結局どう変わる?育成就労制度と技能実習制度の比較&押さえておきたい注意点

結局どう変わる?育成就労制度と技能実習制度の比較&押さえておきたい注意点 政府

「育成就労制度」と「技能実習制度」の基本概要と誕生の背景

はじめに、「育成就労制度」と「技能実習制度」がどのような目的で作られ、なぜ見直しが行われるに至ったのかを整理していきます。


育成就労制度とは

育成就労制度は、現在の「技能実習制度」を抜本的に見直して創設される新しい制度です。日本の人手不足が深刻化している「介護」「建設」「農業」などの分野(=育成就労産業分野)で外国人を受け入れ、最長3年の就労を通じて「特定技能1号」という在留資格に求められる技能を身につけてもらうことを目指します。
これまでの技能実習制度は「国際貢献」を大きな目的とし、「日本の技術を学んでもらい、母国に持ち帰って活かしてもらう」という建前がありました。しかし実際には日本国内の人手不足を補う役割が大きく、目的と実態に乖離(かいり)が生じていたのです。そのため、新たに「育成就労制度」として、初めから外国人を労働力(人材)として受け入れ育成する趣旨に改めることになりました。


技能実習制度とは

一方の技能実習制度は、1993年(平成5年)に創設され、日本の技術・技能を開発途上国へ移転することで国際貢献を目指す制度でした。受け入れ企業が「実習計画」を作成し、それを国(出入国在留管理庁や外国人技能実習機構)が審査するしくみになっています。
しかし、技能実習生を実質的な労働力として扱うケースが増え、しかも転籍(=別の企業へ移ること)が原則として認められないことから、不当な労働環境に耐えかねて実習生が失踪するケースなどが社会問題化しました。さらに、海外の送り出し機関へ高額な手数料を払うために借金を抱える実習生(特にベトナムなど)も多く、彼らの人権問題が指摘される場面が増えたのです。
こうした問題を解消しつつ、日本での人材確保をより円滑に行うために、技能実習制度は2027年頃(公布から3年以内)を目途に「育成就労制度」へ移行される見込みとなっています。


制度見直しの背景

  • 国内の人手不足問題
    日本では少子高齢化が進み、特に介護・農業・建設・製造業などで慢性的な人手不足が深刻化しました。企業は外国人材に大きく期待していますが、技能実習制度では「国際貢献」が目的とされており、「労働力確保の制度」と明言していなかったのです。そのため、実態と建前の隔たりが社会的に批判を受けていました。
  • 送出し時の負担問題
    多くの実習生が母国の仲介業者に対して高額な手数料を支払い、来日までに借金を抱える状況が後を絶ちません。これによって経済的に弱い立場になり、不当な環境でも逃げられない実習生が増えたとされます。
  • 人権侵害への対応
    技能実習生が転籍できない仕組みゆえに、不当な長時間労働や賃金未払といった事例が続出し、改善が急務となっていました。

こういった経緯を踏まえ、2024年6月21日公布の改正法により、現在の技能実習制度は2027年6月まで(公布から3年以内)に「育成就労制度」へ移行することになりました。
なお、新制度が完全に施行されても、経過措置として技能実習生が直ちに全員「育成就労外国人」に切り替わるわけではなく、数年間は両制度が混在する期間が続きます(「技能実習に関する経過措置」も設けられます)。


ここまで見てきたように、「育成就労制度」は技能実習制度の問題点を解消し、日本の産業を支える労働力を育成・確保するために作られる制度といえます。
次のセクションでは、もう少し具体的に両制度の受け入れ対象分野や在留期間の違い、そして実際の運用でどう変わるのかを深掘りしていきましょう。


対象分野・期間・仕組みの詳細

ここでは「育成就労制度」と「技能実習制度」をもう少し細かく見比べます。対象となる業種・職種や在留期間の仕組み、転籍可否などを中心に解説しましょう。


受け入れ対象分野の違い

  • 技能実習制度
    • 現在は「90職種・165作業」が対象で、たとえば農業関係(耕種農業・畜産農業など)、漁業関係、建設関係、食品製造関係など細かく分類されています。
    • しかし、実際には特定技能制度への移行先がない職種(技能実習で学んだ技能を、特定技能1号に移行できないもの)が約30%あるのも課題でした。
  • 育成就労制度
    • 「特定技能制度」の受け入れ対象分野(現在は16分野に拡大見込み)と原則同じにする予定です。つまり、特定技能と同じ業務区分で育成することで、3年後に特定技能1号へ移行しやすくする意図があります。
    • ただし、「国内での育成になじまない」とされる分野(例:免許資格が必須で短期就労では習得困難な業務など)は対象外となる可能性があります。

