エヴァと地域が融合する新たな聖地――「シン・ハママツ計画」の魅力

エヴァと地域が融合する新たな聖地――「シン・ハママツ計画」の魅力 地方行政

管理人が「エヴァ」好きもあって、気になるニュースがあるのでまとめました。
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シン・ハママツ計画の概要と背景

2025年の春、静岡県の浜松市で始動する「シン・ハママツ計画」は、市の観光産業を活性化するために、世界中で人気のあるアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズとの大型コラボレーションを行う取り組みです。この計画は、2025年4月20日から2026年2月いっぱいまでの期間限定で展開されます。ちょうど同じ年に、浜松市が現在の形になるきっかけとなった「12市町村の合併20周年」と、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送開始から30周年を迎えることが重なるため、これを記念して企画されたのです。

浜松市は静岡県の西部に位置し、人口や面積が県内でも最大規模。楽器産業や自動車関連産業など、ものづくりの街として知られています。また、「浜名湖」や「天竜川」、さらには「舘山寺(かんざんじ)温泉」や「浜松城」など、観光スポットも多彩です。しかし近年は物価高騰やコロナ禍の影響で、地域経済にも少なからぬダメージがありました。そこで浜松市は、国内外の観光客を呼び込み、地域経済を元気にする施策として、全国的にも有名なアニメ作品『エヴァンゲリオン』の力を借りようと考えたのです。

『エヴァンゲリオン』シリーズは、1995年のTVアニメ放送開始以降、多くのファンを獲得し、日本のみならず世界中に大きな影響を与えました。クールなロボット(作中では人型決戦兵器)デザインや、謎が多いストーリー、そして魅力的なキャラクターたちが若者を中心に幅広い支持を集め、社会現象と呼ばれるほどのブームを巻き起こしました。2021年にはシリーズ最終作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開され、興行収入100億円を突破。まさに日本を代表するコンテンツの一つといえます。

中でも浜松市は、エヴァの映画版(新劇場版シリーズ)において「天竜浜名湖鉄道 天竜二俣(てんりゅうふたまた)駅」周辺が“第3村”という作中の重要な舞台のモデル地の一つになったことで、全国のファンの注目を集めました。実際に作品の雰囲気を味わいたいという観光客やファンが現地を訪れ、駅構内や車両基地などを見学するイベントも開催され、大変好評を博してきたのです。

「シン・ハママツ計画」は、こうした流れをさらに発展させ、新たな観光名所やイベントを多数生み出すと同時に、地域の活性化やシティプロモーションを狙う壮大な試みといえます。主なターゲットはもちろんエヴァファンですが、同時に2025年に開催される大阪・関西万博へ訪れる海外からの旅行者にも、浜松に足を伸ばしてもらおうという考えが含まれています。静岡県としても、富士山エリアや伊豆エリアの観光だけでなく、西部地域の浜名湖周辺にも外国人観光客が流れるようにしたい意図があるのです。

具体的には、市役所に6メートルの初号機立像を設置したり、天竜浜名湖鉄道や遠州鉄道でスタンプラリーを行ったり、地元特産の天竜材を使ったモニュメントを展示したりといった、多角的な企画が用意されています。計画期間中には、さらに飲食店やお土産屋さんがエヴァとのコラボメニューを販売するなど、街を挙げての大規模な取り組みとなるでしょう。

具体的なコラボ企画と見どころ

「シン・ハママツ計画」には、エヴァンゲリオンに登場するキャラクターやメカを活かしたイベントや、街中を巻き込んだ仕掛けが多数用意されています。ここでは、その代表的な企画と見どころを詳しく解説します。

まず注目なのは「初号機立像」の設置です。浜松市役所の1階ロビーに、高さ約6メートルもの初号機の立像が登場するとあって、大きな話題を呼んでいます。期間は2025年4月20日から翌年1月25日までと長期に渡りますが、特に設置初日には記念セレモニーが行われ、地元の方々や観光客が一斉に訪れることが予想されます。巨大な初号機の姿を背景に写真撮影ができるスポットは、大きなインスタ映えやSNS映えにつながり、多くの発信が期待できるでしょう。

