暗号資産の金商法移行とは?いつから何が変わる?制度変更の全体像をわかりやすく解説

暗号資産の金商法移行とは?いつから何が変わる?制度変更の全体像をわかりやすく解説 政府

2025年6月25日、暗号資産(いわゆる仮想通貨)を取り巻く大きな動きが報じられました。金融庁が「暗号資産を金融商品として扱うこと」を本格的に検討し始めたのです。これは、法律の枠組みを大きく変える話です。

これまでは、ビットコインやイーサリアムのような暗号資産は、「資金決済法」という法律のもとで管理されていました。この法律では、主に「お金のやりとり(送金や決済)」としての性質に注目していました。しかし、今後はこれを「金融商品取引法(=金商法)」という、株式や投資信託などと同じルールに移そうという案が出てきています。

なぜいま法改正の議論が起きているのか?

理由のひとつは、暗号資産が投資の対象として一般的になってきたことです。実際、日本国内の口座数は2025年1月時点で1,214万口座に達し、利用者の預けている金額は5兆円以上にものぼります1。これは、もはや一部のマニアだけの世界ではなく、多くの人が関わる資産になっているという証拠です。

もうひとつの理由は、詐欺やトラブルが増えていることです。金融庁には、暗号資産に関する相談が月に300件以上寄せられており、多くが「出金できない」「詐欺にあった」といった内容です1。SNSやネット上のセミナーで「絶対儲かる」などと誘い、投資させて騙すケースが後を絶ちません。

このような背景から、現在のルールでは十分に利用者を守れないのでは?という声が強まり、金商法というより厳格な枠組みに移すべきだと議論が始まったのです。

金商法ってどんな法律?

金融商品取引法、通称「金商法」は、株や投資信託といった金融商品を扱う際に守らなければならない法律です。この法律の目的は、投資家を守り、市場の健全な運営を支えることにあります。たとえば、以下のような規制があります:

  • 投資商品の説明義務(リスクをしっかり伝える)
  • インサイダー取引の禁止
  • 情報の開示義務
  • 投資家保護のための登録制度

もし暗号資産がこの法律の枠組みに入ることになれば、これまでよりも厳しいルールのもとで運営されるようになります。つまり「自由だけど自己責任」だった暗号資産が、「金融商品」としてしっかり管理される方向に動いていく、というわけです。

今回の審議会とは何か?

今回の話の中心は、「金融審議会」という政府の有識者会議です。2025年6月25日に開催されたこの会議では、正式に「暗号資産制度に関するワーキンググループ(仮称)」の設置が決まりました。このグループでは、今後より具体的なルールづくりが議論されていく予定です。

また、4月に金融庁が出した「ディスカッション・ペーパー」に対しては、広くパブリックコメント(意見募集)が行われており、その多くが「方向性に賛成」という内容だったといいます。つまり、社会全体として「金商法でしっかりルールを整えてほしい」という流れができつつあるのです。

    1. なぜいま法改正の議論が起きているのか?
    2. 金商法ってどんな法律?
    3. 今回の審議会とは何か?
  1. 暗号資産の現状と急成長の実態
    1. 国内口座数は1200万件超、5兆円の資産が動く
    2. 個人投資家の保有率は?
    3. 機関投資家の関心も高まる
    4. 米国ではビットコインETF保有が1,200社超
    5. 値動きの激しさと、それでも広がる投資対象
  2. 金商法移行で何が変わるのか?
    1. 現在の法律「資金決済法」とは?
    2. 金融商品取引法(=金商法)に変わるとどうなる?
    3. 規制の対象は2つのタイプに分かれる
    4. 将来、分離課税やETFにもつながる?
    5. 変わるのは投資家だけじゃない
  3. なぜ今、金商法なのか? 規制強化の背景
    1. 利用者トラブルが増えている現実
    2. 無登録業者・違法セミナーの横行
    3. 世界ではもう「投資対象」になっている
    4. デジタル社会の未来を見すえて
    5. 委員からの賛否の声も
  4. 投資家・企業への影響と論点
    1. 投資家にとっての影響:分離課税で税金が軽くなる?
      1. ▽投資家にとってのメリット
    2. 富裕層ばかりが得をする? 懸念の声
    3. 企業・発行者への影響:情報開示義務の強化
      1. ▽特に重要な変化
    4. 取引所や業者への影響:登録や監督が厳格に
    5. 社会全体への影響:健全な投資文化の形成へ
  5. 今後のスケジュールと注目ポイント
    1. 現在地:制度検討の本格スタート
    2. 年内の報告書取りまとめへ
    3. 注目すべきポイントは「税制改正大綱」
    4. 制度整備とビジネスチャンス
      1. ▽個人投資家にとって
      2. ▽企業にとって
    5. 情報収集とリスク理解
  6. 個人投資家はどう備えるべきか?
    1. まずは“知ること”から始めよう
    2. 税制が変わったら、利益の出し方・管理の仕方も変える
    3. 「ちゃんとしたプロジェクト」を選ぶ目を持とう
    4. 安全な取引所・ツールを使おう
    5. 「期待」と「慎重さ」を両立しよう
  7. まとめ
      1. 参考資料

