子ども医療費助成、自治体でこんなに差が！住む場所で得する制度まとめ

「子どもが風邪をひいて、また病院…」「予防接種やアレルギー通院、毎月けっこうかかるなぁ」――そんな声、子育て世帯なら一度は経験があるのではないでしょうか。

実は、子どもの医療費の負担は、住んでいる市区町村によって大きく異なることをご存じですか？　ある街では高校生まで完全無料、別の街では小学生までしか助成されず、しかも自己負担がある…なんていう差も。

この記事では、「子ども医療費助成制度」の基本から、自治体ごとの制度格差、制度が充実している自治体の特徴、そして引っ越しや住まい選びの判断材料としての活用方法まで、実例とともにわかりやすく解説します。

子ども医療費助成ってなに？
どうして自治体で差が出るの？
実際にどれくらい違うの？
助成制度が“強い”自治体の傾向
移住や引っ越しの判断材料にも！
まとめ

子ども医療費助成ってなに？

子ども医療費助成（じょせい）とは、子どもが病気やケガで病院に行ったときに、かかるお金（医療費）の一部や全部を、住んでいる自治体（市区町村など）が代わりに出してくれる制度のことです。

ふつう、私たちが病院に行くと、健康保険を使っても3割の医療費を自分で払うことになります。たとえば、お医者さんにかかって5000円の診察料がかかったら、そのうち1500円は自分で払うことになります。

でも、「子ども医療費助成制度」がある自治体に住んでいると、その1500円の負担がゼロになったり、100円や200円だけで済んだりすることがあります。これによって、子育て中の家庭の経済的な負担が軽くなるのです。

通院と入院で助成内容が変わることも

この制度には、大きく分けて2つの場面があります。

通院（つういん）：ふつうに病院に行って診てもらうとき
入院（にゅういん）：病気が重くて、何日か病院に泊まって治療する必要があるとき

自治体によっては「通院は小学校6年生まで」「入院は中学3年生まで」というように、対象となる年齢が違うことがあります。また、通院だけ助成する自治体、入院だけ助成する自治体もあります。

自己負担ってなに？

制度があっても、「完全に無料」ではないこともあります。これは「自己負担（じこふたん）」があるかどうかで決まります。

たとえば、

「1回の通院ごとに200円だけ払ってください」
「月に上限500円までは自己負担です」
「薬代は別に払ってもらいます」

など、少しだけ負担が必要なケースもあります。

一方で、

「通院も入院もすべて無料」
「自己負担もゼロ」
という完全無料タイプの自治体もあります。

所得制限がある自治体もある

さらに、「どんな家庭でも助成してもらえる」とは限りません。中には「所得制限（しょとくせいげん）」というルールがある自治体もあります。

これは、年収が高い家庭は制度の対象外になりますよ、というルールです。たとえば「両親の年収が900万円以上の家庭は助成が受けられない」といった条件があることがあります。

しかし最近では、「所得制限なし」で、すべての子どもに助成をしている自治体も増えてきています。

なぜこんな制度があるの？

子ども医療費助成は、単なる“お金の補助”だけではありません。目的は主に以下のようなものです。

病気やケガを早めに見つけて、治してもらうため
　→ お金の心配があると、病院に行くのをためらってしまう家庭もあります。助成があると、早めに受診できるので健康を守りやすくなります。
子育て家庭の経済的な負担を軽くするため
　→ 小さい子どもは体調を崩しやすく、病院に行く回数が多くなりがちです。毎回の支払いが重なると家計にも負担になります。
住民に「子育てしやすい町」と感じてもらうため
　→ 子育て支援が手厚い自治体は、子育て世代の移住希望者にも選ばれやすくなります。人口減少対策としても注目されています。

小さな違いが、大きな差になることも

このように、子ども医療費助成制度は一見シンプルですが、自治体ごとに内容が大きく異なります。

たとえば、ある市では「高校3年生まで自己負担ゼロ」、別の市では「小学校6年生まで、1回200円負担」など、大きな違いがあります。引っ越す場所によって、年間数万円以上の差が出ることもあるのです。

これから住む場所を決めるときや、子育てを始めようという家庭にとって、この制度はとても重要なチェックポイントになります。

どうして自治体で差が出るの？

子ども医療費助成制度は「全国で一律の仕組み」だと勘違いされがちですが、実際には住んでいる自治体ごとに内容が大きく異なります。同じ都道府県内であっても、市区町村によって助成の範囲や条件がまったく違うことは珍しくありません。

これはなぜなのでしょうか。その理由は、大きく分けて3つあります。

自治体が制度の運用主体だから

最大の理由は、子ども医療費助成が各自治体の判断で設計・実施されている制度だからです。つまり、制度の運営主体が「市区町村」なので、それぞれの地方自治体が独自のルールを作ることができます。

