整各省庁の取り組みをまとめ、矛盾をなくす
2. 制度の見直し・改善在留資格や社会保障制度などを定期的に検討
3. 地方自治体との連携強化地域で起きている課題を国に集約し、対策へつなげる
4. データの一元管理入国・在留・納税・保険などの情報を横断的に把握
5. 国民への情報発信外国人政策の方針や状況をわかりやすく伝える

こうした働きによって、「現場で困っている声に早く応える」「制度のすき間をふさぐ」「安心とルールある共生を両立させる」ことが可能になると期待されています。

どんな機関と連携するのか?

司令塔組織は、内閣官房のもとに設置される予定です。内閣官房とは、簡単に言うと「総理大臣の司令室」のような存在で、省庁をまたいで政策を進めるための中枢機関です。

新しい組織は以下のような主要機関と連携し、動いていきます。

連携先担当する分野
出入国在留管理庁入国審査、ビザ、滞在資格など
厚生労働省医療保険、介護保険、雇用など
財務省納税、国の予算、財政支援など
総務省地方自治体との調整、住民登録など
警察庁治安維持、外国人犯罪への対応
文部科学省日本語教育、子どもの教育支援

このように、政府内のさまざまな部門が連携して動くことで、複雑化する外国人政策にもスピード感を持って対応できる体制が整います。

外国人本人・地域社会への影響は?

新組織が設置されることで、外国人にとっても、地域に暮らす日本人にとっても、次のような変化が予想されます。

外国人側にとって:

  • 日本での暮らしに必要なルールや制度がわかりやすくなる
  • 不適切な在留や制度の悪用が減ることで、真面目に暮らす外国人への偏見が少なくなる
  • 地域との信頼関係が築きやすくなる

日本人側にとって:

  • 不安や不公平感を感じていた問題が可視化・改善される
  • 「なぜこの人が保険を使えるの?」「なぜ税金を払っていないのに…」といった疑問が解消されやすくなる
  • 外国人との共生が「負担」ではなく「力」に変わる実感が生まれる

実行力と信頼性がカギ

新たに設置される「外国人政策の司令塔組織」は、これからの日本にとって非常に重要な意味を持ちます。少子高齢化で人手不足が進むなか、外国人をどう受け入れ、どう共に暮らしていくか。その答えを出すための第一歩がこの組織なのです。

しかし、「組織を作っただけ」で終わってはいけません。国民と外国人の双方が安心して暮らせるよう、ルールを整え、実行力のある運営が求められます。

政党別の対応と選挙戦略

この動きは、7月の参議院選挙を前に、与野党すべての政党に大きな影響を与えています。なぜなら、「外国人との共生」や「治安・制度の問題」は、今や多くの国民が関心を持っているからです。

このセクションでは、主要な政党が外国人政策についてどのように向き合っているのか、公約や発言をもとにわかりやすく整理していきます。

自民党:保守票を守るため「規制強化」に前のめり

与党・自民党は今回の選挙において、外国人政策を重視する姿勢を一段と強めています。公約の中には、

  • 「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みの加速
  • 外国免許切替(外免切替)の審査厳格化
  • 外国人政策を指導する「司令塔組織」の新設

といった明確な項目が並びます。

特に注目されたのは、石破首相が7月5日に埼玉県川口市で行った街頭演説での発言です。

「外国の方々にも役割を果たしてもらうことは大事。ただし、日本の習慣を身につけ、ルールを守ってもらう必要がある」

このように“共生”を意識しながらも、国民の不安に寄り添う姿勢を打ち出しました。

背景には、参政党など新しい保守系政党の勢いに危機感を抱いているという事情があります。支持層の中には「日本人ファースト」を望む有権者も多く、そうした層を引き止めるためにも、外国人政策で「厳しさ」を示す必要があると考えているのです。