暗号資産の現状と急成長の実態

暗号資産(仮想通貨)は、もはや一部の投資家やマニアだけが使うものではなく、多くの人々の資産形成の手段となりつつあります。この章では、数字と事例をもとに、どれだけ暗号資産が広がってきているかを詳しく見ていきます。

国内口座数は1200万件超、5兆円の資産が動く

金融庁の最新資料によると、2025年1月時点で日本国内の暗号資産の口座数は延べ1,214万口座、利用者が預けている金額(預託金残高)は約5兆円に達しています。

この数字は驚くべき成長を示しています。2019年にはたったの281万口座しかなかったのが、わずか6年で4倍以上に増えているのです。

また、世界の投資ファンドが暗号資産に資金を流している傾向も見られます。ETF(上場投資信託)やそれ以外の金融商品を通じて、数千億円単位でお金が動いているのです。

参照:暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討について(金融庁)

個人投資家の保有率は?

金融庁が実施したアンケート調査によれば、投資経験のある人の約7.3%が暗号資産を保有していることがわかりました。さらに、ネット証券などを利用している人に限ると10.2%が保有しています。

これは、FX(外国為替証拠金取引)や円建て社債、貯蓄型保険よりも高い割合です。つまり、「ビットコインやイーサリアムを持っている」というのは、今や珍しいことではなくなりつつあるのです。

機関投資家の関心も高まる

暗号資産に注目しているのは、個人投資家だけではありません。日本の機関投資家を対象とした調査によれば、62%が分散投資の手段として暗号資産に注目し、54%が今後3年以内に投資意向があると答えています。

投資するとしたら、資産の2~5%程度を暗号資産に回すというのが一般的な考え方のようです。また、8割の投資家が「1年以上保有するつもり」と回答しており、短期のギャンブル的な取引ではなく、中長期の資産形成の一環として捉えていることがわかります。

米国ではビットコインETF保有が1,200社超

海外に目を向けると、さらに大きな動きがあります。2024年時点で、米国では1,200社以上の機関投資家がビットコインETFを保有していることがわかっています。この中には、なんと州の年金基金や大手投資銀行(ゴールドマン・サックス)までもが含まれています。

彼らはビットコインを「インフレ対策資産」、つまりお金の価値が下がったときでも資産を守る手段として使おうとしているのです。これは、金(ゴールド)と似たような役割を期待しているということです。

値動きの激しさと、それでも広がる投資対象

もちろん、暗号資産は値動き(=ボラティリティ)がとても激しいです。2020年から2025年の間でも、ビットコインやイーサリアムの価格は何倍にもなったり、急落したりを繰り返しています(PDF5ページ参照)。

それでもなお、多くの投資家が「リスクはあるけれど、リターンも大きい」と判断し、資産の一部を暗号資産に回しているのです。特に若い世代やITリテラシーの高い人たちにとっては、「新しいお金の形」として自然に受け入れられている面もあります。

金商法移行で何が変わるのか?

ここまでで、暗号資産がどれだけ急速に広まり、国内外の投資家が関心を寄せているかがわかりました。そして今、金融庁はこの暗号資産に対して、「金融商品取引法(=金商法)」を適用する方向で動いています。では、これが実現したら、何がどう変わるのでしょうか?

現在の法律「資金決済法」とは?

現在、暗号資産は「資金決済法」という法律で規制されています。この法律は、もともとプリペイドカードや電子マネーなど「決済手段」としてのお金の流れを管理するためのものでした。

つまり、「ビットコイン=買い物に使える電子マネーのようなもの」として見ているわけです。交換業者(暗号資産取引所)は登録が必要で、顧客資産の分別管理なども義務づけられていますが、投資商品としてのルールはあまり整っていませんでした。

金融商品取引法(=金商法)に変わるとどうなる?