また、初号機の隣には地元特産の「天竜材」を使ったエヴァ30周年記念モニュメントも展示されます。天竜材とは、浜松市天竜区で育てられた高品質な木材のことです。適切な森林管理を示すFSC認証材としても有名で、エコやサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まる中、天竜材を使うことで環境を意識した取り組みもアピールできます。エヴァとコラボすることで、地域産業のPR効果も高まるのが大きなメリットです。

次に大注目なのが、市内および天竜浜名湖鉄道・遠州鉄道沿線をめぐる人類乗車計画2025スタンプラリーです。天竜浜名湖鉄道は、天竜二俣駅をはじめとして、ローカル線ならではの風情ある駅が並び、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の「第3村」のモデル地としても大きく取り上げられました。遠州鉄道(通称“赤電”)は浜松市の中心部から郊外までを結び、日常の通勤通学だけでなく、観光路線としても最近注目を集めています。こうしたローカル線を舞台に、各駅や沿線の観光スポットに設置されたスタンプを集めて回ることで、訪れたことのない地域に足を運ぶきっかけにもなるでしょう。

スタンプのデザインはエヴァのキャラクターたちが描かれており、集める楽しさだけでなく、自分が作品の世界観を旅しているような気分になれます。スタンプ10個をコンプリートすると、限定ステッカーがプレゼントされるなど、ファンのコレクター心をくすぐる仕掛けも魅力的です。さらに、鉄道だけでなく、バスや観光施設、飲食店との連動が期待されており、訪れた先々で特典や割引が受けられるかもしれません。

また、鉄道車両自体もエヴァ仕様に「ラッピング」される計画があります。天竜浜名湖鉄道では初号機や13号機、遠州鉄道では2号機や8号機のデザインが使われる予定です。いわゆる“痛車”のように派手なラッピングを施した列車は、ファンのみならず普段電車を利用する地元民にとっても楽しい変化となり、鉄道会社や沿線を盛り上げる大きな役割を果たします。このように、移動手段そのものがエンターテインメント化することで、普段は乗らない電車に乗ってみようとする人が増えるかもしれません。

加えて、期間後半には市内の飲食店や物販店が独自のコラボメニューやオリジナルグッズを販売する企画も予定されています。たとえばエヴァのキャラクターをイメージしたカクテルやスイーツ、“ロンギヌスの槍”をモチーフにしたスティック系スナックなど、アイディア次第でさまざまな商品が登場する可能性があります。ファンにとっては、「ここでしか手に入らない」限定感が何よりの魅力なので、旅の思い出を形に残すグッズや写真が得られるのは、大きな楽しみになるでしょう。

ここまで挙げただけでも、「シン・ハママツ計画」には魅力的なコンテンツが盛りだくさんです。その「答え」としては、浜松市がこれらの企画を通じてエヴァファンだけでなく、普段アニメに関心のない人々や、海外の旅行者をも巻き込むことで、地域のイメージアップと観光消費を大きく伸ばす狙いがあるという点が挙げられます。鉄道ファンや家族連れなど、多様な層が参加できる楽しみを提供する工夫が大事なのです。


地域活性化と未来への期待—迷惑行為への配慮や周辺への波及効果

大人気アニメと自治体が連携する大規模イベントは、地域経済に大きなプラス効果をもたらすことが期待されます。一方、観光客の増加に伴い、様々な課題にも注意を払う必要があります。ここでは、「シン・ハママツ計画」による地域活性化の可能性や、懸念される問題点と対策、さらには今後の波及効果などを掘り下げてみましょう。

