2026年4月スタートの共同親権、住民票や手当はどう変わる?改正民法のポイントをわかりやすく解説

2026年4月スタートの共同親権、住民票や手当はどう変わる?改正民法のポイントをわかりやすく解説 地方行政

2024年5月に成立した改正民法により、2026年(令和8年)4月1日から、離婚後のこどもの養育に関するルールが大きく変わります 。今回の改正は、父母が離婚した後も、こどもの利益を最大限に確保することを目的としています 。

これまで日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」のみが認められてきました 。しかし、改正後は、父母が合意すれば離婚後も双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになります 。これは昭和22年の民法改正以来、実に77年ぶりとなる歴史的な転換点です。

この制度導入の背景には、離婚後も父母双方が適切な形でこどもの養育に関わり、その責任を果たすことがこどもの健全な成長に不可欠であるという考え方があります

親権の有無に関わらず問われる「親の責務」

共同親権の導入と同時に、今回の改正では「親の責務」についても改めて明確化されました 。これは、共同親権・単独親権といった形式や、婚姻関係の有無にかかわらず、全ての父母が負うべき基本的な義務です 。

  • こどもの人格の尊重: こどもの意見に耳を傾け、その意見を適切な形で尊重しながら、心身の健全な発達を図らなければなりません 。
  • こどもの扶養: 親と同程度の生活水準を維持させる義務(生活保持義務)を負います 。
  • 父母間の人格尊重・協力義務: こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません 。

特に「父母間の協力義務」については、相手への暴言や誹謗中傷、不当な監護への干渉、無断での転居などが義務違反に該当する可能性があることが示されています 。ただし、DVや虐待から避難するために必要な行為については、この義務に違反しないものとされています 。

自治体の窓口や相談現場では、こうした「親の責務」が前提となった上で、具体的な親権の行使(住民票の移動や手当の申請など)が議論されることになります。

「単独親権」と「共同親権」はどう選ぶ?

改正法では、離婚後の親権者の定め方について選択肢が広がります。これまでは「単独親権」一択でしたが、2026年4月からは、父母の状況やこどもの利益に応じて「共同親権」も選べるようになります 。

父母の合意で決める「協議離婚」の場合

協議離婚をする際は、父母の話し合いによって、親権者を「父母双方(共同親権)」とするか「その一方(単独親権)」とするかを定めます 。

  • ポイント: どちらの形式がこどもにとってより良い環境かを、父母が対等な立場で話し合うことが求められます。

裁判所が判断する「調停・裁判離婚」の場合

父母の間で協議が調わない場合や、裁判離婚となる場合は、家庭裁判所が親権者を定めます 。裁判所は、父母とこどもの関係、父母間の関係など様々な事情を考慮し、「こどもの利益」の観点から判断を下します 。この際、父母それぞれからの意見聴取に加え、こどもの意思を把握することにも努めます 。

必ず「単独親権」となるケース(DV・虐待への配慮)

共同親権は父母の協力を前提とするため、以下のケースでは、裁判所は必ず「単独親権」を命じることとされています

  • 虐待のおそれがあるとき: こどもへの身体的・心理的な虐待が認められる場合 。
  • DVのおそれがあるとき: 父母の一方から他方への暴力、脅迫、暴言などがあり、共同での親権行使が困難と認められる場合 。
  • 共同ではこどもの利益を害するとき: 上記以外でも、父母の激しい対立などにより、共同親権とすることがこどもにとって不利益になると判断される場合 。

離婚後の親権変更も可能

一度決まった親権も、こどもの利益のために必要があると認められれば、家庭裁判所への申立てによって変更することができます

  • 変更の例: 「単独から共同へ」「共同から単独へ」「一方の親から他方の親へ」といった変更が可能です 。
  • 注意点: 施行前に離婚して単独親権となっている場合、法改正によって自動的に共同親権に変わることはありませんが、施行後に家庭裁判所へ申し立てて変更を求めることは可能です 。ただし、養育費の不払いが長期間続いているなどの事情がある場合は、共同親権への変更が認められにくい可能性があります 。

「勝手に決めていいの?」共同親権での日常ルールと緊急時の対応

共同親権が導入されると、「何をするにも相手の同意が必要になり、生活が滞るのではないか?」という不安の声が多く聞かれます。しかし、改正法では、円滑な養育を妨げないよう、「単独で行使できる範囲」が明確に定められています 。

「単独」で判断して良いケース

父母双方が親権者であっても、以下の場合には一方が単独で親権を行使(決定)できます

監護教育に関する日常の行為: こどもの利益に重大な影響を与えない、日々のルーティンに関わる決定です 。

  • 食事・服装: 毎日の献立や服の購入など 。
  • 習い事・塾: 日常的な通塾や習い事の選択 。
  • 軽微な医療: 風邪の診察や通常のワクチン接種など、心身に重大な影響を与えないもの 。
  • レジャー: 短期間の観光目的の旅行など 。

