【2025年版】全国で増える宿泊税、どこがいくら? 導入地域&料金一覧

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【2025年版】全国で増える宿泊税、どこがいくら? 導入地域&料金一覧

宿泊税の仕組みと現状

宿泊税(しゅくはくぜい)とは、ホテルや旅館などの宿泊施設に泊まった際に、宿泊料金とは別に支払う必要がある税金のことです。これは自治体ごとに「法定外目的税」として導入される場合が多く、国の法律で定められた「消費税」や「住民税」などとは別枠で設けられています。自治体によっては「宿泊税」という名前ではなく、「宿泊施設利用税」「観光税」と呼ばれることもあります。

たとえば東京では、1人1泊あたり1万円以上1万5000円未満なら100円、1万5000円以上なら200円が課されます。この仕組みは2002年から始まったもので、主に「観光振興」に役立てられています。一方、大阪府では1人1泊あたり7000円以上で100円、2万円以上なら300円に区分されており、京都市は最低200円から、高額な宿泊料金のときは1000円まで段階的に上がります。自治体によって細かい金額設定や制度の開始時期が違うのが特徴です。

東京や大阪、京都以外にも、石川県金沢市や北海道倶知安町(くっちゃんちょう)など、多くの自治体が既に宿泊税を導入していたり、導入予定を発表したりしています。さらに、東京都は2025年内を目どに宿泊税の見直しを行うという報道がありました。宿泊料金の上昇やインバウンド観光客の増加が背景にあり、「より高額な宿泊客」からの負担額を引き上げる方向で検討が進んでいるようです。

この宿泊税の目的は、主に「観光地を支えるための財源確保」とされています。旅行者が増えれば、地域のゴミ処理や道路整備、公共交通機関の増便などにより出費がかさみます。とくに海外からの観光客(インバウンド)が急増すると、トイレや案内板の整備、外国語対応の充実など、新たな投資が必要です。そこで、来訪者自身にも応分の負担を求めようという考え方から始まりました。

実際に京都市では、宿泊税の収入を活用して路線バスの混雑対策や美観保持のための無電柱化などを行っています。また、違法民泊への取り締まりや観光案内所の多言語化対応など、いわゆる“オーバーツーリズム”を緩和するための取り組みにも使われているようです。

さらに近年では、東京や大阪など大都市圏ばかりでなく、福岡県や軽井沢町、愛知県常滑市、静岡県熱海市なども宿泊税の導入や拡充に動いています。地方自治体の多くは財政が厳しく、観光振興予算を大幅に増やすのが難しい状況です。そこで、「宿泊している人」から税を直接集めることで観光関連事業に再投資を行い、それを地域経済の活性化につなげようとしているわけです。

一方で、宿泊税導入には「客離れのリスク」など不安の声もあります。料金が上がれば宿泊者が他の地域へ流れるのではないか、と懸念する宿泊事業者や旅行者もいるからです。実際、二重課税の事例として、福岡県と福岡市が同時に宿泊税を導入し、宿泊者にとっては合計で200円(高額だと500円)かかるケースが生まれています。このような場合、ホテルや旅館が「なぜ税金が増えたのか」を分かりやすく説明できないと、利用者に不透明感を与えてしまいかねません。そのため、宿泊税を導入するときは、徴収の仕組みと使い道を丁寧に公開して理解を得ることが欠かせないと指摘されています。

また、温泉地では既存の「入湯税(にゅうとうぜい)」と合わせて支払いが増えるケースもあり、その地域ならではの調整が必要です。複数の税が重なってしまうと、利用者の心理的な負担を高めてしまうため、地域の状況に応じて、入湯税を下げる・廃止する、あるいは宿泊税の対象外にするなどの工夫も求められています。

こうしたメリット・デメリットを踏まえつつ、多くの観光地ではすでに宿泊税を活用して、インフラ整備や宿泊者へのサービス改善に力を入れています。結果的に、利用者にとっても使いやすい観光地になれば、「多少の宿泊税なら納得できる」という流れが生まれる可能性が高いでしょう。


第2章:宿泊税の課題とこれからの展望(約2000文字)

宿泊税が導入されている自治体では、集めた税金の使い道をいかに透明化し、地域の魅力向上につなげていくかが大きなポイントです。もし税収がどこに使われているかが不明瞭であれば、宿泊事業者や宿泊客が「納める意義」を感じにくくなり、制度そのものの正当性が疑われるでしょう。そこで各自治体は、ホームページや報告書、住民向け広報誌などで活用例を公表したり、施策の効果を分析した上で次年度予算につなげたりといった取り組みを進めています。