金商法は、株式や投資信託など、投資商品としての性格を持つものに適用される法律です。この法律では、以下のような重要なルールがあります:

  • 情報開示義務:商品に関するリスクや仕組みをわかりやすく伝えること
  • インサイダー取引の禁止:内部情報を使った不正な取引の防止
  • 登録・監督制度:業者が勝手に販売できないようにする
  • 不公正取引の監視:価格操作や詐欺を防止するための市場監視

金融庁の考えでは、これまで金商法が扱ってきた課題と暗号資産の問題は「親和性がある」、つまりよく似ているため、金商法を適用するのが妥当だということです。

規制の対象は2つのタイプに分かれる

金融庁は、暗号資産を次の2つの「類型(タイプ)」に分けて検討するとしています。

分類内容
類型①
【資金調達・事業活動型】
トークンを発行して資金を集め、事業に使うICOで発行されるトークンなど
類型②
【それ以外】
単なる資産や決済手段としての暗号資産ビットコイン、イーサリアム、ミームコインなど

類型①は、まるで「会社が株を発行して資金を集める」のと似ているため、情報開示などが厳しくなる見込みです。類型②は直接的に発行者がいない場合も多いため、取引所側に情報提供義務を課すという案も出ています。

将来、分離課税やETFにもつながる?

今回の移行は単に「ルールを厳しくする」だけではありません。分離課税(約20%)の導入や、暗号資産ETFの解禁など、投資家にとってメリットのある改革にもつながる可能性があります。

現在、日本では暗号資産で得た利益は「総合課税」として他の収入と合算され、場合によっては最大で税率55%にもなることがあります。これがもし株式と同じ「申告分離課税(約20%)」になれば、個人投資家にとっては大きな節税になります。

また、ビットコインなどを投資信託化して、証券口座で取引できる「暗号資産ETF」が国内でも可能になるかもしれません。すでに米国では1200社以上がビットコインETFに投資しており、長期的には日本市場でもこうした商品が出てくると予想されます。

変わるのは投資家だけじゃない

この移行は、投資家だけでなく、暗号資産を発行する企業や、取引所にも影響を与えます。たとえば:

  • 発行者は、プロジェクトの内容やリスクを正確に開示する必要が出てくる
  • 無登録の業者が投資勧誘をすれば、より厳しい罰則の対象になる
  • 取引所は、取り扱うトークンに関する情報提供の責任を問われる

これは、自由に暗号資産を発行・運営できていたこれまでの環境からすると、大きな変化です。しかしその一方で、詐欺や情報不足から投資家を守るという意味では、とても重要な一歩とも言えるでしょう。

なぜ今、金商法なのか? 規制強化の背景

暗号資産に関する法律を変える話が、なぜ「今」進められているのでしょうか? それには、現実に起きている「問題」と「国際的な流れ」、そして「未来への期待」が関係しています。

利用者トラブルが増えている現実

金融庁に寄せられている暗号資産関連の相談件数は、2025年現在で月平均300件以上にもなっています。これは、預金や保険、融資などを含む金融全体の相談のうち、約1割が暗号資産関連であるということです。

具体的な相談内容としては、以下のようなものがあります:

  • 「SNSで知り合った人に誘われて暗号資産に投資したけど、出金できない」
  • 「オンラインセミナーで“絶対儲かる”と聞いて投資したけど、連絡が取れない」
  • 「ICO(トークンの新規販売)で購入した暗号資産が、いつまでも上場しない」

こうしたケースの多くは「詐欺」または「悪質な勧誘」であり、法的に対応するのが難しい状況もあります。今の資金決済法では、暗号資産の発行者に対して情報開示を義務づける力が弱く、透明性が不足しているのです。

無登録業者・違法セミナーの横行

さらに問題となっているのが、無登録業者の存在です。日本では暗号資産を扱うには、金融庁への登録が必要ですが、海外に拠点を置く無登録業者がネットを使って日本の投資家を勧誘する例が増えています。

また、「儲かる」「必ず上がる」といったセミナーやオンラインサロンが乱立し、特に若年層や投資初心者をターゲットに金銭トラブルが発生しています。

こうした現実を放置しておけば、被害が広がるだけでなく、暗号資産そのものへの信頼が損なわれ、健全な市場の発展も難しくなります。そのため、より厳しいルール、つまり金商法のような法体系で管理する必要があるのです。