急迫の事情(緊急時): こどもの利益を守るために、話し合っている余裕がない場合です 。

  • 緊急医療: 事故や急病による緊急手術など 。
  • 安全確保: DVや虐待からの避難(こどもの転居を伴うものを含む)
  • 期限の切迫: 入試結果の発表直後で、入学手続の期限が迫っている場合など 。

父母の「共同」での合意が必要なケース

こどもの利益に重大な影響を与える事項については、原則として父母が共同で決定しなければなりません 。

  • 住居: こどもの引っ越し(転居)
  • 進路: 高校進学か就職かなど、進路に直結する決定
  • 重大な医療: 手術や長期入院など、心身に重大な影響を与える医療行為
  • 財産管理: こどもの預金口座の開設や管理など 。

意見が合わず「決まらない」ときは?

共同で行うべき事項について意見が対立し、こどもの生活に支障が出る場合は、家庭裁判所へ申し立てることができます 。裁判所はどちらか一方を「その事項の決定権者」に指定し、指定された親が単独で判断できるように調整します 。

窓口担当者へのアドバイス: 離婚時に「監護者」を定めておけば、その監護者は「日常の行為」だけでなく、こどもの居所(転居)や教育に関する事項を単独で決定できるようになります 。窓口での手続きをスムーズにするための、現実的な選択肢の一つとして案内が可能です。

「監護者」を定めた場合の特例

離婚時に一方を「監護者」と定めた場合、その監護者は「日常の行為」に限らず、こどもの居所の決定や教育に関する事項を単独ですることができます 。これにより、共同親権でありながら、実質的な日々の決定権を一方が持つという柔軟な運用も可能です

気になるお金の話:養育費の「不払い」を防ぐ強力な新ルール

共同親権の議論と並んで注目されているのが、養育費に関する実効性の向上です。これまでは「相手と連絡が取れない」「取り決めが面倒」といった理由で諦められがちだった養育費について、2026年4月からは主に3つの大きな変化があります。

「法定養育費」の新設(離婚時に決めていなくても請求可能)

これまでは、離婚時に養育費の額を合意するか、裁判所で決める必要がありました。改正後は、もし取り決めをせずに離婚しても、こどもを育てている親は相手に対して、法が定める一定額を請求できるようになります 。

  • 暫定的な請求額: 子一人あたり月額2万円です 。
  • 発生時期: 離婚の日から発生し、毎月末に支払う義務が生じます 。
  • 対象: 2026年4月1日の施行後に離婚したケースが対象です 。

注意点: これはあくまで取り決めをするまでの「暫定的な措置」です。こどもの健やかな成長のためには、家庭の状況に応じた適正な額を話し合って決めることが重要です 。

差し押さえがスムーズに!「先取特権(さきどりどっけん)」

これまでは、相手が養育費を支払わない場合、財産を差し押さえるには公正証書や審判書などの「債務名義」が必要でした 。

  • 改正後のルール: 父母間で作成した「私的な文書(合意書など)」があれば、裁判所の確定判決などがなくても、相手の給与や財産を差し押さえる手続きが可能になります 。
  • 上限額: 先取特権が認められるのは、子一人あたり月額8万円までです 。

裁判手続きの利便性が大幅アップ

相手の収入がわからない、財産を隠しているといった問題を解消するため、家庭裁判所の権限が強化されます。

  • 収入情報の開示: 家庭裁判所が、当事者に対して収入情報の開示を命じることができるようになります 。
  • 給与情報の取得: 裁判所を通じて、市区町村から相手の給与情報の提供を受け、そのまま一連の手続きで差し押さえまで行えるようになります 。

財産分与の請求期間が「5年」に延長

お金に関するもう一つの重要な変更は、夫婦が築いた財産を分け合う「財産分与」です。

  • 期間の延長: これまでは離婚後「2年」以内に請求する必要がありましたが、改正後は「5年」に延びます 。
  • 考慮要素の明確化: 家事や育児の分担なども「寄与」として評価されることが明文化され、原則として夫婦対等(2分の1ずつ)という考え方が示されました 。

自治体窓口はどう変わる?住民票・手当・戸籍の実務

共同親権の導入により、自治体の窓口(市民課・子育て支援課など)での対応も変化が予想されます。特に「どちらの親が手続きを行うべきか」という点は、混乱を避けるために整理しておく必要があります。