例えば、対象となる年齢（小学校まで、中学校まで、高校までなど）や、通院・入院の助成の有無、自己負担金の設定、所得制限の有無なども、すべて各自治体の裁量に任されています。

これは、地域の実情や財政状況、住民ニーズに応じた柔軟な対応を可能にする一方で、全国的には大きな“格差”が生まれてしまう要因にもなっています。

自治体の財政力や優先度の違い

次に挙げられるのが、自治体の財政力や支出の優先順位の違いです。子ども医療費助成に必要な予算の多くは、自治体自身の負担でまかなわれています。そのため、税収が豊かで財政に余裕のある自治体ほど、手厚い制度を用意しやすい傾向があります。

また、同じような財政状況であっても、子育て支援を重視して予算を振り向ける自治体もあれば、高齢者福祉やインフラ整備に重点を置く自治体もあります。結果として、「どこに力を入れるか」という政策判断の違いが、制度内容に現れてきます。

以下は、自治体によって異なる助成内容の一例です。

自治体	通院助成年齢	入院助成年齢	自己負担	所得制限
東京都文京区	高校3年生まで	高校3年生まで	なし	なし
千葉県松戸市	中学3年生まで	中学3年生まで	1回200円	なし
大阪府守口市	小学6年生まで	中学3年生まで	月500円	あり

このように、隣接する自治体であっても、助成の年齢・自己負担・所得制限の有無がバラバラであることが分かります。

人口動態や子育て施策の戦略差

最後に見逃せないのが、自治体の人口戦略の違いです。特に、若年層の人口流出に悩む地方都市では、子育て世代の呼び込みを狙って医療費助成を充実させているところが増えています。

例えば、首都圏に住んでいる共働き世帯が「医療費が無料で、保育環境も整っているから」と、あえて郊外の市町村に移住するケースもあります。こうした住民の流れを見越して、自治体側も積極的に子育て支援を「移住促進策」として位置づけているのです。

逆に、都市部でも「医療費助成を充実させなくても人が集まる」と判断している場合、制度はそれほど手厚くないこともあります。これは、助成制度を地域のブランディングに活用しているかどうかの違いとも言えるでしょう。

制度格差は「意図的な戦略」でもある

子ども医療費助成の格差は、単なる予算の差ではなく、自治体の財政状況や子育て政策に対する考え方の違いから生まれています。言い換えれば、その自治体が「子育て支援にどれだけ力を入れているか」のバロメーターとも言えるのです。

今後、引っ越しや住宅購入を検討している方にとって、この制度の中身を比較することは、重要な判断材料になります。制度の内容だけでなく、その背景にある自治体の価値観やビジョンまで目を向けることで、より納得のいく選択ができるでしょう。

実際にどれくらい違うの？

子ども医療費助成制度は、すでにお伝えしたように市区町村ごとに異なる仕組みで運用されています。しかし「違いがある」と言われても、どれほどの差があるのか、ピンとこない方も多いかもしれません。

ここでは、実際にいくつかの自治体を取り上げて、制度の内容を比較してみましょう。数字やルールの違いを見ることで、住んでいる場所によってどれほどのメリット・デメリットが生まれるかが明確になります。

比較：代表的な自治体の助成内容一覧

以下は、首都圏・関西圏・地方都市の一部を例にした子ども医療費助成の比較表です（2025年時点の情報をベースに構成しています。正確な内容は各自治体公式サイトをご確認ください）。

自治体	通院助成年齢	入院助成年齢	自己負担	所得制限
東京都杉並区	高校3年生まで	高校3年生まで	無料	なし
千葉県松戸市	中学3年生まで	中学3年生まで	1回200円	なし
大阪府守口市	小学6年生まで	中学3年生まで	月上限500円	あり
長野県飯田市	高校3年生まで	高校3年生まで	無料（薬代は別）	なし
静岡県焼津市	小学6年生まで	中学3年生まで	通院1回500円	あり
北海道札幌市	小学6年生まで	中学3年生まで	所得により異なる	あり

どのくらい家計に影響するのか？

子どもがよく病院にかかる家庭ほど、助成の違いによって年間数万円の差が出ることがあります。

たとえば、月に2回程度の通院がある家庭の場合、1回200円の自己負担があるかどうかで、年間4800円の差が生まれます。また、対象年齢が高校生までカバーされているか小学生までかによっても、中学校・高校の間の通院費がそのまま実費になるか、無料になるかの違いがあります。

薬代も重要なポイントです。自治体によっては薬代まで助成される場合と、「診察代だけが対象で、処方箋薬局の支払いは別途必要」とするところもあります。薬代の積み重ねは地味に効いてくるので、注意が必要です。