このように、技能実習よりも受け入れ対象分野が特定技能と合致しやすい点が新制度の特徴です。


在留期間と転籍の違い

  • 技能実習制度
    • 原則、最長5年まで(1号1年+2号2年+3号2年)
    • 途中で「原則転籍不可」。ただし「やむを得ない事情(企業の倒産や人権侵害が疑われる場合など)」が限定的に認められていた。
  • 育成就労制度
    • 原則3年まで(ただし、特定技能1号への試験に不合格だった場合は最長1年まで延長可)
    • 1年以上働き、日本語と技能試験に合格していれば別の企業への転籍も可能となる。
      • 具体的には、「同一業務区分」「転籍元で1年以上就労」「基礎的技能試験・日本語試験合格」などの条件あり。
      • さらに、転籍先企業が支払った初期費用の一部を元の企業が正当な形で補償してもらう仕組みも検討されており、企業間のトラブルを防ぐ狙いがあります。

ここで大きなポイントは、転籍が認められる幅が広がることです。中には1年を超える就労期間を定める分野もありますが、1年間勤務すれば本人の意向で別の企業へ移る選択肢が生まれるのは、技能実習制度と比較すると大きな転換となります。


技能評価と日本語試験

育成就労制度では「特定技能1号水準」への到達がゴールとなります。

  • 1年目:技能検定試験(基礎級)とA1相当の日本語試験(例:日本語能力試験N5など)の合格を目指す
  • 3年目(育成修了時):技能検定3級等+日本語能力試験N4(A2相当)レベルが目標
  • その後、特定技能1号へ移行したのち、さらに試験合格により特定技能2号(熟練技能)へステップアップ可能

これにより、3年間の間で計画的に技能と日本語を学び、長期的なキャリアアップが期待できます。
なお、育成就労開始時点でN5レベル程度の日本語能力を求めるため、「技能実習制度では入国後に日本語を覚える」状況よりハードルが少し高くなるともいえます。


監理支援機関と認定制度

新制度でも、監理団体のような立場として「監理支援機関」を設け、許可制とします。技能実習で問題のあった監理団体はこの新制度でも同様の役割を担いながら、より厳格な基準(外部監査人の設置など)で監督されることになります。
また、企業(育成就労実施者)は、「育成就労計画」(3年以内)を作成し、外国人育成就労機構がこれを認定します。
ここで定めた育成内容や業務区分に沿って就労を進めるため、人材育成が計画的に行われるのです。


以上のように、受け入れ分野や在留期間、転籍の可否、日本語・技能試験などで「技能実習制度」と「育成就労制度」は大きく異なります。ポイントは「技能実習は国際貢献が目的だが、育成就労は日本国内の人材確保に重きを置く」という点です。
次のセクションでは、これらの変更がもたらすメリットやデメリットを考察し、さらに外国人本人や企業にとってどう影響するのか詳しく見ていきましょう。


制度変更による影響とメリット・デメリット

ここでは、育成就労制度が本格施行されることで、外国人本人・企業・送出国・日本社会それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるかを整理します。


外国人本人への影響

  1. 転籍の自由度が増す
    • 育成就労制度では、1年以上働いたうえで一定の技能・日本語水準に達していれば、本人の希望による転籍が認められます。これによって賃金未払い・長時間残業といった問題が起きても逃げ道が確保されやすいでしょう。
    • 一方、転籍しようとする際に「新しい企業が見つかるか」「初期費用の補償はどうなるか」などの不安要素もあり、制度だけで万事解決するわけではないともいえます。
  2. 日本語学習の負担が増える
    • 就労開始前に日本語能力試験N5程度の合格を要求されるため、来日前に日本語学習をしっかり進める必要があります。
    • ただし、それだけ日本語力が身につけば仕事中や生活上の不安が減り、特定技能にスムーズに移行できるメリットも期待できます。
  3. 費用負担(ブローカーへの手数料など)の軽減期待
    • 二国間取決め(MOC)を結んだ国からのみ受け入れる方針や、手数料を抑える仕組みなどが導入される予定です。
    • ただし、実際にどの程度改善されるかは、各国政府・送り出し機関の厳格な取り締まりや日本企業側の意識改革が鍵となります。