住民票と世帯主の考え方

共同親権になったからといって、こどもの住民票が2か所に作られることはありません。

  • 原則: 住民票は「実際に居住している場所」に置かれます 。
  • 世帯主: 共同親権であっても、こどもと同居し、生計を維持している親が世帯主となる運用が続く見込みです。
  • 転居届: 共同親権下でこどもを転居させる場合、原則として父母双方の合意が必要ですが、DV避難などの「急迫の事情」がある場合は、これまで通り一方の親による届け出が受理される仕組みが維持されます 。

児童手当・児童扶養手当の受給権

「親権」と「手当の受給権」は必ずしも一致しません。

  • 児童手当: 基本的には「こどもと同居し、生計を維持している親」に支給されます。共同親権になっても、この「同居優先」の原則は変わらない可能性が高いと考えられています。
  • 児童扶養手当(ひとり親手当): 共同親権であっても、父母が離婚しており、一方が主として監護している実態があれば、受給要件を満たす方向で検討されています。ただし、「生計を同じくしている」とみなされる距離感で居住している場合などは、個別の判断が必要になるでしょう。

戸籍謄本(全部事項証明書)の記載

離婚後の戸籍の編製ルールにも変更があります。

  • 親権者欄: 共同親権を選択した場合、こどもの戸籍の親権者欄には、父と母の両名の氏名が記載されます 。
  • 証明書の確認: 自治体窓口で親権を確認する際は、最新の戸籍謄本を確認することがこれまで以上に重要になります 。

窓口での「合意」の確認方法

学校の転校手続きや、マイナンバーカードの発行、パスポートの申請など、行政サービスにおいて「親権者の同意」が求められる場面があります。

  • 単独で可能な手続き: 「日常の行為」に該当する範囲であれば、窓口に来た親一人の署名で受け付けられます 。
  • 共同での合意が必要な手続き: 重大な影響を及ぼす決定については、もう一方の親の同意書や、あらかじめ定められた「監護者」であることの証明が求められる運用が想定されます 。

親子交流・親族との安全・安心な「つながり」の新ルール

今回の改正では、離れて暮らす親(別居親)とこどもの交流だけでなく、婚姻中(別居中)のルールや親族との関わりについても、こどもの利益を最優先とする仕組みが整えられました 。

親子交流の「試行」制度

「いきなり会わせるのは不安」という声に応え、家庭裁判所の審判や調停の手続き中に、親子交流を試行的に実施できる制度が設けられます 。

  • 試行的実施: 家庭裁判所がこどもの心身の状況を考慮し、相当と認める場合に実施を促します 。
  • 状況の共有: 実施状況は家庭裁判所調査官などが調査し、その後の調停や審判の判断材料とされます 。

婚姻中(別居中)の親子交流

これまでは離婚後のルールが中心でしたが、離婚前の別居中についても交流のルールが明確化されました

  • 父母の協議で定めることを原則とし、合意できない場合は家庭裁判所が「こどもの利益」を最優先に決定します 。

祖父母や兄弟姉妹との交流

父母が離婚しても、こどもにとっては祖父母や兄弟姉妹も大切な存在です。

  • 交流の申立て: こどもの利益のため特に必要があるときは、祖父母、兄弟姉妹、または過去に監護していた親族が、家庭裁判所に交流を申し立てることが可能になります 。

2026年4月に向けた準備と心構え

2026年4月1日から施行される「離婚後の共同親権」は、単なる形式の選択ではなく、離婚後も父母が「こどもの成長」に対して責任を持ち続けるための大きな変革です 。

本記事の重要ポイント

  • 選択の自由: 協議により共同親権か単独親権かを選べるようになります 。
  • 安全の確保: DVや虐待の恐れがある場合は、必ず単独親権となります 。
  • 日常の柔軟性: 「日常の行為」や「急迫の事情」であれば、一人の親の判断で進められます 。
  • 経済的支援: 「法定養育費」や「先取特権」により、養育費の受け取りがより確実になります 。

自治体の窓口担当者や士業などの専門家は、制度の「形」だけでなく、その背景にある「こどもの人格の尊重」という理念を住民に伝えていくことが求められます

施行までまだ時間はありますが、現在離婚を検討されている方や、既に離婚して単独親権となっている方も、この新しいルールがご自身とこどもの未来にどう影響するか、今から少しずつ情報を整理しておくことをお勧めします。

参考資料

父母の離婚後の 子の養育に関するルール が 改正されました(法務省)

合わせて読みたい

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
最近話題のニュースをアウトプットする場としてサイトを更新中。
なるべく正しい情報を届けるように心がけますが、誤った情報があればご一報ください。
本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

管理人をフォローする
地方行政
シェアする
管理人をフォローする
タイトルとURLをコピーしました