所得制限があるとどう変わる？

所得制限の有無も、見逃せない要素です。所得制限がある場合、共働き家庭や世帯年収が一定以上の家庭は助成の対象外になる可能性があります。つまり「制度がある」と思っていても、いざ使おうとしたら対象外だったというケースが起こりうるのです。

一方で、所得制限がない自治体では、収入に関係なくすべての子どもが助成を受けられるため、公平性・安心感があります。この点は、制度を選ぶうえでの大きなポイントと言えるでしょう。

地域格差はなぜ生まれる？

同じ県内でも制度の内容が異なる理由については前のセクションで解説しましたが、制度比較を見てみるとその差は想像以上に大きいことがわかります。たとえば、東京23区の中でも手厚い杉並区と、同じ首都圏でも自己負担や年齢制限のある市では、利便性や家計への影響に明確な違いが出ます。

つまり、どこに住むかによって、子育て家庭が受けられる公的支援の「質」や「範囲」が大きく変わるのです。

見落とされがちな「見えないコスト」に目を向けて

住宅の価格や家賃、保育園の空き状況といった「見える条件」ばかりに目が向きがちですが、こうした医療費助成制度は“見えないけれど家計に直結する”重要な要素です。

子どもが育つ環境を考えるうえで、医療費の助成内容をしっかり比較・把握しておくことは、将来の安心や家計の安定にもつながります。

助成制度が“強い”自治体の傾向

子ども医療費助成制度が充実している自治体には、いくつかの共通した特徴があります。もちろん、単に「お金がある自治体」がすべて手厚いわけではありません。自治体の財政状況や人口構成、政策方針などが組み合わさって、制度設計に反映されています。

ここでは、そうした「助成制度が強い自治体」に見られる傾向を詳しく見ていきましょう。

人口流入を促したい自治体ほど積極的

近年、地方の中小自治体では、若年層の流出や出生数の減少に悩む地域が増えています。こうした自治体では、「子育て支援の充実」を移住・定住促進のカギと考え、積極的に医療費助成を拡充しています。

実際に、長野県飯田市や富山県滑川市などでは、高校卒業まで医療費無料・自己負担なし・所得制限なしというかなり手厚い支援を行っており、「子育てするならこの街で」とアピールしています。

このような自治体は、助成制度だけでなく、保育所の整備、給食費の無償化、児童手当の上乗せなど、総合的な子育て支援パッケージとして展開しているのが特徴です。

財政力のある都市部自治体も独自の工夫

一方で、東京都23区や政令指定都市など、ある程度財政に余裕のある都市部でも、独自色を打ち出す自治体が目立ちます。たとえば、東京都杉並区や文京区などは「所得制限なし」「高校3年生まで無料」「自己負担なし」という内容で、住民からの評価も高くなっています。

都市部の自治体では、もともと人口が多いため支援にかかるコストも大きくなりますが、それでも予算を確保して制度を維持・拡充している点は注目に値します。これは、子育て世代の支持を集める政治的効果や、住民の定住促進につなげる狙いもあると考えられます。

「所得制限なし」が増加中のトレンド

かつては「高所得世帯は対象外」とする自治体が多数派でしたが、近年では所得制限を撤廃する動きが増えています。これは、共働き世帯が増えて年収は高くても、実際の可処分所得が限られていたり、保育料や教育費で家計が厳しい家庭が多いことが背景にあります。

そのため、「高所得だから助成を打ち切る」のではなく、「すべての子どもを等しく支援する」という方向に舵を切る自治体が増加傾向にあります。特に2023年以降は、この傾向が全国的に広がっています。

制度の“強さ”は組み合わせで判断を

子ども医療費助成の「強さ」は、1つの要素だけで決まるものではありません。対象年齢が高いかどうか、自己負担があるかどうか、所得制限の有無、薬代の扱い――これらを総合的に評価する必要があります。

以下は、制度が充実していると評価されやすい項目の組み合わせです。

評価項目	条件例
対象年齢	高校3年生まで、または18歳年度末まで
自己負担	なし、または1回100〜200円程度
所得制限	なし
通院・入院の範囲	両方とも対象
処方薬の費用	助成対象に含まれる

これらがそろっている自治体は、子育て支援に積極的であると判断され、ファミリー層にとって大きな魅力となります。

制度の「背景」を読み解く視点を

助成制度が手厚いかどうかを見ることは重要ですが、同時に「なぜその制度があるのか」という自治体の方針や人口戦略を読み解く視点も大切です。

人口を維持したいのか、他地域との差別化を図りたいのか、それとも子どもの健やかな成長を最優先に考えているのか。こうした自治体の“姿勢”を知ることで、自分の価値観に合った地域選びにもつながります。