世界ではもう「投資対象」になっている

海外では、暗号資産を「投資対象」として正式に扱う動きが加速しています。

たとえば米国では、ビットコインのETF(上場投資信託)が2024年に承認され、すでに1200社以上の機関投資家が保有しています。これには公的年金や金融大手も含まれ、まさに「株や金と同じように扱われる資産」になっています。

国際機関であるIOSCO(証券監督者国際機構)でも、「暗号資産は伝統的な金融商品と同じように、インサイダー取引や市場操作の監視が必要」と強調しています。欧州でも、MiCA(暗号資産市場規制)という新しいルールの導入が進んでおり、日本だけが古い枠組みにとどまっている状態ではいられないのです。

デジタル社会の未来を見すえて

法改正の背景には、単なる「取り締まり」だけではなく、日本社会全体のデジタル化やWeb3推進への期待もあります。

政府は2025年6月にまとめた政策文書「新しい資本主義の実行計画」で、「Web3やNFT、暗号資産の活用によって、日本の地方経済や生産性向上に貢献できる」としています。

暗号資産の市場をしっかり整備すれば、以下のような未来も期待できます:

  • 日本発のブロックチェーンビジネスが世界で活躍
  • 地方企業がトークンを使って資金調達
  • 安全な投資環境のもとで個人資産の形成が進む

そのためには、信頼性のある制度と、詐欺やトラブルを防ぐための仕組みが欠かせません。それが、金商法移行という「新しいルールづくり」なのです。

委員からの賛否の声も

金融審議会では、「金商法への移行は妥当である」との声が上がる一方で、「このままでは富裕層ばかりが得をする制度になるのでは?」という意見も出ています【ニュース参照】。

とくに、分離課税の導入によって、所得の高い人が税制上有利になる可能性があるため、公平性をどう保つかが今後の議論の焦点になります。

投資家・企業への影響と論点

暗号資産が「金融商品取引法(=金商法)」のルールに移行すると、投資家や企業にとって何が変わるのでしょうか。この章では、私たちの生活やビジネスに直接関係する影響を、「メリット」と「注意点」の両面から詳しく解説します。

投資家にとっての影響:分離課税で税金が軽くなる?

現在、日本では暗号資産の利益は「雑所得」として扱われ、最大税率55%(住民税含む)になることがあります。たとえば、ビットコインで100万円の利益が出ても、そのうち半分以上が税金で引かれる可能性があるのです。

しかし金商法に移行すれば、申告分離課税(約20%)が導入される可能性が高まります。これは株や投資信託と同じ扱いで、税率が一定になる仕組みです。

▽投資家にとってのメリット

  • 利益が多い人でも税率は一律約20%
  • 確定申告がしやすくなる
  • 資産運用の選択肢が広がる(株と同じように考えられる)

ただし、すでに税率が低い人(たとえば主婦や学生など)にとっては、逆に税負担が増えるケースもあるため、一概にすべての人にとって得とは限りません。

富裕層ばかりが得をする? 懸念の声

金融審議会の中では、浜銀総合研究所の野澤委員が「このまま制度が進むと、結果的に富裕層が得をしてしまい、税の不公平を助長するのではないか」という指摘をしています(CoinDesk JAPAN記事より)。

たとえば、すでに何千万円ものビットコインを持っている人が、税制上の優遇を受けられるようになると、「結局お金持ちだけが得する」という不満が出てくるのは当然です。

このような声に応えるためにも、税制改革とあわせて投資教育や公平性の確保が求められることになるでしょう。

企業・発行者への影響:情報開示義務の強化

金商法が適用されることで、企業側にもさまざまな義務が発生します。

▽特に重要な変化

  • 暗号資産を発行する企業には、ホワイトペーパー(事業説明資料)の正確性が求められる
  • トークン発行時の情報開示が義務化される可能性がある
  • 投資家に向けた説明責任やリスク情報の提示が必要になる

いままでは、「トークンを出せばそれで自由に売れる」というケースが多かったのですが、今後は金融商品として責任ある説明が求められる時代に変わるのです。

取引所や業者への影響:登録や監督が厳格に

暗号資産を取り扱う業者(取引所など)もまた、大きな影響を受けます。特に以下のような点に注意が必要です。

  • 無登録の海外業者に対する取り締まりが強化される
  • セミナーやSNSでの投資助言行為も規制の対象になる可能性がある
  • 取り扱うトークンについて、そのリスクや信頼性の説明責任が課される