企業(受け入れ先)への影響

  1. 長期雇用の可能性
    • 育成就労を3年行ったあとは特定技能1号へ移行できるため、企業にとっては最大8年(3+5年)の雇用が期待できます。転籍されるリスクもある一方、きちんと育成計画を実施して処遇を改善すれば、戦力となる外国人材を長期で確保しやすいでしょう。
  2. 転籍リスク
    • 育成就労では転籍が認められるため、低い給与や不十分なサポートしか提供していない企業は外国人が離れてしまう可能性が高まります。
    • 逆にいえば、適正な賃金やキャリア支援などをしっかり行う企業ほど、優秀な外国人を確保しやすくなると言えます。これは日本人社員との雇用条件格差を是正する動きにもつながるでしょう。
  3. 管理コストと手続き
    • 育成就労計画の作成や試験費用の負担、日本語支援体制の整備など、企業側の負担も一定程度増える可能性があります。
    • 監理支援機関の許可制も厳格化され、外部監査人の設置を義務付けられるなど監理体制が強化される見込みです。不適正な受け入れを行う企業は排除されやすくなるでしょう。

送出国・母国への影響

  1. MOC(協力覚書)に基づく送出機関の選定
    • 新制度では、原則として政府間で結んだMOCを作成した国のみ受け入れ可となる方針です。これにより、悪質な送り出し業者(高額手数料など)を排除できる期待があります。
  2. 人材流出の懸念
    • 育成就労により、日本で3年→特定技能1号で最長5年→さらに特定技能2号という長期在留が可能になれば、優秀な人材が日本に流れやすくなる懸念も。
    • ただし、現行の技能実習でもすでに5年在留でき、特定技能へ移行も可能だったため、新制度による大きな変化は「育成の質向上」にあると見るべきでしょう。

日本社会全体への影響

  1. 労働力不足の緩和と地域への波及
    • 国内の地方や中小企業にとっては、新制度で外国人材を安定的に受け入れる道が広がると期待されます。また日本語力の習得を制度的に促すことで、地域コミュニティに馴染みやすくなる効果もあるでしょう。
  2. 大都市集中の回避
    • 有識者会議の提言では、育成就労外国人や特定技能外国人が都会に集中しないよう配慮する方針も示されています。しかし強制力があるわけではなく、最終的には企業の所在地や賃金水準が人材の集まりやすさを左右する可能性が高いです。
  3. 日本語教育や共生施策の促進
    • 新制度が日本語能力の向上を義務付けることで、教育関連産業や自治体の日本語学習支援がさらに整備される期待があります。外国人との共生社会を実現するために、各自治体が積極的に支援に乗り出すかどうかも大事なポイントです。

このように制度改正が進むと、外国人本人は転籍可能になり人権保護が高まる一方、企業も長期雇用や転籍リスクなど、新たな運用上のメリット・デメリットが生まれます。また、日本が「外国人から選ばれる国」となるためには、受け入れ環境の充実とともにブローカー排除の仕組みや日本語教育体制の拡充が欠かせないでしょう。
次のセクションでは、こうした変化に対応するためのポイントや、私たちが注目すべき課題をさらに掘り下げます。


外国人労働者が増加することで想定されるリスク・弊害

ここでは「外国人労働者が増えることにともなう日本国内でのリスクや弊害」について解説します。
制度改正によって人権保護や受け入れ環境整備は進むと期待されますが、同時に以下のようなリスクや弊害も考えられるため、慎重かつ総合的な対応が求められます。


地域コミュニティとの摩擦

外国人労働者が大幅に増えると、地域コミュニティとのコミュニケーションギャップが生じる可能性があります。
特に言語・文化が異なる人々が集中して暮らす地区では、ゴミ出しルールの違いや騒音・生活習慣の衝突などが起きやすいでしょう。自治体やNPOが積極的に情報発信・支援を行っているところもあるものの、それでも住民間の誤解や偏見が深刻化すれば、外国人に対する差別や地域トラブルに発展するおそれがあります。

具体例

  • ゴミ出しルールや自治会活動への不参加:日本語の案内が理解されず、周辺住民とのトラブルが起きる
  • 学校教育現場で、日本語指導が追いつかないまま外国籍児童が増加し、教師の負担が増える
  • 文化的な習慣の違い(食文化、宗教行事、休日の過ごし方など)をめぐる摩擦

これらは外国人の受け入れ数が増えるほどリスクとして顕在化しやすくなります。ただし、自治体やボランティア団体、国の施策で地域との共生を進める取り組みが進んでおり、今後の対応次第ともいえます。


