新年度予算案の修正内容と背景
新年度予算案(2025年度予算案)の修正が注目を集めています。通常、政府が提出する予算案は、そのままあるいは一部微調整を受けながら国会を通過することが多いのですが、今回のように「減額」で修正される事例は珍しく、過去には1996年度以来29年ぶり、しかも減額修正は70年ぶりという報道もありました。なぜこれほど珍しい状況になったのか、その背景と修正点を詳しく解説します。
少数与党下での予算編成
2024年の衆院選の結果、自民党と公明党(以下「自公」といいます)が合計しても衆議院で過半数を割り込んだ“少数与党”の状況となり、さらに日本維新の会など一部の野党との合意が必要になりました。国会の予算審議では、予算案を成立させるためには衆議院と参議院双方の通過が必要ですが、特に衆院では「議決後、参院で最大30日審議すると自然成立する」という「衆議院の優越」があるため、まずは衆院で確実に可決させることが極めて重要になります。少数与党にとっては、他党の協力なしでは可決が難しいため、譲歩や修正が行われたという事情があります。
総額の変化と減額修正
政府の当初案は一般会計総額が「115兆5415億円前後」と報道されていました。しかし、最終的には「115兆1978億円」となり、およそ3437億円の減額修正が行われています。減額修正自体が非常に珍しいのは、これまで政府案より増額や変更なく通る場合が多かったのに対し、今回は野党側の要望を取り入れ、いくつかの支出を見直したためです。
具体的には、当初政府が「予備費(緊急時に機動的に使えるお金)」として計上していた1兆円を2500億円減らして7500億円に修正したり、複数の基金について見直しを行うことで数千億円規模の調整をしています。さらに、高額療養費制度(医療費が高額になった場合の自己負担上限を抑える仕組み)の見直しで患者負担を一部抑制する分、追加で財源を確保するため、国の支出を別の部分で圧縮するなども検討されました。
教育関連の拡充と維新の合意
日本維新の会が最大の争点に掲げていたのが「高校授業料の無償化の拡大」でした。公立だけでなく私立高校や専門高校へ通う生徒への就学支援金を全ての世帯に年11万8800円支給できるようにする案です。所得制限を撤廃し、25年度から適用することで、広く教育負担を軽減する狙いがあります。
維新は、ここを政府・与党(自公)が受け入れることで、当初は予算案全体に反対する可能性も示唆していたものの、最終的には賛成にまわりました。この“合意”によって、予算案が衆院を通過することがほぼ決定したとみられています。また、こうした教育関係の措置拡充は「未来への投資」として重視される一方、多額の財源が必要になり、その分をどこでカットするかが調整の焦点となりました。
高額療養費制度の修正
もともと政府案では、医療費が一定額を超えたときに自己負担上限が軽減される「高額療養費制度」の負担上限を、長期治療患者(多数回該当)に対してさらに上げる方向で進める予定でした。しかし、立憲民主党や共産党などが「生活や治療に直結する重大な負担増だ」として反発し、与党内でも慎重論が出ました。結果として、一部の時期(25年8月の改定タイミングなど)を据え置く形になり、制度改正は再度検討されることになっています。
衆院通過と今後の展望
4日午後の衆院本会議で可決された後、参議院に送付され、参院での審議を経て、最終的には予算案は3月末~4月頭に「自然成立」または「本会議可決」の形で成立が見込まれています。年度内(3月末まで)に成立しない場合でも、4月上旬には成立する公算が高く、暫定予算編成を回避できるとの見方が強いです。
少数与党での予算編成は非常に難航すると思われていましたが、最終的に複数の野党(とくに維新)を取り込むことで、政府としては予算成立のめどを立てた形です。ただし、今後も参院審議などで細部の議論は続くため、最終的にどの程度の変更が加わるかは注目されます。

税制関連法案の修正内容と「103万円の壁」問題
こちらのセクションでは、特に注目を集めている「税制関連法案」、とりわけ「年収103万円の壁を見直す」修正案を中心に解説します。また、ガソリン税の暫定税率廃止など、別途協議されているテーマについても触れます。
「103万円の壁」から「160万円」へ
いわゆる「年収103万円の壁」とは、パートやアルバイトなどで働く人が、年収が103万円を超えると所得税がかかり始め、手取りが減るケースを指します。この壁があるため「103万円を超えないように時間を減らして働く」ことが多く、労働意欲の妨げになると指摘されてきました。今回、自公両党が提案した修正案では、この課税最低限を160万円まで引き上げることが含まれています。
ただし、年収850万円以下などの所得制限が導入される点が最大の特徴です。国民民主党は「年収178万円まで無条件で上げるべき」と主張していましたが、財源の問題や合意内容の兼ね合いから、与党案では最終的に「160万円&所得制限つき」となりました。
「年収の壁」引き上げによる影響と財源