観光消費の増加と関連産業への恩恵

イベント開催期間中、浜松市内には多くの観光客やエヴァンゲリオンファンが訪れる見込みです。宿泊施設や飲食店、土産物店などは売上増加が期待できます。さらに、鉄道やバスなどの交通機関の利用客増によって運賃収入がアップすれば、地域の公共交通の維持にもつながるでしょう。また、地元の伝統工芸や特産品をコラボグッズに活用することで、関連産業にも新たなビジネスチャンスが生まれます。天竜材を使ったモニュメントのように、林業や地場産業のPRが加速することも期待されます。

マナーと迷惑行為への配慮

一方で、観光客の増加に伴うトラブルや迷惑行為にも注意が必要です。たとえば、鉄道駅や車両基地での無断撮影や立ち入り禁止場所への侵入、公共交通機関の乗車マナー違反などが問題化する可能性があります。すでに天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅では、一部のファンによる過度な撮影や係員の注意を聞かない行為などが指摘されたことがあり、ルールを守るよう呼びかけが行われています。

「シン・ハママツ計画」においても、こうした迷惑行為を未然に防ぐために、各駅や観光施設での明確なガイドラインの提示や、スタッフの巡回、案内表示の充実といった対策がとられると考えられます。イベントを盛り上げる一方で、地元住民の暮らしを守り、安心して観光を楽しめる環境を作ることが、長期的な成功のカギになるでしょう。

地域全体への波及効果

浜松市だけでなく、周辺の観光地にも客足が波及する効果が期待できます。たとえば、浜名湖エリアや天竜川流域、隣接する磐田市や袋井市、さらには静岡市方面へと足を伸ばす観光客もいるでしょう。また、多くの海外からの観光客が訪れれば、浜松のみならず静岡県全体としてのインバウンド需要を拡大させるきっかけになります。こうした連鎖反応は、一時的な経済効果だけではなく、静岡県西部全体の知名度を高め、将来的な観光や企業誘致につながる可能性もあります。

大阪・関西万博との連動

2025年は大阪・関西万博(日本国際博覧会)が開催される年でもあります。大勢の外国人観光客が日本を訪れることが予想され、それに合わせて浜松を含む近隣の地域にも旅行者が移動してくるチャンスが大いにあります。海外からの観光客は日本のポップカルチャーに強い興味を持っている人が多く、エヴァンゲリオンとのコラボイベントという要素は非常に大きな呼び水になるでしょう。万博会場から新幹線や在来線を乗り継いで浜松へ足を運んでもらうことで、地域の国際的な認知度をさらに高めることができます。

アニメ×自治体の成功モデルを目指す

こうした取り組みから導き出せる「答え」は、アニメやゲームなどの有力IP(知的財産)と自治体が協力することで、地域の持つポテンシャルを最大限に引き出し、新たな経済効果やコミュニティづくりを実現し得るということです。「シン・ハママツ計画」はその成功モデルのひとつとなる可能性を秘めています。

当然、イベントが終了すれば熱気も落ち着きますが、その後も継続的に観光客やファンが訪れ続けるような取り組みや仕掛けをどう残すかが、最大の課題となるでしょう。たとえば“第3村”のモデル地としてのブランドを確立し、鉄道ファンやアニメファンの聖地巡礼コースに定着させる仕組みがあれば、イベント期間を超えて浜松市の観光を底上げすることができます。


まとめと今後の展望

ここまで、「シン・ハママツ計画」の概要から具体的な企画内容、そして期待される地域活性化や懸念される問題点などについて詳しく見てきました。最後に、全体のまとめと今後の展望を示し、本記事の締めくくりとしましょう。

計画の全体像と目指す姿

「シン・ハママツ計画」は、エヴァンゲリオンという強力なコンテンツを通じて、浜松市や天竜浜名湖鉄道などの魅力を再発見し、観光資源として活用する大規模プロジェクトです。市役所に設置される初号機立像や天竜材のモニュメント、スタンプラリーやラッピング電車など、ファンならずともワクワクする企画が目白押しです。そして、この盛り上がりを市内の飲食店や宿泊施設、土産物店にも波及させることで、地域経済を活性化させる狙いがあります。アニメの持つ発信力と、浜松市が本来持っている観光資源の融合は、まさに「地方創生」の好例になると期待されます。