これは、「自由にトークンを並べて売る」というビジネスモデルには限界が来ることを意味しています。今後、事業者はより誠実で透明性の高い運営が求められるでしょう。

社会全体への影響:健全な投資文化の形成へ

この法改正は、単に税金や手続きの話だけでなく、日本社会にとって暗号資産をどう位置づけるかという大きな問いかけでもあります。

金融庁は、「暗号資産をオルタナティブ投資(代替資産)の一部として捉え、リスク判断力のある投資家が利用できる環境を整えることが重要」としています。

将来的には:

  • 学校教育での「デジタル資産リテラシー」教育
  • 地方自治体によるブロックチェーンの活用
  • 投資詐欺への法的対応の充実

といった形で、社会全体にとって健全な暗号資産との付き合い方が求められるようになるでしょう。

今後のスケジュールと注目ポイント

暗号資産を金融商品取引法(=金商法)の枠組みに移すという話は、ただの思いつきではなく、政府や金融庁が段階的に進めようとしている正式な政策です。この章では、制度移行に向けて今後どんなスケジュールで動いていくのか、私たちが何に注目すべきなのかを詳しく解説します。

現在地:制度検討の本格スタート

2025年6月25日、金融庁は「金融審議会総会」を開催し、暗号資産に関するワーキンググループ(WG)の設置を決定しました。これは、制度の詳細を議論する専門的な小さな会議体のことです。

このWGでは、次のような論点を中心に議論が進められます:

  • 暗号資産の2分類(資金調達型/それ以外)への対応
  • 情報開示や不公正取引の規制のあり方
  • 無登録業者への規制と罰則
  • 税制(分離課税)の導入是非
  • 暗号資産ETFの国内導入可能性

こうした論点は、単に制度面だけでなく、個人投資家の行動や企業の成長戦略にも直結するため、社会全体の関心が高まっています。

年内の報告書取りまとめへ

金融庁の担当者によれば、ワーキンググループでの議論をもとに、2025年11月末ごろには報告書がまとめられる見通しとされています。これは、政府の税制改正に間に合わせるためでもあります(CoinDesk JAPANインタビューより)。

その後のスケジュールとしては以下のような流れが想定されます:

時期内容
2025年6月〜11月WGでの議論、報告書の作成
2025年12月税制改正大綱に反映(分離課税など)
2026年1月以降国会への法案提出(通常国会)
2026年度中改正法の施行(予定)

つまり、早ければ2026年中にも新しい法律が実際に動き出す可能性があるということです。

注目すべきポイントは「税制改正大綱」

このスケジュールの中でも特に重要なのが、2025年12月に公表される税制改正大綱です。ここに「暗号資産に関する分離課税の導入」が盛り込まれるかどうかが、個人投資家にとって最大の関心事といえます。

  • 採用されれば、税率は一律約20%に
  • 見送られれば、当面は現在の総合課税(最大55%)のまま

この判断は、政府全体の方針や、国会・与党内の調整次第ともいえるため、報道や金融庁の発表に注目しておくことが大切です。

制度整備とビジネスチャンス

もし法改正が成立し、新制度が運用されるようになれば、以下のような中長期的な変化が期待されます:

▽個人投資家にとって

  • より安全で透明性の高い投資環境が整う
  • トークン詐欺や勧誘被害にあいにくくなる
  • 税制面でも計画的な資産形成が可能に

▽企業にとって

  • 誠実なプロジェクトなら、国内で正規にトークン発行が可能
  • 日本でも暗号資産ETFが誕生すれば、新たな市場が開かれる
  • ブロックチェーンを使った地方創生や中小企業支援の土台にも

これらは単なる金融の話ではなく、日本経済全体の競争力地方・中小企業のデジタル化にもつながる可能性があります。

情報収集とリスク理解

今後、制度が大きく変わるなかで私たちに求められるのは、「なんとなく投資する」姿勢からの脱却です。以下のような姿勢が重要になってきます:

  • 暗号資産の仕組みや法律の基本を学ぶ
  • 信頼できる取引所や情報源を見極める
  • 短期的な価格だけでなく、プロジェクトの価値や将来性を見る目を持つ

つまり、制度が整うということは「誰でも安心して使える時代が来る」というより、「自分の責任で、正しく判断して投資できる時代になる」ということでもあるのです。

個人投資家はどう備えるべきか?