公明党:制度の適正化を重視

連立与党である公明党は、極端な排除や差別的な姿勢には否定的ですが、「ルールに基づいた運用の厳格化」を訴えています。

たとえば、

  • 外国人の社会保険料未納情報を在留審査に反映
  • 適切に税金や保険を納めた外国人を評価する制度

など、“制度をきちんと守る人が損をしない仕組みづくり”を強調しています。

宗教母体を持つ公明党らしく、人道的な視点を重んじつつも、「国民の不満にも応える必要がある」というバランスを取っている印象です。

維新の会:外国人の“数”に着目した人口戦略

日本維新の会は、外国人の増加に対して非常に現実的・戦略的な視点を持っています。公約の中には、

  • 外国人比率の上昇抑制
  • 外国人の総量規制の導入
  • 日本人と外国人の人口バランスを考えた「人口戦略」の策定

などが含まれています。

つまり、「どれだけ受け入れるか」に具体的な上限を設ける考え方です。

ただし、外国人を否定しているわけではなく、「必要な人材は受け入れるが、無制限にはしない」というスタンスです。特に都市部に集中している外国人をどう分散させるかも重要な論点としています。

立憲民主党・共産党:共生社会を前面に

一方、立憲民主党と共産党は、外国人との共生をより強く訴えています。たとえば立憲民主党の公約には、

  • 外国人への差別的な言動を禁止する法律の制定
  • 難民や技能実習生の権利保護の強化
  • 外国人が地域に溶け込みやすい教育・支援策の推進

などが明記されています。

7月7日には、立憲民主党の野田代表が群馬県で次のように発言しました。

「外国の方に入っていただき、仕事をしてもらわなければ、日本社会は回らない」

これは、人口減少が進む日本にとって、外国人労働者の存在がいかに重要かを強調した発言です。

共産党も、ヘイトスピーチ(差別的発言)への対策や、技能実習制度の廃止を訴えるなど、“外国人の人権を守ること”に重点を置いています。

国民民主党:表現を軟化しつつ“公平性”に焦点

国民民主党は当初、「外国人への過度な優遇を見直す」と公約に記載していましたが、「排外主義的だ」との批判を受け、以下のように表現を修正しました。

「外国人に適用される諸制度の運用の適正化を行う」

玉木代表は、「誤解を招かないようにするため」と説明し、内容は変えずに言い回しだけを丁寧にした形です。

国民民主党の立場は、「制度は平等であるべき」「真面目に納税し、生活している外国人が損をしない社会が理想」といった“公平性”の観点からの改善を目指しています。

参政党:急進的な保守路線が注目を集める

今回の政治の動きを大きく動かした存在が、参政党です。都議選では「日本人ファースト」を掲げて3議席を獲得し、今回の参院選でも注目されています。

公約では、

  • 外国人の不法滞在者を厳しく取り締まる
  • 外国人による不動産取得の制限
  • 日本文化・ルールを守れない外国人の受け入れに反対

など、かなり厳しめの規制強化を訴えています。

このような姿勢に対しては賛否が分かれますが、「現場で困っている人たちの声を代弁してくれる」と感じた人たちの支持が集まっているのも事実です。

外国人政策は選挙の“争点”に

これまで、選挙の争点といえば「経済」「子育て支援」「年金」などが中心でしたが、2025年の参院選では、「外国人政策」がそれに並ぶ注目トピックになりつつあります。

政党ごとに立場や表現は異なるものの、多くの政党が「制度の適正化」「不安の解消」「共生のバランス」に取り組む姿勢を見せています。

今後の政策が、

  • 感情ではなく、データと現場の声に基づいているか
  • 外国人と日本人の双方にとって納得のいく制度になっているか

という視点で見ていくことが大切です。

新組織による今後の課題と展望

石破首相が表明した「外国人政策の司令塔組織」は、これまでバラバラだった関係省庁の動きをまとめ、外国人に関する政策を一元的に進めていくことが狙いです。

この動きは、国民の不安に対応しながら、共生社会を実現するための大きな第一歩ですが、ここからが本番ともいえます。新組織に求められるのは、単なる調整役ではなく、実効性ある制度づくりと効果の検証、そして必要に応じた法改正です。

このセクションでは、新組織が今後直面するであろう課題と、それをどう乗り越えていくのか、その展望についてわかりやすく解説していきます。

制度の“すき間”をどう埋めるか

これまで、外国人に関する制度は、各省庁が独自に設計してきたため、「制度のすき間」が多く残されていました。たとえば、こんなケースがあります。

  • 税金を納めていない人が福祉制度を利用している
  • 住所登録がないまま自治体の支援を受けている
  • 免許の確認が不十分なまま日本で運転している

こうした“抜け道”があると、真面目に納税しルールを守る外国人も損をしてしまいます。さらに、日本人側の不満も高まるばかりです。

司令塔組織の役割は、こうしたバラバラの制度を見直し、「ルールは誰にとっても公平に適用される」仕組みにしていくことです。

たとえば、

  • 在留管理と納税記録の情報を連携させる
  • 住民票の未登録外国人に対する制度の適正化
  • 保険の利用資格と就労状況を自動的に照合

といった「情報の共有」と「制度の連動」がカギとなるでしょう。

効果をどう測定するのか?