例えば、京都市では年間数億円もの宿泊税を「混雑対策」「民泊対策」「文化振興」「景観整備」などに配分したと公表しており、具体的な事業例と合わせて「市民や観光客双方へのメリット」を示しています。これによって、市内の宿泊事業者や観光関連のプレイヤーが、「宿泊税を払うことで京都全体のイメージや利便性が上がる」という理解を得やすくなっているようです。また、違法民泊の取り締まりや多言語案内の充実など、地域住民の日常生活を守る施策にも役立つため、住民からの協力が得られやすくなるという利点があります。

しかし、すべての地域でスムーズに進んでいるわけではありません。新規で導入を検討している自治体では、「1人1泊あたり300円上乗せする案」に対して宿泊業者が猛反発し、合意が得られず導入を延期するケースも見られます。とくに小規模な宿や安価な宿泊施設が多い地域では、ほんの数百円の差が「他地域への流出」を招きかねず、経営の不安材料となります。さらに、自治体の範囲をまたいで宿泊客が動くような観光地では、「隣の市は宿泊税がないなら、そちらに行こう」と考える観光客も出てくるかもしれません。

また、福岡県と福岡市のように、都道府県と市区町村が同時に宿泊税を課す「二重課税」問題もあります。たとえば福岡市内に泊まると県の分と市の分を合わせて徴収され、2万円以上の宿泊で合計500円になる事例です。事業者側が二重課税をわかりやすく説明しないと、利用者から「なぜこんなに高いのか」と質問が殺到し、クレームに発展する可能性も否めません。こうしたケースでは、自治体同士がうまく連携をとり、負担の線引きや税率の設定を工夫しながら「高いけれど価値のある使い道」を示す必要があるでしょう。

それでは、中学生でもわかる「宿泊税が今後どんな役割を果たすか」について、もう少し先を見通してみましょう。観光業は日本国内の経済を支える大きな柱の一つであり、とくに海外からの観光客(インバウンド)に対しては、円安などの影響もあって各地で需要が増しています。インバウンドが増えるほど、対応する観光案内所や多言語でのサイン整備、都市部では空港からのアクセス向上などが求められます。これは膨大な費用がかかるため、自治体としては「宿泊税による安定的な財源」が欲しいわけです。

さらに、オーバーツーリズムの影響で、住民がバスに乗れないほど混雑するといった問題も各地で報告されています。観光客に負担してもらったお金を使って「住民が生活しやすい仕組み」を整えることは、長い目で見れば地域全体の価値を高め、結果的に観光地としてのブランド力を向上させる効果が期待できます。

一方、自治体が宿泊税を導入すれば万事解決というわけでもなく、使い道の公開・説明責任が非常に重要です。京都市など先進例を見ればわかるように、「具体的な整備計画を示し、年度ごとにきちんと報告する」「観光関係者や住民を巻き込んだ検討委員会を設置する」など、継続的なコミュニケーションが求められます。これがうまくいくと、地域全体の観光振興がスムーズに進み、自治体・事業者・住民・観光客のすべてにメリットが生まれる可能性があるのです。

最後に、もし宿泊施設がある地域で宿泊税が導入された場合、ホテルや旅館は「チェックイン時に宿泊税を別途徴収する」ケースが多いです。その際、利用者が驚かないように、ホームページや予約サイトで事前に「宿泊税は別途いただきます」と明記し、フロントでの説明を工夫する必要があります。さらに、税収が具体的にどんな事業に生かされているかを簡単に案内できると、「これなら納得」と思ってもらいやすくなるでしょう。

こうした課題を乗り越えて、各地の魅力が向上すれば、観光客の満足度も上がり、リピーターを増やすことができます。宿泊税は単なる“負担”ではなく、その地域をより良くしていく“投資”であると理解してもらえるよう、自治体と宿泊事業者が協力していくことが大切です。中学生のみなさんにとっても、「将来、自分が暮らす地域にどんな人を呼び込みたいか」「そのためにどんな設備やサービスが必要か」を考えるきっかけとなるかもしれません。


