——「国の理想の姿を物語るのは、憲法です」
2026年2月9日。衆議院選挙での歴史的な圧勝を受け、記者会見に臨んだ高市早苗首相は、強い口調でこう断言しました。自民党が単独で316議席(総定数の3分の2以上)を確保するという戦後最大級の勝利を収めた今、憲法改正はもはや「いつか取り組むべき課題」ではなく、「実行されるスケジュール」へと姿を変えました。
とりわけ焦点となっているのは、戦後一貫して日本の平和主義の象徴とされてきた「憲法9条」の改正です。
これまでの歴代政権は、世論の反発や連立相手への配慮から、「自衛隊を憲法に書き加える(9条の2新設)」という慎重な姿勢を基本としてきました。しかし、初の女性首相であり、保守本流を自任する高市首相の目指す先は、より踏み込んだ「2項削除」や「国防軍の創設」という、戦後秩序の根本的な再定義にあると見られています。
緊迫する東アジア情勢を背景に、「自分の国を自分で守る」という言葉がリアリティを増す一方で、「平和憲法のブレーキが外れる」という根強い不安の声も消えてはいません。
高市政権がなぜ今、この困難な壁に挑もうとしているのか。その背景にある「国防軍」構想の正体と、国民の間で激しく火花を散らす賛否の論点を、最新のニュースを交えて徹底的に整理します。
高市首相が掲げる「国防軍」と「2項削除」の論理
高市首相の憲法改正論は、従来の自民党案(9条1項・2項を維持したまま自衛隊を書き加える「加憲」案)よりも一歩踏み込んだ、極めて根本的なものです。その主張の核心は、「憲法と現実の乖離を、ごまかしのない形で解消する」という一点に集約されます。
「戦力不保持」という矛盾に終止符を打つ
高市首相が9条2項(戦力不保持・交戦権否認)の削除、あるいは全面改正を強く主張するのは、現在の自衛隊が抱える「法的な矛盾」を重く見ているためです。
- 「戦力」の定義を巡る矛盾: 憲法2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めています。しかし、現実に日本は世界有数の防衛力を持つ自衛隊を保持しています。政府はこれを「自衛のための必要最小限度の実力であり、戦力ではない」と説明してきましたが、高市首相はこの解釈を「国際社会では通用しない無理のある説明だ」と批判します。
- 「戦力」と認め、誇りを取り戻す: 2項を削除し、自衛隊を名実ともに「軍隊」として憲法に位置づけることで、隊員を「違憲の疑いがある組織」という不当な批判から解放し、国防を担う組織としての誇りを取り戻すべきだという論理です。
「できないこと以外はできる」国防軍への脱皮
高市首相が提唱する「国防軍」は、単なる名称の変更ではありません。その本質は、自衛隊の行動原理を「軍隊並み」に正常化させることにあります。
- ポジティブリストからネガティブリストへ: 現在の自衛隊法は、法律で許可されたこと以外はできない「ポジティブリスト」方式です。これに対し、諸外国の軍隊は「国際法で禁止されていないことは、任務遂行のために実施できる」という「ネガティブリスト」方式で動いています。
- 有事における即応性: 高市首相は、一分一秒を争う有事の際に、現行法の細かな規定に縛られていては国民の命を守れないと主張します。「国防軍」として憲法に明記し、国際標準の行動ルールを適用することで、初めて実効性のある抑止力が完成するという考えです。
「交戦権の否認」を解き、国際水準の抑止力を
9条2項の後半部にある「国の交戦権は、これを認めない」という規定も、高市首相が問題視するポイントです。
- 国際法上の権利の確立: 国際法では、国が攻撃を受けた際に反撃する権利(自衛権)は当然の権利として認められています。高市首相は、憲法が「交戦権」を一律に否認していることが、現場の判断を鈍らせ、結果として日本の主権を危うくしていると論じます。「国防軍」の設置と共に、この制約を外すことで、他国と同等の「自衛のための武力行使」を法的に裏付けることを狙っています。
| 項目 | 従来の自民党案(安倍路線) | 高市首相の構想 |
| 9条2項 | 維持する(制約を残す) | 削除・改正する(制約を解く) |
| 自衛隊の呼称 | 「自衛隊」のまま | 「国防軍」などへ変更 |
| 行動原理 | 法律の範囲内(限定的) | 国際法基準(ネガティブリスト) |
反対派の視点:平和主義の変質と「歯止め」の喪失
高市首相の掲げる「2項削除」と「国防軍創設」に対し、立憲民主党や共産党、そして慎重派の市民団体などは、主に以下の3点を理由に強く反対しています。
【平和のブランドの崩壊】「専守防衛」が骨抜きになる懸念
9条2項は、これまで日本が他国を侵略しない、武力で解決しないという国際的な信頼の象徴でした。
- 批判の論理: 「戦力を保持しない」という一線があるからこそ、自衛隊は「専守防衛」という厳しい制約の下で活動できました。2項を削除し「国防軍」と明記すれば、時の政権の判断で海外での武力行使が無制限に拡大する「軍事大国化」への道を開くことになると警鐘を鳴らしています。
【戦地への懸念】フルスペックの集団的自衛権の行使
高市首相が目指す「ネガティブリスト(できないこと以外はできる)」への転換は、自衛隊の活動範囲を劇的に広げる可能性があります。
- 批判の論理: これまでは「日本が直接攻撃されていない限り、他国の戦争に参加しない」という制約が事実上機能していました。しかし、国防軍となり交戦権の否認が解除されれば、米軍などの同盟国と共に戦地へ赴く「フルスペックの集団的自衛権」の行使が常態化し、日本が戦争に巻き込まれるリスクが飛躍的に高まると懸念されています。