ここまで、暗号資産の「金商法移行」について、制度の内容・背景・スケジュール・影響を見てきました。この最終章では、「で、私たちはどうしたらいいの?」という素朴な疑問に答える形で、今後の行動のヒントを紹介します。

まずは“知ること”から始めよう

制度が変わると、ニュースでは「法律が厳しくなる」「税金が安くなる」といった言葉が飛び交いますが、一番大切なのは、内容を正しく知ることです。

特にチェックしておきたいのは次の3点です:

  • 自分が持っている暗号資産がどの分類(類型)に入るのか
  • どんな税金ルールがいつから適用されそうか
  • 取引所や運営元が、制度にちゃんと対応しているか

情報を集めるには、金融庁の公式サイト、信頼できるニュースメディア(CoinDesk Japanなど)、取引所の発信するお知らせを定期的に読むとよいでしょう。

税制が変わったら、利益の出し方・管理の仕方も変える

現在、暗号資産の利益は「総合課税」で最大55%になることがありますが、分離課税が導入されると一律20%で済むようになる可能性があります。これは投資戦略にも大きく影響します。

たとえば:

  • 利益確定のタイミング:高税率を避けて保有を続けていた人も、課税ルールが変われば「そろそろ売ってもいいかも」と思えるようになります。
  • 損益通算:株などの損失と合わせて税金を減らせる仕組みが導入されるかもしれません。
  • 確定申告の簡素化:税率が明確になれば、面倒な計算が減り、確定申告のハードルも下がります。

そのためにも、今から取引記録をきちんと整理しておくことが大切です。どの取引でいくらの利益(または損)が出たのか、エクセルなどで管理しておきましょう。

「ちゃんとしたプロジェクト」を選ぶ目を持とう

今後、金商法のもとでルールが整っていけば、いい加減なプロジェクトや詐欺まがいのトークンは淘汰されることになります。これは投資家にとって朗報です。

とはいえ、制度の移行には時間がかかりますし、完全な安心は保証されません。だからこそ、以下のようなポイントに注目して、投資先を見極めましょう:

  • そのトークンのホワイトペーパー(説明資料)は具体的か?
  • 発行元が誰なのか明確か?
  • プロジェクトのウェブサイトやSNSは更新されているか?
  • 他の投資家からの評判やレビューはどうか?

「人からすすめられたから」や「値上がりしているから」という理由だけで買うのではなく、自分で判断する目を育てることが、今後ますます大切になります。

安全な取引所・ツールを使おう

制度が厳しくなれば、取引所にも監督が入るようになります。今でもすでに、金融庁に登録された業者しか合法的に運営できません。

投資初心者は、以下のポイントを参考に、信頼できる取引所を使いましょう:

  • 金融庁の登録があるか(公式サイトで確認できます)
  • サポート体制が整っているか(日本語対応、問い合わせ窓口など)
  • セキュリティ対策がしっかりしているか(2段階認証など)

また、ウォレット(資産保管アプリ)も信頼性のあるものを選びましょう。ハードウェアウォレットを使えば、ハッキングのリスクも大きく下げられます。

「期待」と「慎重さ」を両立しよう

最後に、忘れてはいけないのが「期待しすぎず、でも未来を信じる」姿勢です。

暗号資産やブロックチェーンの技術は、確かに世界を変える可能性があります。地方経済や中小企業の支援、デジタルアイデンティティ、NFTアートなど、さまざまな応用が期待されています。

でもその一方で、価格は乱高下し、制度もまだ未成熟で、詐欺も多いという現実があります。

だからこそ、こう考えてみてください。

暗号資産は「一攫千金を狙うもの」ではなく、「自分の未来のために、少しずつ育てていく投資対象」なんだ、と。

まとめ

暗号資産の金商法移行は、「危険な投資を規制する」ためのものではなく、「未来に向けて、安心して付き合える制度を作る」ためのものです。

これから始まる法改正の動きをしっかりと理解し、自分自身の判断力を育てながら、安全でスマートな投資ライフを送っていきましょう。未来は、もう始まっています。

参考資料

暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討について(金融庁)

この記事を書いた人

いまさら聞けない自治体ニュースの管理人。
最近話題のニュースをアウトプットする場としてサイトを更新中。
なるべく正しい情報を届けるように心がけますが、誤った情報があればご一報ください。
本業は地方創生をメインとする会社のマーケティング担当者。

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