各種数値や具体例は、前述のNHKやじゃらんnet、Yahoo!ニュース、JTB総合研究所、おもてなしHRなど複数の記事・資料を元にまとめています。

  • 宿泊税を導入する自治体の目的:観光振興・インフラ整備・住民生活との両立
  • 宿泊税のメリット:安定財源の確保、地域ブランドの向上、観光客と住民双方が納得できる仕組みづくり
  • 宿泊税のデメリット(懸念):宿泊者への負担増による客離れ、二重課税や入湯税との重複、透明性がない場合の不信感

こうした課題や懸念はあるものの、「宿泊税をいかに上手に使い、地域を豊かにするか」が今後の大きなカギと言えます。旅行者の負担分をきちんと地域に還元し、みんなにとって魅力的な観光地をつくる取り組みが期待されています。

宿泊税の導入状況一覧(2025年3月現在)

自治体導入時期宿泊税(1人1泊あたり)補足・備考
東京都2002年10月〜導入済・10,000円~14,999円 → 100円
・15,000円以上 → 200円
– 2002年に全国初導入。
– 2025年中をめどに見直しを検討(税負担水準の引き上げ案)。
大阪府2017年1月〜導入済・7,000円~14,999円 → 100円
・15,000円~19,999円 → 200円
・20,000円以上 → 300円
– 旅館業法の適用施設が主な対象。
– 7,000円未満は課税なし。
京都市2018年10月〜導入済・~19,999円 → 200円
・20,000円~49,999円 → 500円
・50,000円以上 → 1,000円
– 市内全域の宿泊施設が対象。
– 大学以外の学校の修学旅行などは免税。
石川県金沢市2019年4月〜導入済・5,000円~19,999円 → 200円
・20,000円以上 → 500円
– 観光地の魅力向上や受入体制整備に活用。
北海道倶知安町2020年11月〜導入済・宿泊料金の2%– 金額に応じて変動(端数切捨て)。
– ニセコ地域(後述のニセコ町とは別自治体)。
福岡県
(福岡市・北九州市を除く)
2020年4月〜導入済・宿泊料金にかかわらず一律200円– 県全域で適用。
– 福岡市・北九州市は独自制度を併用。
福岡市2020年4月〜導入済・~19,999円 → 200円(うち県税50円含む)
・20,000円以上 → 500円(うち県税50円含む)
– 実質的に「県 + 市」の二重課税だが、市がまとめて徴収。
– 国際会議誘致やインバウンド施策に活用。
北九州市2020年4月〜導入済・宿泊料金にかかわらず一律200円
(うち県税50円含む)
– 市独自分150円+県税50円。
– 夜景観光整備や多言語化に活用。
長崎県長崎市2022年4月〜導入済・~9,999円 → 100円
・10,000円~19,999円 → 200円
・20,000円以上 → 500円
– 外国人観光客の増加を念頭に置いた施策。
– 旅館・ホテル・簡易宿所などが対象。
北海道ニセコ町2024年10月〜導入済・~5,000円 → 100円
・5,001円~19,999円 → 200円
・20,000円~49,999円 → 500円
・50,000円~99,999円 → 1,000円
・100,000円以上 → 2,000円
– アウトドア客や外国人客増への対応。
– 後志(しりべし)エリアの観光振興に活用。

今後導入・導入予定

自治体導入予定時期宿泊税(1人1泊あたり)補足・備考
愛知県常滑市2025年1月6日〜・宿泊料金にかかわらず一律200円– 中部国際空港(セントレア)周辺の観光開発を目的。
– 東海3県初の導入例として注目。
静岡県熱海市2025年4月1日〜・宿泊料金にかかわらず一律200円– 既存の入湯税との兼ね合いに注意。
– 観光地の環境整備を強化。
長野県全域
(軽井沢町ほか)
2026年6月〜(予定)※県と市町村で上乗せ課税の可能性あり。
例)
軽井沢町:
・6,000円以上~1万円未満 → 300円
・1万円以上10万円未満 → 350円
・10万円以上 → 800円
– 長野県が県全域を対象に法定外目的税を導入検討。
– 軽井沢町は上記を骨子案として公表。
– 3年間は経過措置で一部減額。

補足

  • 上表は主にじゃらんnet「宿泊税に関するお知らせ」(2025/02/05)、各自治体HPなどを参照し、代表的な導入・導入予定地域を抜粋したものです。
  • 同一都道府県内であっても、市町村単位で税率が異なる場合や、県・市の両方が課税する(二重課税)場合などがあります。
  • 学校行事の修学旅行、長期滞在者、地元住民の宿泊などは課税免除の対象になることがあるため、最終的な適用条件は各自治体や宿泊施設にご確認ください。
この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
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本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

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