【市民生活への影響】「軍事優先」の国家観への警戒
高市首相が掲げる「強い日本」は、安全保障と経済をセットで考える「経済安全保障」を重視しています。
- 批判の論理: 防衛費のさらなる増額や、橋下徹氏らも指摘するように「国家が前面に出てくる(スパイ防止法など)」政治姿勢は、個人の権利よりも国家の利益を優先する社会を招くのではないかという不安です。「軍事優先」の予算配分が、福祉や教育など市民の生活を圧迫することへの反発も根強くあります。
2026年の最新論点:国民投票を巡る「最後の砦」
高市政権が衆院で3分の2を確保したことで、議論の舞台は「国会」から「国民投票」へと移ろうとしています。
- 「3分の2」という数の力への反発: 「選挙の結果であって、憲法改正への白紙委任ではない」とする野党の抵抗。
- 若年層の懸念: 「国防軍」となれば、将来的に徴兵制のような形ではないにせよ、経済的徴兵(奨学金返済などのための入隊)や、若者が戦場に送られる未来を危惧する声。
- 周辺諸国の緊張: 高市首相の強い姿勢に対し、中国・韓国など近隣諸国との外交関係が悪化し、かえって日本の安全が脅かされるのではないかという逆説的な懸念。
【国民投票】主権者が下す「国の形」への審判
国会で改憲案が可決(発議)された後、私たち国民の手で行われるのが国民投票です。これは選挙とは異なり、「一つの具体的なテーマ(憲法改正案)」に対して、YesかNoかを直接突きつける究極の直接民主主義の場です。
国民投票までのスケジュールと流れ
憲法改正の手続き(憲法96条)は、以下の3ステップで進みます。
- 国会での「発議」: 衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成で可決される。
- 国民への「周知」: 発議から「60日以後180日以内」に国民投票を行う。この間、テレビCMや広報などを通じて国民に内容が詳しく説明されます。
- 国民投票: 満18歳以上の日本国民が投票。「有効投票総数の過半数」の賛成があれば、憲法改正が成立します。
高市政権下で「国民投票」が注目される3つの理由
2026年現在、高市政権が衆院で3分の2を確保したことで、議論は一気に具体的になりました。特に以下の点が、これまでの政権以上に大きな争点となっています。
- 「CM規制」と公平性: 2026年現在、国民投票におけるテレビCMの量や内容に関する規制が議論されています。豊富な資金力を持つ改憲派が圧倒的な量のCMを流すことで、世論が誘導されるのではないか、という懸念に対し、ネット広告の規制を含めた公平なルール作りが急務となっています。
- 「セット投票」か「個別投票」か: 憲法改正案が複数ある場合(例:9条改正、緊急事態条項、教育無償化など)、それらを「一括」で投票するのか、項目ごとに「別々」に投票するのかが重要です。高市首相は複数の項目を同時に進めたい意向ですが、「9条には賛成だが緊急事態条項には反対」という国民の意思をどう反映させるかが問われています。
- 高市首相の「覚悟」とリスク: もし国民投票で否決された場合、それは内閣総辞職に直結するだけでなく、今後数十年間にわたって憲法改正の議論が封印されることになります。高市首相がいつ「発議」のボタンを押すのか、その政治判断が最大の注目点です。
【数字で見る】国民投票のハードル
国民投票には「最低投票率」の規定がありません。つまり、投票率が低くても、その中の過半数が賛成すれば憲法は変わります。
ポイント: 2026年2月の衆院選で自民党は大勝しましたが、それは「経済対策」や「高市氏のリーダーシップ」への期待も含まれていました。憲法改正というたった一つのテーマに絞られた時、日本国民はどのような判断を下すのか。2026年は、戦後日本が経験したことのない「国民による審判」の年になるかもしれません。
2026年2月の衆院選で高市政権が「3分の2」の議席を確保し、改憲発議がいよいよ現実味を帯びている状況を踏まえた、記事の締めくくり(まとめ)を作成しました。
【結論】2026年、私たちが選ぶ「新しい日本の姿」
憲法改正の議論は、もはや国会の中だけの話ではありません。高市政権が衆議院で3分の2を超える議席を確保した今、ボールは私たち有権者の手元へと投げられようとしています。
今回の記事で見てきた通り、争点は非常に明確かつ深刻です。
- 賛成の論理: 曖昧な「自衛隊」から、憲法に基づき国民を守る「国防軍」へ。矛盾を解消し、国際水準の抑止力を備えることで平和を維持する。
- 反対の論理: 2項という「平和のブレーキ」を外すことへの危機感。「戦後日本」のブランドを捨て、他国の戦争に巻き込まれるリスクを冒すべきではない。
最後にペンを握るのは「あなた」
どんなに強力な政権であっても、憲法を変える最後の一線だけは、国会議員の数で決めることはできません。「国民投票」という直接民主主義の手続きにおいて、一人ひとりの一票が過半数に達して初めて、日本の最高法規は書き換えられます。
2026年、日本は戦後最大の岐路に立っています。テレビCMやSNSで飛び交う賛否の声に流されるのではなく、改正案がもたらす「具体的な変化」を見極めること。そして、どのような国を次世代に引き継ぎたいのかを自分自身の言葉で語ること。
私たちが投じる一票が、これからの100年の日本の輪郭を形作ることになります。