賃金水準や労働条件への影響

外国人労働者が増えることで、国内の賃金水準にどのような影響を与えるかは、議論の的となっています。

  • 特定産業分野の人手不足がさらに緩和される一方で、経営者が外国人を安い賃金で雇い、日本人の労働者にも賃金抑制が働く可能性を懸念する声があります。
  • 育成就労制度では「日本人と同等額以上の報酬」が義務づけられますが、実際の労働現場でそれがきちんと守られるかどうか、監督体制が十分でない場合は賃金のダンピング(相場より安く雇用すること)につながるリスクがあります。
  • 一方で、日本語や専門技能をしっかり身につけた外国人は高い賃金を得られるようになるため、日本人労働者との賃金競争で、日本国内の賃金全体が底上げされる可能性もあります。

つまり、監督・指導が行き届かないと賃金低下圧力として機能するおそれ、きちんと機能すれば逆に日本全体の賃金や待遇改善を促す要素にもなり得る、という両面があります。


治安やトラブルのリスク

「治安が悪化するのではないか?」という懸念も、外国人労働者の増加に伴う代表的なリスクの一つとして指摘されます。実際は、外国人比率が高い自治体でも犯罪率が特別に高いわけではないとのデータもありますが、以下のような要因が考えられます。

  • 経済的困窮による不法就労化や失踪
    育成就労制度でも、本人意向の転籍ができるといってもすべてが円滑にいくとは限らず、何らかの不正行為や違法ブローカーによる転籍あっせんがはびこると、不法就労状態に陥る外国人が増えるおそれがあります。
  • コミュニケーション障壁によるトラブル
    コンビニや外食産業、工場などで日本語が不十分なまま接客や作業に従事した場合、誤解・ミスが積み重なってトラブルや小競り合いにつながることもあります。

もっとも、これは外国人だけでなく日本人も含めた労働環境改善の問題と表裏一体です。適切な受入れ体制や相談窓口の整備がリスク軽減につながるでしょう。


産業構造・人口動態への影響

外国人労働者が急増すると、日本人が集まらない仕事(「3K」と呼ばれるきつい・汚い・危険な作業など)に彼らが集中し、産業構造上の「外国人依存」が進む可能性があります。長期的にみれば、

  • 「日本人の担い手が減りすぎる」(特に介護や農業など)
  • 地方都市の人口が外国人中心に変化し、地域コミュニティが大幅に変容する
    といった事態も想定されます。これは必ずしも「悪いこと」ではなく、多様性を受け入れる社会になるともいえますが、急激な変化は地域社会に負担がかかるのも事実です。
    さらに、外国人材が日本へ定着すると、母国側の経済発展に寄与できなくなるという「ブレーン・ドレイン(頭脳流出)」問題も国際的には指摘されています。これらをどうバランスとるかが課題となるでしょう。

行政や教育現場への負荷

外国人労働者が増えると、行政サービスの多言語対応や福祉・医療・教育などさまざまな分野でコストが増大します。

  • 学校教育:外国籍児童が増加すると、日本語指導員の確保や通訳が必要となり、クラス運営に時間と予算がかかる。
  • 保険・年金制度:短期在留の外国人に対してどの程度社会保障を適用するかの議論が進む可能性。
  • 自治体の相談窓口:多言語対応や文化的差異に配慮した人員を増やす必要があるが、特に地方の小規模自治体にとっては財政負担になる。

一方で、こうした受入れコストは長期的には地域の若年人口確保や経済活性化に繋がる可能性があるため、短期的視点だけでは判断できない面もあります。


不法滞在や脱法行為への懸念

育成就労制度は「原則3年間」で特定技能1号への試験移行を促す仕組みですが、試験に合格できなかった人々が日本に長く残りたい場合に、

  • 資格外活動(違法就労)
  • 在留資格の偽装
  • 失踪してしまう
    などの事態が生じるリスクがあります。
    制度としては試験不合格の場合に最長1年の延長が認められますが、それを超えてしまうと在留資格がなくなるため、外国人がやむを得ず不法滞在化するケースを完全には排除できません。これは監理支援機関や自治体、国が連携し、早めに適正なキャリア相談等を行うことで一定の抑止が期待されます。

以上のように、外国人労働者の増加には多くのメリットがある一方で、地域コミュニティとの摩擦、賃金や労働条件への影響、治安や産業構造の変化、行政負担などのリスク・弊害が懸念されます。
しかし、これらリスク・弊害は、しっかりと受け入れ体制を整え、言語・文化のサポートや適正な雇用管理、法令順守の徹底を行うことで大幅に軽減・防止できるものでもあります。
育成就労制度が施行され、より多くの外国人材が日本を選ぶようになるときこそ、日本社会全体としての共生の仕組みが試されるといえるでしょう。