年収103万円の壁を160万円に引き上げると、パートやアルバイト、特に主婦・主夫層、学生などの労働時間・労働収入が増えやすくなる可能性があります。一方、政府側は減収(税収が減る)を約6210億円と見込んでおり、財源確保策として、他の部分の税制や支出削減とセットで行う必要があります。
国民民主党は、より大胆な「178万円」案を主張していましたが、受け入れられず、維新も一時は「123万円案」からさらに拡大を求めるなど、野党間でも温度差がありました。最終的には、維新が160万円案に賛成に回ることで、修正案が通過する流れとなりました。
ガソリン税の暫定税率廃止
ガソリン税の暫定税率は、ガソリンに課される税金の中でも特に上乗せ部分を指し、かねてより「廃止すべき」との声が一部政党や国民から上がっていました。今回は自民、公明、維新の3党で「ガソリン税暫定税率の廃止に向け、他の野党にも呼びかけて協議していく」という合意がなされました。具体的には、立憲民主党や国民民主党も含めて5党で議論し、再来年度からの廃止を目指す動きが示唆されています。
ただし、ガソリン税の暫定税率を廃止すると、国や地方の道路整備などに充当されてきた財源が大きく減るため、その分をどこから補うかが課題になります。維新は一貫して暫定税率廃止を強く訴えてきましたが、与党の一部や他野党の間では「このタイミングで廃止すると、インフラ整備に影響が出る」「今後のEV(電気自動車)普及状況など、将来の道路利用のあり方と合わせて検討が必要」といった慎重意見もあります。
政府・与党と主要野党の駆け引き
今回、少数与党としては早期の予算・法案成立が急務でした。一方、維新や国民民主などは自らの公約や主張を実現するチャンスと捉え、政府・与党から譲歩を引き出そうとしました。このため、例えば「高校授業料無償化拡大」や「年収の壁見直し」「ガソリン税廃止」など、いくつかの争点を軸として話し合いが進められ、最終的には部分的な合意に至ったわけです。
しかし、すべての野党と合意したわけではないことも事実です。立憲民主党や共産党、れいわ新選組などは、高額療養費の負担増・凍結などに対する政府案の不十分さを強調し、独自の修正案や組み替え動議を出しましたが、採決では否決されています。
今後の流れと課題
税制関連法案の修正案は、予算案と同じく衆院で可決され参院に送付されます。成立すれば、2025年4月以降の課税や控除制度に影響が及ぶため、現場(各企業や自治体、個人納税者など)への周知が必要です。特に「年収の壁」引き上げは働き方に直接影響するため、早期の情報提供とシステム改修が望まれます。
また、ガソリン税暫定税率の廃止については、すぐに結論が出るわけではなく、今後5党が協議するなかで、道路財源や自動車関連諸税の全体像を見直す必要があるでしょう。つまり、短期間での廃止は難しく、将来的にどのように再編していくかが大きなテーマとなります。
さらに、これら税制改正が進む過程では、「賃上げ」と「物価上昇」への対策とも密接に関連しているため、今後の政権や国会の政策運営においても、継続的に注目される見込みです。
まとめと「答え」
ここまでの説明を踏まえて、新年度予算案と税制関連法案の修正について「単純にまとめる」だけではなく、「まとめた上で答えを出す」形で結論を示します。

ここがポイント
- 少数与党の下での予算・法案修正は珍しいが一定の成果を得た
- 高校授業料無償化や「年収103万円の壁」の見直しなど、一部の野党(維新)や他党が提案してきた課題を取り込んだことで、予算案が減額修正という形になった。
- 一方で、立憲民主党・共産党など他の野党が求めた高額療養費の大幅な引き上げ凍結など、すべては実現されず、部分的合意にとどまる。
- 「年収の壁」引き上げは、働き手にとってのプラス効果が期待されるが、所得制限あり
- 160万円まで非課税枠を拡大することで、パートやアルバイトの労働調整が緩和される可能性がある。
- ただし、年収850万円以下などの対象範囲と財源確保の問題は依然として課題。
- ガソリン税暫定税率廃止は「今後の協議課題」
- 廃止が実現すれば燃料価格の引き下げにつながる可能性がある一方、道路整備などの財源不足が生まれるため、各党間での調整が必要。
- 短期的に廃止が実施されるわけではなく、当面は「法案を提出し、協議していく」段階。
- 結論として、中学生にも分かりやすい影響まとめ
- 予算面では、教育関連(高校授業料無償化拡大など)が強化され、医療費負担の急激な増加に歯止めをかけた。
- 税制面では、パートやアルバイトで働く人がより多く稼ぎやすくなる方向へ進むが、財政面でのバランスをどう取るかが今後の課題。
- 政党間の合意は「部分的なもの」であり、全体としては今後も参院での審議・修正や追加的な法案審査、あるいは今後の政局次第で変動の可能性がある。
報道各社(NHK、読売新聞、時事ドットコム、Yahoo!ニュース、日本経済新聞など)の情報によれば、今後も参議院での審議・成立プロセスを経て、最終的に年度内~4月上旬までには成立する見込みです。今後の法案運用や追加修正には、引き続き注目が必要です。