移住や引っ越しの判断材料にも！

子ども医療費助成の内容は、実は「住む場所を選ぶ理由」にもなり得る重要な要素です。特に、これから出産や育児を控えている家庭、住宅の購入を検討している世帯にとっては、日々の家計に直結する支援制度が整っているかどうかは、大きな判断材料となります。

「医療費がかからない」が移住の決め手になることも

最近では、「都心から電車で1時間以内」「家賃が安い」といった条件だけでなく、「子ども医療費が無料」「高校生まで助成がある」という情報を調べてから移住先を決める人も増えてきました。

たとえば、埼玉県のある市では、東京都内からの子育て世代の移住が進んでいます。その理由の一つが、「高校卒業まで医療費が自己負担ゼロ」という手厚い制度。東京都内と比べて家賃も安く、教育支援も充実しているため、あえて郊外に引っ越すという選択肢を取る家庭が少なくありません。

住宅購入や引っ越し前にチェックしておくべき制度

住宅を購入したあとで、「あれ？隣の市は医療費がずっと手厚かった…」と気づいても、すぐに引っ越すことはできません。だからこそ、家を建てる・買う・借りる前に、子育て支援制度の情報収集は欠かせません。

調べておくと良いポイントは次のようなものです。

医療費助成の対象年齢と範囲（通院・入院）
自己負担額の有無（1回あたり・月ごとの上限など）
所得制限の有無
処方薬や調剤費も助成されるかどうか
他の子育て支援（保育料、給食費、学習支援など）

これらを比較することで、「この地域はトータルでどのくらいの支援があるのか」が見えてきます。

公的な情報源を活用する

制度の詳細は、各自治体の公式ウェブサイトに掲載されています。「〇〇市　子ども　医療費助成」と検索するだけで、多くの自治体が分かりやすく制度の概要や手続き方法を紹介しています。

また、自治体によっては「子育てガイドブック」や「移住者向けパンフレット」をPDFで配布しており、助成制度だけでなく、保育園の空き状況、子育て支援センターの数、休日診療の体制などもまとめて確認できます。

家計の視点と、暮らしの質のバランスを考える

医療費助成の充実は、直接的な家計の支援になります。たとえば、1回2000円の通院費が無料になるだけでも、月数回の通院があれば年間で1〜2万円以上の負担減につながります。複数人の子どもがいる家庭ではその効果は倍増します。

しかし一方で、医療費助成だけで地域の良し悪しを判断するのではなく、通学・通勤の利便性、保育の質、地域コミュニティの雰囲気なども合わせて考えることが大切です。支援制度はあくまで暮らしの一部であり、全体のバランスを見て判断する視点が求められます。

制度の違いを知ることは、「よりよく暮らすための第一歩」

子ども医療費助成のような制度は、普段意識されにくいものの、生活の中でじわじわと効いてくる「見えないメリット」を持っています。その違いを事前に把握し、活用できるかどうかは、結果として家計や生活の安心感にもつながります。

だからこそ、これから住まいを選ぶ人には「制度の違いを調べる」「比較する」「わからないことは自治体に問い合わせる」というアクションが何より大切です。

まとめ

子ども医療費助成制度は、一見すると地味な行政サービスのように思えるかもしれませんが、実は子育て世帯の生活を根底から支える重要な仕組みです。しかも、この制度は全国一律ではなく、市区町村ごとにまったく異なる内容で運用されており、場合によっては年間数万円規模の差が生まれることもあります。

これまで見てきたように、助成制度が充実している自治体には、共通した傾向があります。若年層の移住を促したい地方都市や、子育て支援に積極的な都市部では、所得制限の撤廃や高校生までの完全無償化など、制度の手厚さが地域の魅力となりつつあります。

一方で、引っ越しや住宅購入を決めたあとに「この地域は助成が少なかった」と気づいても、簡単には移れません。だからこそ、「住む場所を選ぶ前に制度を知る」ことが、家計にも精神的な安心にもつながります。

制度を比較・確認するときのチェックポイント

これから子育てを始める人、住まいを探している人にとって、以下のポイントを事前に調べておくことが重要です。

項目	チェック内容の例
対象年齢	通院・入院それぞれ何歳まで助成されるか
自己負担	無料か、一部負担（1回200円など）があるか
所得制限の有無	世帯年収によって対象外になる条件があるか
処方薬・調剤費の助成	薬代も助成対象かどうか
制度の更新頻度	年度ごとに変わるのか、恒常的に継続されているか
他の子育て支援制度	保育園、給食費、子育て給付金なども合わせて確認