今後の展望とまとめ

最後に、育成就労制度と技能実習制度の今後の行方、そしてどのようにこの変化に備えるべきかをまとめます。


今後の見通しとスケジュール

  • 2024年〜2027年まで
    改正法は2024年6月21日に公布され、公布から3年以内(=2027年6月まで)に施行される予定です。現在(2025年や2026年頃まで)は、基本方針や主務省令、分野別運用方針の策定、さらに監理支援機関の許可申請など事前準備が進められます。
  • 移行期間
    施行日以降も、すぐに技能実習制度が消滅するわけではありません。すでに技能実習中の外国人は一定の経過措置があり、最大で技能実習3号まで継続できるケースもあります。
  • 送出国との協力
    送出国政府との二国間取決め(MOC)を整備し、悪質なブローカーや送り出し機関を排除する取り組みが強化される見込みです。

主な課題とポイント

  1. ブローカー排除と費用負担の適正化
    • 育成就労制度でも、外国人が高額な手数料や渡航費を負担しすぎると、結果的に不当な環境を甘受せざるを得なくなる恐れが残ります。転籍制度が導入されることで悪質ブローカーが転籍あっせんに入り込むリスクも指摘されており、法改正で不法就労助長罪の罰則が強化される見込みです。
  2. 日本語学習支援の充実
    • 育成就労の前提として、入国前にN5レベル合格相当が求められます。これは外国人本人にとって学習負担が大きくなる一方、雇用後のミスマッチを減らすうえで効果的ともいえます。日本語教育機関や自治体などが質の高い講座・学習支援を提供できるかが鍵です。
  3. 現場での受け入れ体制
    • 企業側は、試験受験のサポートや育成就労計画の作成・監理支援機関との連携など、かなり細かな手続きや費用負担が必要となります。しかし、それに見合う長期的な人材確保メリットが得られる可能性があります。
  4. 地方と大都市の格差
    • 受け入れ外国人が都会に集中してしまう問題は、特定技能や技能実習でも課題となっています。新制度では地方自治体や分野別協議会の取り組みを強化し、地方での就労環境を整備する方針ですが、実際には都市部の賃金の高さや生活の利便性などに惹かれる外国人が多いかもしれません。

「ここがポイント!」

育成就労制度は、「外国人労働者に日本で働きながら技能を身につけてもらい、その後も日本で特定技能として働き続けられる制度」です。
以前の技能実習では「国際貢献」が目的でしたが、実際は日本の人手不足を補う役割が大きかったため問題が生じていました。そこで最初から人材育成と労働力確保を目指す制度
を作り、かつ日本語能力や技能試験の合格を条件として転籍も認めることで、外国人が不当に扱われないようにするのが狙いです。
今後は企業も、外国人が働きやすい職場環境を整え、賃金や福利厚生を充実させることで優秀な外国人を確保できる時代になります。逆に言えば、環境を整えない企業は人が集まらず、転籍などで早期に辞められるリスクが高いといえます。


  • メリット
    • 外国人:転籍を通じて不当な労働から逃れやすくなる、日本語力向上によるキャリアアップ。
    • 企業:長期的な人材確保の可能性、適切な支援体制を構築すれば優秀な外国人が定着する。
    • 社会:少子高齢化で不足する労働力を補い、地域社会への定着を促進できる。
  • デメリット・懸念
    • 外国人:来日前の日本語勉強、手数料の軽減がどこまで進むかは不透明。
    • 企業:育成計画の作成や日本語試験費用の負担などコスト増。転籍で人材流出リスクも。
    • 社会:大都市集中の可能性、受け入れ環境が整わなければ失踪やブローカー問題が再燃する恐れ。

こうしたメリット・デメリットを踏まえ、「育成就労制度」と「技能実習制度」の違いを理解しつつ、受け入れ企業・送り出し機関・自治体・国が連携して共生社会の実現を目指していくことが重要です。
特に、ブローカーの排除や日本語教育の拡充などは一朝一夕で進むものではありません。施行時期(2027年まで)に向け、十分な準備と周知が行われることを期待したいところです。


両制度が混在する移行期はさまざまな課題が噴出する可能性がありますが、最終的には適正な受け入れ・育成環境が整い、外国人と日本社会の双方にプラスをもたらす制度へと成熟させることが目標となります。

参考資料

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
最近話題のニュースをアウトプットする場としてサイトを更新中。
なるべく正しい情報を届けるように心がけますが、誤った情報があればご一報ください。
本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

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