制度を作ったり、改正したりすることは大切ですが、その結果がどうなったのかを測る仕組みも同時に必要です。これを「効果測定」といいます。

たとえば、外国人犯罪の件数が本当に減ったのか、外国人の納税率が上がったのか、日本語教育の成果が出ているのかなど、数字と実態をセットで見なければ、改善は続きません。

司令塔組織には、各省庁や自治体から集めたデータを分析し、政策の効果を定期的にチェックする機能が求められます。これは単に「役所の仕事」ではなく、私たちの生活の安心感にも直結する重要な役割です。

また、効果がなければ、次の対策を打つ柔軟性も必要です。計画通りにいかないこともある中で、「うまくいかなかったこと」を正直に見つめ直し、次の一手を考える姿勢が問われます。

必要な法改正をどう進めるか?

制度を見直す中で、「これは法律そのものを変えないといけない」という場面も出てくるでしょう。たとえば、

  • 外国人に関する差別的言動を規制する法律
  • 技能実習制度の見直しや廃止
  • 在留資格の細分化と管理の厳格化

などは、単なる行政の対応では限界があります。こうした場合には、国会で法律を改正する必要があり、政治の合意が必要になります。

しかし、外国人政策は政党によって考え方が大きく分かれる分野です。選挙が近づくと、どうしても「厳しくすれば票が取れる」「寛容すぎると叩かれる」といった短期的な思考に偏りがちです。

そのため、新組織には、事実やデータに基づいた中立的な提案を行い、国会議員や政党に冷静な判断を促す役割も期待されます。国民の感情と、制度の公平性や効果のバランスを取るためにも、「法律をどうするか」は最も慎重に進めるべきテーマのひとつです。

外国人からの信頼を得られるか?

もうひとつ重要なのは、外国人当事者の信頼を得ることです。

今回の司令塔設置に対し、「外国人が悪者扱いされるのでは」と不安を抱く声も上がっています。特に、まじめに働いて税金も納めている外国人にとって、「制度の強化」=「自分たちへの締めつけ」と感じられる可能性があります。

だからこそ、制度の透明性や説明責任がとても大切です。

  • どんなルールなのか
  • なぜその制度が必要なのか
  • 自分たちはどうすればよいのか

を、わかりやすく伝えることで、誤解や不信感を減らし、ルールを守ろうという意識も高まるのです。

政府としては、多言語での情報発信、日本語教育の支援、相談窓口の整備など、「一方通行ではない共生」の姿勢を見せることが求められます。

5年後、10年後の“共生社会”へ

新組織の本当の役割は、「問題を今すぐ解決すること」ではありません。もっと大きな目標は、10年後、20年後に向けて、日本社会がどうあるべきかを形にすることです。

外国人は“特別な存在”ではなく、すでに私たちの地域で共に暮らす“生活者”です。

・学校に通う外国籍の子ども
・介護施設で働く若者
・工場でモノづくりを支える技能実習生

こうした人たちと、どう信頼し合い、トラブルなく暮らしていけるか。そのビジョンを示し、制度に落とし込んでいくのが、この司令塔組織の最も重要な仕事になるでしょう。


石破政権が立ち上げる「外国人政策の司令塔組織」は、単なる行政の新部署ではありません。そこには、「外国人とどう生きるか」「制度をどう正すか」「不安と希望をどう整理するか」という、日本社会の“これから”がかかっています。

感情的な議論に左右されず、事実をもとに政策を進めていけるか。そして、外国人も日本人も“安心して暮らせる社会”をつくれるか。その問いに、今、私たち一人ひとりが向き合う時が来ているのかもしれません。

この記事を書いた人

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本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

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