アニメファン以外へのアピールと“まちづくり”

エヴァファンはもとより、ファン以外の人々にも魅力を感じてもらえるかどうかが、計画成功のカギを握ります。たとえば、巨大立像や木製モニュメントはアートとしての見どころもあり、SNS映えを狙った若い層だけでなく、家族連れやシニア層にも人気が出る可能性があります。エヴァンゲリオンをよく知らない人でも、鉄道旅や浜名湖観光とセットで訪れれば、一日を通じて十分に楽しめるはずです。こうした幅広い世代を取り込み、地域にお金を落としてもらう仕組みをつくることは、単なる「イベント」ではなく、長期的な“まちづくり”の視点でも大切なポイントです。

地方経済と若者誘致へのインパクト

浜松市は工業都市として有名ですが、若い人材の都市部への流出や、観光面での課題など、地方都市が抱える悩みを共有しています。エヴァンゲリオンのようなコンテンツを通じて若い世代を呼び込み、地元での就職や定住を考えるきっかけになるかもしれません。また、コラボによって注目が集まれば、新規事業やスタートアップなどが地域に進出する可能性もあります。SNSで話題になれば、幅広い層へ一気に情報が拡散され、もともと浜松に興味のなかった人たちにも知ってもらえるチャンスが増えるでしょう。

今後の課題と永続的な効果の獲得

一方で、イベント終了後の“アフターケア”が非常に重要です。コラボはどうしても期間限定になりがちで、その間だけ大きく盛り上がって終わり、というケースが少なくありません。せっかくエヴァファンや観光客が浜松市を訪れても、「また来たい」と思えるリピート要素を残せないと、一時的な経済効果で終わってしまう可能性があります。たとえば、天竜二俣駅を本格的に「第3村化」して、映画の舞台をイメージした常設展示や撮影スポットを作るなど、長く愛される仕掛けがあるとリピーターを増やしやすくなるでしょう。

また、誘客策と同時に、防災や交通アクセスの整備も必要となります。観光客が増えるということは、それだけ渋滞や駐車場不足、混雑などが起こりやすくなることを意味します。快適に旅行をしてもらうための交通インフラ整備や、災害時の避難体制の強化など、行政や地域企業が協力して取り組むべき課題も多いでしょう。

ファンと地域が共鳴する新たなステージへ

『エヴァンゲリオン』の世界観を楽しむファンは、地元の人たちとのふれあいや、風土・歴史を感じられる体験を通じて作品をより深く理解でき、地元の方々は、ファンとの交流を通じて自分たちの土地の魅力を再認識し、それを広く発信していく機会を得られます。

「シン・ハママツ計画」のように、単にアニメの要素を持ち込むだけでなく、地域の歴史・文化や産業(林業、農業、楽器・自動車産業など)とうまく組み合わせることで、お互いが高め合う関係になれるのです。これからの地域活性化のモデルとして、大きな成功を収めることを期待したいところです。

「シン・ハママツ計画」は2025年というタイミングだからこそ実現する大きなチャンスであり、浜松市の合併20周年×エヴァンゲリオン30周年という二つの節目にふさわしい、壮大な取り組みといえるでしょう。計画の成功が、日本全国の地方都市が抱える問題を解決するヒントとなり、アニメやポップカルチャーを通じた地域創生の新たな一例として、多くの注目を集めることは間違いありません。ぜひこの機会に、浜松市の魅力やエヴァンゲリオンの世界観を存分に楽しんでみてください。

参考資料
浜松市×エヴァンゲリオン「シン・ハママツ計画」の始動について(浜松市)
シン・ハママツ計画特別サイト
エヴァンゲリオン ラッピング電車オリジナルグッズ(遠州鉄道株式会社)

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
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